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胚盤胞移植当日、鍼灸による妊娠例

2017年8月18日4:40 PM カテゴリー:不妊症

胚盤胞移植当日の鍼灸 機能性不妊 大阪市在住 30代女性

 

沢山あった凍結保存の胚盤胞も残り、あと一つになりました

 

当院の不妊鍼灸治療の基本的方針は、質の良い卵を作るお手伝いをすることです。

質の良い卵を作るには、卵胞細胞の成長が著しくなる「今回の排卵」の約3ヶ月前から、鍼灸治療や栄養指導を受けることが大切になります。

この考え方を基本的な妊活鍼灸の方針としていますが、胚移植当日に着床の確率を上げるためだけに来院されるケースもあります。

 

今回、ご紹介する症例がそのようなケースになります。

患者さんは、胚盤胞が8個も採れたにも関わらず、なかなか妊娠することが出来なかったため、最後の1個に望みを託して来院されました。

 

経緯

約1年前から不妊治療を開始するに当たり、少しでも早く妊娠がしたいことと、自分の年齢が30代半ばということもあり、ご夫婦で相談の結果、顕微授精に踏み切られています。

・ご夫婦ともに諸検査では異常が無く、機能性不妊と言われた
・採卵はホルモン剤による高刺激で行い、その結果、採卵数が18個だった。
・18個の採卵後、顕微授精した結果、8個が胚盤胞となり凍結保存された
・1周期からだを休め、翌月、一番グレードが良い1個を移植をしたが妊娠反応は出なかった。
・その後、1~2個の胚盤胞を移植し、計5回判定を迎えたが、全て妊娠には至らなかった

 

この患者さんは、採卵時に刺激が強かったようで、結果として多くの胚盤胞が出来たのですが、採卵後に腹水が溜まってしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症されました。

採卵前のお腹の張りや採卵後の辛さなどが、精神的、肉体的に耐えられなかったそうです。

そのため、2度目の排卵誘発や採卵をすることは考えられなかったようで、何としても残りの1個で妊娠をしたいということで来院されました。

 

胚盤胞移植当日の鍼灸の効果

胚盤胞移植当日の鍼灸治療には、着床率向上効果が期待できます

 

・子宮内膜の血流が増加し、分泌線からの分泌が良くなることで着床しやすくなる

 

子宮内膜は大きく機能層と基底層という2層に分かれています。子宮筋層のすぐ内側に基底層があり、その内側に、生理の時に、剥がれ落ちる機能層が肥厚しています。


妊娠成立のためには、機能層が十分に肥厚していることと、機能層の表面に十分な分泌物が出て潤っている必要があります。
このしっとり潤った内膜の上に受精卵が無事、辿り着き、子宮内膜に受け入れられれば、妊娠が成立します。

 

そのためには、十分な量の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌が必須であり、そのホルモンを運搬する豊かな血流が必要となります。

不妊治療を受けている方は、病院などで卵胞ホルモンや、黄体ホルモンなどの女性ホルモンは、厳密に管理されています。

ところがそれを運ぶ血流に関しては、ある意味、「あなた任せ」の状態になっています。

 

鍼灸治療は、こうした血流の問題を解決する素晴らしい治療法です。

鍼灸治療では、局所的な交感神経ブロック作用と、中枢神経を介した副交感神経亢進作用を利用して、子宮や卵巣の血流を任意に増加させることが出来ます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28588637
(ラットにおける子宮内膜血管新生および子宮樹状細胞に対する鍼治療の効果。)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16600232
(胚盤胞移植当日の鍼灸治療の効果)

 

・鍼灸治療は、抗ストレス作用を発揮し、着床率を向上させます

高ストレス下では、着床率の低下ばかりでなく、妊娠の継続にも影響が出ることが知られています。

これは、ストレスにより分泌されるコルチゾールと呼ばれる抗ストレスホルモンが、視床下部の命令で出ていることに関係しています。

実は女性ホルモンの分泌も、この視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモンがもとになっています。

同じところから分泌されるホルモンがある場合、優先度の高いホルモンがより分泌されることは自然なことです。

通常の場合、コルチゾールは生命維持にも関わるホルモンですので、生殖よりも優先されています。その結果、高ストレス下では、性ホルモンの分泌は制限されています。


そのため、性ホルモンの分泌を十分にし、妊娠しやすくするには、ストレスや生命維持の比重を軽くした上で、栄養や睡眠などの健康管理をする必要があります。

鍼灸治療は感覚神経を通して脳の中枢へ働きかけ、情動の中枢である扁桃体や大脳辺縁系に働くことが分かっています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27812501
(うつ病患者の辺縁系に対する影響)

鍼灸

 

初回時、午前中に胚盤胞移植を施術した後、午後2時頃に来院されました。

移植による体調不良などは、見られませんでした。

そこで、通常の鍼灸施術の初回と同様のカウンセリングや検査などをしました。

カウンセリングでは、肩こりや腰痛の他に、不妊治療によると思われるストレス症状があるかどうかなどをお聞きしました。

高ストレスというほどではありませんでしたが、検査ではお腹の固さが少し気になりました。
また、足の冷えや浮腫みも少し見られました。

下半身のツボを中心に、神経を緩める、血流を良くすることを目的に鍼灸治療をしました。

・鍼灸治療の内容

三陰交、復溜 、関元、内関というツボに仰向けで鍼を刺し、10分間そのままにしました。

使用した鍼は、長さ40㎜、太さ0.16㎜で、3~10㎜程度の深さまで刺しました。

 

全ての鍼を抜いた後、次にうつ伏せになって頂き、腎腧(じんゆ)、次髎(じりょう)というツボに鍼を刺し10分間、そのままの状態で寝てもらいました。

使用した鍼は、長さ50㎜、太さ0.2㎜で、15~30㎜程度の深さまで刺しました。

 

鍼灸治療後は、お腹の張りも無くなっていました。また、自覚的にも足腰が、温かい感じがするとのことでした。

本来は、3ヶ月以上を要する妊活鍼灸ですが、今回は比較的質の高い胚盤胞が採れていたことと、初回のカウンセリングで体調不良や東洋医学的診断での弱りが強く見られなかったため、結果に期待が持てるケースでした。

 

妊娠判定の結果が陽性でなければ、判定日以降に今後の話し合いをする予定でした。

判定が陰性の場合は、再び苦痛の伴う採卵を行うか、刺激を少なくし採卵数を減らすか、あるいは、体調管理を行いながら、時間をかけ卵の質の改善をするかのカウンセリングをする必要がありました。

結果は、この一度の鍼灸治療で、妊娠反応が出ましたので、鍼灸治療は終了となりました。

 

最後に

 

機能性不妊とは、いわゆる原因不明の不妊と診断された不妊症です。

そのため、西洋医学的には、決め手のある治療法がありません。

体外受精や顕微授精を勧められるケースが多いですが、多くの場合、回数を重ね確率を上げるという方法が取られています。

今回の女性も、機能性不妊症でした。

顕微授精の回数を重ねたものの、上手く着床せず、減っていく凍結胚に、焦りを感じる日々でした。

1回だけの鍼灸治療でどれほどの効果が望めるのかという疑問は当然ですが、胚盤胞移植当日に鍼灸治療を受けると着床率が上がることが分ってきています。

海外での臨床研究になりますが、移植当日に鍼治療をしたグループとしないグループでは、鍼治療をしたグループが妊娠率42.5%、鍼治療しなかったグループが妊娠率26.3%となりました。

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0015028201032733

 

本来は、機能性不妊症を改善するには、良い質の卵を採卵するための3ヶ月間の鍼灸治療、着床しやすくする、妊娠を継続する、そして、できれば安産のための鍼灸治療をすることが理想的になります。

今回のような1回で結果が出るケースもよくありますので、胚移植当日のみの鍼灸治療も、ご相談があれば実施しています。

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