大阪府の患者様:腰の痛みがひどい時は歩けなくなります!
加齢による原因、仕事の業務など腰痛という症状は誰でもなる可能性があり、日常生活に大きく支障をきたすものです。
今回の症例では腰のヘルニアになった患者様からのご相談から始まりました。
もし同様の症状で悩む方は、一度鍼灸を行い腰痛改善につとめてみるのをお勧めします。
下記は腰痛になるまでの経緯です。
12年前に腰のヘルニアになった。その時に、MRIを撮り、腰の骨の3番目と4番目の間が狭くなっているといわれた。
その後、仕事が忙しくなったり、大掃除をしたりすると、時々、腰痛が起きるようになった。1か月前に会社の引越の作業をした時に、やはり、腰痛が出た。
いつもなら、数日で痛みが取れるのだが、今回は取れず、痛みもだんだんとひどくなってきた。2,3週間前に、何もしないのに、急に痛みが激しくなり、歩くとしびれを感じるようになった。先週からは、10分も歩くと、右のお尻から足の掛けてしびれが激しく、休憩しないと歩けなかった。休憩した後、直ぐに、痛みとしびれが出て、休みながら歩くという状態だった。痛みなく歩ける距離が、日に日に、短くなってきた。
来院当日の様子と初回治療
歩ける距離は数100メートル程度になってきており、しびれがひどくなり、我慢できない様子でした。座っている状態から立つときに、腰痛が激しくなるようでした。
立ち上がってしまい、立ったままなら、大丈夫でした。腰の骨の3番目と4番目の関節のところが、捻じれている感じで、触るとぼんやりと膨れていました。
ただ、熱っぽい感じや押すと痛むということはありませんでした。腰骨の高さに左右差があり、右のほうが少し高くなっていました。お尻のくぼみのあたりを押さえますと、左右で明らかに違い、右を押さえると痛みを訴えていました。
自転車を押して歩いても痛みや、しびれが生じているようでした。腰全体の様子は、良くなく、腰痛持ち特有の腰の感じでした。
簡単な検査をしましたが、特にヘルニアの傾向は認められませんでした。ほかに、神経学的な異常もありませんでした。
初回の治療では腰、おしりの筋肉の緊張を取り除くことを目的とする鍼治療をしました。
直径0.30ミリ、長さ90ミリの鍼を腰の左右に2か所ずつ刺し、同じ種類の鍼を右の股関節のあたりに刺し、直径0.24ミリ、長さ60ミリの鍼を腰の左右に5か所ずつ、同じ種類の鍼を、左右の太もも、ふくらはぎに、それぞれ1本ずつ刺し、約30分ほどそのままで寝てもらいました。
その際に、腰を遠赤外線で温めました。
30分後、すべての鍼を抜き、直径0.24ミリ、長さ60ミリの鍼で、腰骨の3番目、4番目の関節の周囲を刺し、軽く操作をして、関節の捻じれを元に戻すようにしました。
治療後はベットからスムーズに起き、立ち上がることができ、腰を動かしても違和感はありませんでした。
少し、院内を歩いてもらいましたが、特に違和感もなく歩くことができていました。
治療による効果を実証
2回目~4回目の治療
前回の治療後、800メートルぐらいなら、しびれ、痛みも出ずに歩けるようになっていましたので、初回と同じ治療をしました。
治療後は2回目、3回目と回数重ねるごとに、何事もなく歩ける距離が伸びてきました。
椅子から立ち上がる際の痛みは消えたとのことでした。
腰の関節の捻じれている感じは、無くなっており、真っ直ぐになっていました。
5回目~8回目の治療
初回の腰に鍼を刺したまま、寝てもらう方法はそのまま続けました。
関節へのアプローチは中止しました。その代わりに、鍼を全て抜いた後、直径0.20ミリ、長さ50ミリの鍼を用いて、腰全体の筋肉の緊張を緩める鍼をしました。
治療後は腰の違和感は全くなくなりました。
歩くときに股関節の動きがスムーズになり、足の運びが軽いとのことでした。
7回目の治療後、日常生活での歩行には全く支障がなく、痛み、しびれもなくなっていましたので、8回目で終了としました。
院長による今回のケースの施術感想
50歳代の男性で、休み休みしか歩けないとのことでしたので、脊柱管狭窄症という病気を疑いました。ただ、長時間立っていても腰は痛くならないことや、前かがみで歩いても痛みやしびれが生じることから、その可能性は低くなります。
ヘルニアかどうかを観察する検査でも異常はなく、神経学的にも異常はありませんでした。
ここから、筋肉の緊張で、血管や神経を締め付けることによって、痛みやしびれが起きていることが推定されます。
この筋肉の締め付けによる痛み、しびれは、意外に多く起こります。一般的には、ほとんどがこれによるともいえます。この患者さまの場合は、腰やおしりの筋肉が腰から足にかけて走っている坐骨神経を締め付けて起きたと考えられます。
腰の筋肉は比較的大きく、太いものが多いです。そして坐骨神経は深いところを走っています。腰の表面から見ますと深いところの筋肉も緊張しています。この筋肉の緊張を取り除くには、深く鍼を刺す必要があります。
今回、比較的長い鍼を用いたのは、このことによります。
股関節にも同じような鍼をしたのは、理由が2つあります。
1つは、腰骨の左右差を作っているのが股関節の歪みによるので、それを調節するためです。
もう1つは、坐骨神経を締め付けている筋肉を股関節から狙いました。
長い鍼を深く刺しますので、ゆっくりと刺していき、負担にならないようにします。また、長い時間そのままにし、上から温めたのは、少ない刺激で、より良い効果を出すためです。
この患者さまの場合は、会社の引越作業時に、腰をひねり、それが原因となり、腰の筋肉の緊張が広い範囲で起き、締め付けによるしびれ、痛みが生じたと考えられます。そこで、最後に、関節の歪みを調整する鍼治療を加えました。
このような事例では、深く鍼を刺しますので、どうしても刺激を感じます。
この場合に、浅く、軽く刺し、刺激のない鍼治療では、治ることはまずありません。
患者さまの状態を確認しながら、慎重に鍼を刺すのがベストの方法です。
今回のようにしびれが生じますと痛みだけより治りが遅くなります。
また、他の病気がないかどうかの判断が大切になります。
東洋医学からの視点
基本的な考えは同じです。
「古典医学」には、神経や血管は、「分肉の間」を走るとあります。
「分肉の間」に「邪(病気の元)」がある場合は、「分肉の間」を刺せとあります。
血管や神経が走る場所ですから、浅い分肉と深い分肉があります。
この事例では、坐骨神経という比較的深い場所を走る神経ですので、深い「分肉の間」に、鍼を刺したわけです。