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2016年 鍼灸学会(北海道 札幌市にて) ―鍼灸師がうつ病患者を診るために― その2.どのようにしてうつ病患者さんに向き合うのか

2016年7月21日9:46 AM カテゴリー:うつ病,学会・勉強会

1.臨床心理士の立場から「うつ病患者さんを見るにあたり欠かせない医療面接(問診)のポイント

 

目白大学教授 奈良 雅之先生

次席はうつ病患者さんとの医療面接いわゆる「問診」についてのお話でした。

 

演者の先生は、臨床心理士でもあり鍼灸師でもあるというユニークな先生でした。

 

うつ病といいますと患者さんとのコミュニケーションをどうとるかが、大きな問題の一つでもあります。

 

先生は、臨床心理士としてうつ病の治療をするに当たり、患者さんとの心理的距離感をいかに短くするかと腐心されていたそうです。

 

そのときに鍼灸治療という存在を知り、まず、感じられたのが、「鍼灸はずるい」ということだったそうです。

 

これは、鍼灸治療では、患者さんの体に、直接触れ治療をしますので、いわゆる心理的距離感が限りなく「0」になるということです。

 

そこで、鍼灸師の免許を取るために改めて学校に通われて、免許を取り、実際に診療に使っているとのことでした。

 

○まず最初にするべきこととは?

 

鍼灸師がうつ病患者さんを診るに当たり、まず、必要なことは、以下の内容を的確に見抜くこととありました。

 

・日常生活における困難さ

・うつ病患者さんの自分の症状に関する自覚

 

日常生活における困難さは、しっかりとお話を聴けば、理解しやすいですが問題はご本人の自覚です。

 

気持ちや感情面が強い場合は、比較的理解できますが、体の症状が強く出た場合は、理解できないことが大部分です。

 

たとえば、腰痛、胃痛などで出ますと、まず、整形外科や内科を受診します。

 

ただ、うつによる痛みですので、検査などの結果は異常なしとなります。

ご本人は、「そんなことはない。どこか悪いはずだ」とドクターショッピングをすることになります。

 

その間にうつの症状が進んでいくという経過をたどります。

 

そのために、ご本人の症状に対する自覚をしっかりと聴き出すことは重要になってきます。

 

うつ病患者さんの特徴

うつ病になりますと、性格が開放的、前向き感がある方でも、悲観的になりマイナス面にフォーカスするようになります。

 

この点がうつ病の特徴となります。

 

これはご本人の性格や考え方の問題ではなく、抑うつ状態がこのような考え方や、性格を形成するわけです。

 

うつ状態になりますと、脳における自律神経系の「視床下部-下垂体―副腎系」の機能が乱れることが分かっています。

 

この機能の乱れにより、体の症状が強く出ます。

 

体の症状が抑うつ症状をさらに強くするために、悲観的なっていきます。

 

このため、うつ病患者さんのネガティブな考えにはフォーカスすべきだが、ネガティブな行動には焦点を合わせ他はいけないというのが、先生の考えです。

 

患者さんの悲観的な考えに焦点を合わせますと、それは患者さんの気持ちに共感したことになり、患者さんは「自分を認められた」と思い、治療が良い方向に進みます。

 

それに対してネガティブな行動にフォーカスしますと、「自分の行動が正しい」と思い、ネガティブな行動をとるからです。

 

場合によっては、自殺することもあり得るからです。

 

期待度の差における症状改善の違い

 

先生はうつ病患者さんに医療面接(問診)をする際に、症状改善に対して、高期待度を与えた群と、中立性の期待態度を与えた群を比較されています。

 

高期待度群とは、今回の治療により、うつ病が改善すると強い期待を持たせた群です。

 

また、中立性の期待度は、科学的根拠に基づき、改善するかどうかを厳正に伝えた群になります。

 

結果は、高期待度群が、症状改善、治療への満足とともに、優位に上昇したそうです。

 

このことは、いかにうつ病患者さんが、不安感に怯えているかということが見て取れます。

 

治療をするに当たりエビデンスも大切ですが、「大丈夫」という安心感も、与えることが大切であることが分かります。

 

うつ病患者さんへの接し方と、治療の方法

 

うつ病患者さんに接するに当たり、コミュケーションのなかでも、「非言語的」と言われる、身振り手振りなどの言葉を使わないコミュケーションが大切とありました。

 

具体的には以下のようになります。

 

1.空間・時間的強度

遠くから(空間)、機を見て徐々に間合いを詰める(時間)

ゆっくりと(時間)、ソフトに(強度)

 

患者さんに対して、最初から「うつ病」について、話をするのではなく、日常的な生活のやりとりから入り、共感的になり、ゆっくりとソフトにうつ状態の確認をすることが大切とありました。

 

2.至適刺激強度

 

患者さんにとって、ちょうど良い精神的な緊張感を与える治療が、高いパフォーマンスを引き出せるとありました。

 

また、重症で課題難易度が高い場合は、低い刺激が効果的とありました。

 

性格からは、内向的な患者さんは低刺激で、外交的な患者さんの場合は高刺激が、効果的とありました。

 

このように、場によって、人の個性によって、体調によって、適正刺激強度は変化するので、そのときに、そのときに応じて、治療を変えることが必要になってきます。

 

これはうつ病に限らず、すべての病気にいえることですが、特にうつ病患者さんの場合は、注意が必要になります。

 

うつ病患者さんは、その病気の性質から刺激に対する閾値が低い傾向にあるからです。

 

うつ病治療における注意点

 

1.治療するに当たり、患者さんとのラポールを形成する

2.治療の構造を説明し、どのような経過で治療が進み、どのように状態が変化していくのかを理解してもらう

3.出来事を認知し、それに対する気分・行動の関連を聞き、フィートバックする

 

このようにうつ病治療におきましては、患者さんとの関係をいかにうまく築くかがポイントなります。

 

そして、患者さんに寄り添いながら、治療を進めることが大切なります。

 

それには、患者さんとのファーストコンタクトである、医療面接(問診)が、最も重要であるといえます。

 

 

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