PAGE TOP

【慢性広範囲疼痛症候群】大阪市在住、20代男性、鍼灸治療のケース

2015年1月11日10:04 AM カテゴリー:症例,線維筋痛症,難治疼痛

慢性広範囲疼痛症候群への鍼灸治療:患者さまの感想「2年間苦しんだ体中の痛みが意外に早く治りうれしかった。」

慢性広範囲疼痛症候群は聞きなれない病名ですが、近年、増えている病気にうちの一つです。

線維筋痛症という病気がありますが、これとよく似た病気で、この慢性広範囲疼痛症候群から、線維筋痛症に進むといわれています。

からだのあちらこちらに痛みが生じ、痛み止めなどが効きにくく、痛みが長引く病気です。

今回の症例「慢性広範囲疼痛症候群」を患った患者さまへの鍼灸治療の経過と効果について綴ります。

 

・初回来院までの経過

2年前に急に背中が痛くなった、原因はよく分からない

痛み止めを飲んだ効かない

背中だけでなく、首、腰まで痛みが広がってきた

痛みで夜、眠れないことがある

整形外科に行ったが、原因が分からず、シップだけ出された

心療内科にも行き、線維筋痛症ではと言われ、リリカを出され、飲んだが効かなかった

だんだんと痛みがひどくなり、仕事に支障をきたすようになっている

来院当日の状態は、肩・首、背中の痛みが激しく、憂鬱そうな顔つきでした。

痛みで目が覚めたようで、寝不足で辛い感じでした。

鍼治療は、初めてということでしたので、最初は軽く鍼治療をしていくことを説明、治療に入りました。

 

慢性広範囲性疼痛症候群への鍼灸治療と施術後の状態について

初回の治療

首から肩、背中にかけて広い範囲で筋肉の緊張がありました。

うつ伏せになってもらい、その中でも特に緊張感、凝り感の強いところ10か所に、直径0.18ミリ、長さ40ミリの鍼を用いて7ミリほど刺し、15分間ほどそのままでいてもらいました。

その後、すべての鍼を一度、抜き、まだ凝り感の強いところ数か所に軽く鍼を刺しました。

鍼治療に恐怖感が強いことを聞いていましたので、背中の緊張感には、接触鍼という方法を用いました。

鍼先で軽く背中全体をひっかくような治療法です。

少しひっかき傷が生じることもありますが、出血はなく、小さいお子様に治療する場合によく用いる手法です。

次に仰向けになってもらい、ストレスから生じた脳の誤作動による痛み過敏を改善できるツボ、ストレスに対応できるようになるツボを手足から4か所選択し、鍼を刺しました。

使用した鍼は直径0.16ミリ、長さ15ミリで、鍼を刺した後、鍼が効くように調整をし、そのまま20分程度、寝てもらいました。

治療後は、肩、首や背中の痛みは取れており、良い感じだということでした。

 2回目の治療

前回の後、3,4日はほとんど痛みを感じなく調子が良かったが、一昨日くらいから、少し痛みを感じるようになったありました。

ただ、痛みの程度は、以前に比べるとましで、夜痛みで目が覚めることはなくなったようです。

治療は前回と同じです。

治療後は、初回より、すっきり感が強いと喜んでおられました。

 3、4回目の治療

治療の回数が増えるごとに、痛みを感じることが少なくなってきたとありました。

時々、痛みを感じることもあるが、それも気にならない程度になってきたそうです。

睡眠が十分にとれるようになり、気持ちが楽ということでした。

治療は初回と同じです。

 5回目の治療

雨の日が1,2日続き、痛みがまたひどくなってきたということでした。

雨というより、気圧の変化がこの病気では関係が深く、悪化することはよくあることと伝えました。

初回の治療に、気圧や温度に対応できるようになるツボを1か所、加えました。

治療後は、痛みがうそのよう消えたと喜んでおられました。

 6回目の治療

今回も来院までの間に、雨の日がありましたが、痛みはあまり感じなかったようです。

治療は、5回目と同じです。

 7回目の治療

今回の治療までの間に、まったく痛みを感じることもなく、からだの緊張感も感じないということでした。

5回目と同じ治療をしました。

治療後は、爽快感と充実した気持ちになれたそうです。

雨の影響もなくなっていましたので、今回の治療で、終診としました。

 施術者の感想

慢性広範囲性疼痛症候群は、名前が長いせいもあり、ほとんど知られていない病気です。

難治性の痛みの病気で、西洋医学でも根本治療に至るまで、時間がかかります。

今回の患者さまは7回の治療、約2ヶ月で治癒に至ったという、患者さまも、治療者もうれしいケースです。

この病気の仲間には、複合性局所疼痛症候群、線維筋痛症があります。

一般に、複合性局所疼痛症候群→複合性局所疼痛症候群→線維筋痛症へと進んでいくとされています。

いずれも原因は、いまだはっきりとはしていません。

過剰なストレスの繰り返しが、長期に渡ることにより、脳がその刺激対応できなくなり、誤作動を起こします。

その結果、本来であれば、痛みを感じない程度の刺激であっても、脳が痛みと判断することによるとされています。

脳をパソコンとしますと、フリーズ状態になったともいえます。

この病気を引き起こしますストレスは主に、痛みです。

痛みをきっかけにこの病気が起こるともいえます。

今回の症例の患者さまも、原因不明の背中の痛みから始まっています。

痛みはストレスの中では、最も強いレベルといえます。

常に痛みがありますと、痛みの信号は脳に伝わり続けます。

繰り返し、痛み信号が伝達されることにより、脳は痛み刺激に対する感度を上げます。

この結果、本来であれば痛みを感じない程度の刺激、例えば、服を着るなどでも、「痛い」と感じるようになるわけです。

慢性広範囲性疼痛や線維筋痛症は、まず、少しでも痛みを軽くする、痛みを感じない時間を作るということが、一番、大切になってきます。

ここに鍼治療が、これらの病気に対して有効な理由があります。

鍼治療は、筋肉の緊張を緩めたり、血流を良くすることで、痛みを改善することを得意にしているからです。

まず、鍼治療で、今、痛いところの痛みを取り除くことにより、、痛みを感じる時間を作ることができます。

筋肉の緊張感や凝り感、痛みを取り除き、リラックスした状態で、脳に働きかける鍼治療を行いますと、脳が正しい判断ができるようになります。

脳に働きかける鍼治療だけでも、効果はありますが、患者さまが痛みを感じながら、治療を受けることになりますので、若干、効果が落ちることが多いです。

大阪・心斎橋の鍼灸院 天空では、この種の病気に対して、まず、緊張感、痛みを取り除いてから、脳に働きかける鍼治療をする理由はここにあります。

今回の症例では、約2ヶ月で改善しましたが、理由はよく分かりません。

考えられることでは、患者さまが意欲的であったこと、痛み以外のストレスはほとんどなかったことや、薬は効かなかったが、鍼治療は効くと確信され来院されたことなどがあります。

また、鍼刺激に対するからだの反応もよく、少しの刺激で、緩んでいくのがはっきりとわかるタイプの方でもありました。

痛み以外にもストレスがありますと、そのストレスが、痛みを引き起こしますので、そちらの治療する必要性があり、時間がかかることが多いです。

東洋医学からの視点

古代の医学書には、「経筋」という流れが記載さています。

現代医学の解剖学と異なりますが、筋肉の流れのことです。

この流れが悪くなると痛みが生じるとあります。

これを「通ぜずば痛む」としています。

今回の症例は、この状態でした。

そして、「通じると痛み止む」とあります。

筋肉の緊張感、凝り感を取り除くことで、「経筋」の流れが良くなり、痛みが改善したわけです。

東洋医学では、ストレスと「肝」は相関しており、「肝」と筋肉も相関しています。

すなわち、ストレスがかかると、筋肉の緊張や凝りが生じるというわけです。

この「肝」を中心とするツボの流れは、頭に繋がっています。

筋肉を緩める治療の後に、「肝」のツボの流れを中心に、治療することにより、痛みストレスに対応できるだけでなく、脳の働きに作用することができるわけです。

このように、鍼治療では、一つのツボに、様々な働きがあります。

どのツボを選択し、鍼を刺し、それをどう働かせるかによって、治療が変わってきます。

 

 

 

宜しければ記事のシェアをお願い致します。

診療時間のご案内 トップページへ戻る
2022/12/9
2021年 妊活鍼灸の振り返り ー症例と総括ー
2022/12/3
2021年妊活鍼灸の振り返り4 ―症例―
2022/9/23
2021年妊活鍼灸の振り返り3 ―症例を中心に―
2022/4/17
2021年妊活鍼灸の振り返り2 -症例を中心に-
2022/2/14
2021年妊活鍼灸の振り返り1 -緒言と症例-
2021/11/30
2020年 妊活鍼灸の振り返り -症例と総括-
2021/4/21
2020年妊活鍼灸の振り返り ―症例を中心に―
2021/2/12
2020年妊活鍼灸の振り返りー緒言と症例ー
2020/1/7
2019年 妊活鍼灸の振り返り ―その3― (症例とまとめ)
2020/1/5
2019年 妊活鍼灸の振り返り ―その2―(症例を中心に)
>>もっと記事を読む
診療時間のご案内 当院アクセスマップ
トップページへ戻る

カテゴリ別記事

過去の記事

※免責事項:掲載された事例や患者様の体験談は個人の感想や成果によるものなので、全ての人への効果を保証するものではないことと御理解ください。施術による効果には個人差があります。