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【糖尿病】大阪府、50代 女性、鍼灸治療のケース

2013年5月30日6:01 PM カテゴリー:症例,糖尿病

大阪府の患者様:「足や腕の痛みが取れ、自由に動き回りたいです!」

今回のケースは小児喘息からアレルギー性喘息となった50代女性の患者様についての症例です。
まずは来院された際にカウンセリングした内容から説明します。
小児喘息が、治らずそのまま、アレルギー性喘息になった
10年位前に糖尿病の境界型と診断された
1年前から、血糖値は食後血糖値が220に、HbA1cは、7.2になってきた
現在は、薬を飲んでいる
2,3年前より足くるぶしが痛く、歩きづらいこともある
痛む場所が日により異なる
近所の整骨院でマッサージをしてもらっているが、その場所は良くなる
ただ、終わった後に、別のところを痛く感じることがある
最近は、右腕や右の肩甲骨の周辺も痛くなり始めた
痛みで息苦しいこともある
1年前より、血糖値や、HbA1cの数値が上がりだし、喘息ひどくなってきた
息をしづらい時もある
風邪もひきやすくなり、それに伴い、喘息がひどくなり、会話しづらいこともある

来院当日は直近の血液検査などで、食後血糖値220、HbA1c7.3とのことでした。
身長は149cm、体重は62㎏、BMIは27.9と肥満傾向。
痛みとしては左足のくるぶしの痛みが強く、最初の一歩を踏み出す時に激痛が走っていました。
また右腕の痛みもあり、腕を自由に挙げられない状態でした。
友人と話をしているときに咳が激しく、マスクをしないと話ができない状態でした。
私に説明をする時もよく、咳き込んでおり、顔色が薄黒い感じで力がない様子でした。
触診では、下腹に力がなくプヨプヨした感じ、肩こり感を強く、訴えられていました。


初回治療の方法と効果

ご本人は、足や腕の痛みと、糖尿病は関係がないと思っておられました。
今回の事例ではその関係性を説明し、痛みの治療に糖尿病と喘息の治療を加えました。

足や腕の痛むところに、直径.020ミリ、長さ30ミリの鍼を5か所に刺しました。また、糖尿病と喘息の治療に、手足のツボから3か所を選択し、直径0.14ミリ、長さ15ミリの鍼を刺しました。

全身のエネルギーが良く流れるように調整した後、30分間そのままの状態で寝てもらいました。
鍼はあまり経験がないとのことでしたので、初回は、肩こりの治療はしませんでした。

・治療後
ご自身の状態を説明するときも咳き込みはありませんでした。
足や腕の痛みも消えていました。歩き始めも、全く問題がありませんでした。マッサージを受けた時のように、別のところが痛くなっていることもありませんでした。

足や腕の痛みは、糖尿病からきていること、アレルギー喘息と糖尿病が重なり、風邪をひきやすいことなどを説明しました。

鍼灸治療では、それらを同時に改善できることも説明し、週1回のペースで通院して頂くことにしました。


その後の施術と経過

2回目~6回目の治療

最初に、首から肩にかけての凝り感がるところに、直径0.20ミリ、長さ30ミリの鍼で、軽く刺しては抜く、ということを12か所にしました。
その後、前回と同じような治療をしました。

・治療後
肩こり感は、回数が増えるごとに軽くなってきたようです。
足や腕の痛みは出たり、消えたりしていますが、痛み自体は軽くなってきているようでした。
特に、足の踏み出し始めの痛みは、ほとんど感じなくなったようです。
喘息の状態も改善されつつありますが、職場や友人との間で問題が生じるとひどくなるようです。

7回目~15回目の治療

治療方法は、前回と同じです。

・治療後
足の痛みはほとんど感じなくなってきました
腕の痛みや肩甲骨周辺の痛みは、ひどくなったり、良くなったりを繰り返しているようでした。
血液検査で、食後血糖値が160に、HbA1cが6.7になっていました。
体重も5キロ痩せたと、報告がありました。

16回目~24回目の治療

肩こり感の治療は必要がないと判断しましたが、ご本人から気持ちが良いので続けてほしいと要望がありました。
治療方法は、前回と同じになります。

・治療後
足の痛み、肩甲骨周辺の痛みは、完全になくなりました。
腕の痛みが少し残っていましたが、痛みを感じながらも腕は自由に動かせるようになっていました。
今までのように、毎月のように風邪をひくこともなくなり、喘息の状態も安定してきました。
息苦しさを感じることもなくなってきました
友人との間に問題が生じ、ストレスを感じても、喘息が出ることが無くなってきました

24回目~30回目の治療

治療方法は、前回と同じです。

・治療後
血液検査で、食後血糖値が100、HbA1cが5.8になり、体重も51キロとなっていました。
腕の痛みを感じることもほとんどありませんでした。
喘息もほぼ出ることがなくなりました。
からだの状態もよく、検査数値も安定し、痩せてきましたので、治療を一旦、終了としました。


施術者の感想

糖尿病が長く続きますと、まず足の痛みが出てきます。糖尿病では、長い神経から悪くなる特徴があるからです。
足の神経は腰から足にかけて走っていますので、長い神経に当たります。

神経に栄養を運ぶ血管が糖尿病で傷つき、十分に酸素と栄養を送れなくなることにあります。長い血管ほど、酸素や栄養がないとダメージが大きいから、まず、痛みが出ます。

以前は、糖尿病がかなり進行してからしか、神経の痛みは出ないとされていました。最近では、糖尿病の境界線上であっても、10年近くたつと、足の痛みが出てくるとされています。
 
この患者さまの場合が、これに当たります。
近所の整骨院で、痛むところにマッサージをしても、痛む場所が変わったり、直ぐに痛くなったのは、ベースに糖尿病がある痛みだからです。

ベースの病気の改善を図りませんと、この痛みは取れません。
この患者さまの場合、ベースにアレルギー性喘息がありました。アレルギー性喘息と糖尿病との関係は、あまりないとされています。

しかし、最近、アレルギー性喘息の中に、糖尿病やリウマチを引き起こしやすいタイプがあることが分かってきました。
今回の事例では、糖尿病がひどくなってから、喘息もひどくなっています。ベースのアレルギー性喘息が、糖尿病を引き起こしやすいタイプの可能性があります。

実際、鍼治療により、糖尿病が安定してきますと、喘息も改善されています。
また、アレルギー性喘息は、気道の炎症ですので、繰り返すことにより、気道の働きが弱くなります。

風邪をひきやすい原因が、ここにあります。

今回の事例では、ベースにあったアレルギー性喘息が糖尿病を引き起こし、それにより、痛みが生じ、喘息もひどくなったといえます。
もっとも、このタイプのアレルギー性喘息が、必ず、糖尿病を引き起こしわけではありません。この患者さまもそうですが、糖尿病の原因は、甘いものや脂っこい物の食べ過ぎと、運動不足です。

今回は、より、早く、糖尿病が出現したという感じです。
病気の大本が、喘息から、糖尿病に移行していましたので、糖尿病を改善する治療を中心にして、効果が出ました。今回は、患者さまは、運動を解くにはしていませんが、食事の改善指導はしました。

鍼治療と食事療法の相互作用で、体重が約10キロ落ちたことも、良い効果が出た要因と推定されます。
今回のように、痛みの原因を糖尿病と気づかずないことは、最近、特によくあります。健康診断などで、糖尿病ではないが、食生活の見直しをと、長年、指導されている方は、注意が必要です。



東洋医学からの視点

糖尿病は、現代病とも言われていますが、決してそうではありません。人が文明を築き、贅沢になったころから、人類を苦しめてきた病気です。
古代の医学書には、糖尿病は、「消渇(しょうかち)」と記載されています。のどが渇き、よく水を飲み、多く食べ、小便の回数が多くなり、痩せていくとあります。

この病気は、基本的には、3パーターンに分類されています。「肺」を中心としたもの、「脾」を中心としたもの、「腎」を中心としたものです。
この3つの臓器は、からだの水の流れ(新陳代謝)に、深くかかわっています。糖尿病は、ある面で、新陳代謝の異常といえます。甘いものや、脂っこいものを食べ過ぎ、それを消化吸収できず、血管から糖分があふれた形だからです。

水分を多くとるのは、それを少しでも薄めようという、本能的な意識によるものです。
古代の医師たちは、観察により、これらのことを理解していました。この患者さまの場合、ベースにアレルギー性喘息、即ち、「肺」の炎症がありました。
古代の医学理論では、食べたものを消化し、栄養分に変える働きのある「脾」は、その栄養分(血)を「肺」に送る働きがあります。
「肺」に炎症がありますと、「血」を多く要求します。作られた「血」は、「肺」に送られ、炎症によりすぐに、消費されます。また、「肺」は、「血」を要求します。からだの他のところに、栄養が行き届かなくなり、「空腹感」が生じ、食べることが多くなります。

「脾」は、働き過ぎますと、「甘いもの」を欲しがる性質があります。
今回のような事例では、空腹時に甘いものを多く食べるということになります。
このような流れで、アレルギー性喘息から糖尿病を引き起こしたと考えられます。この状態は、からだの臓器が常に働いている状態です。働き過ぎ、過熱し、「熱」を生じます。

この熱が、「肺」に留まり、溜まると、「熱」から「火」に変化します。「火」は臓器を焼き焦がしますので、喘息がひどくなります。気道の炎症もひどくなるため、風邪をひきやすくなります。

神経に伝わりますと、神経が興奮し、痛みが生じます。「熱」は、移動する性質がありますので、痛むところが変化したわけです。
東洋医学では、思い悩むと「脾」が傷つくとあります。

友人や職場でのトラブルが喘息悪化させたのは、「脾」の働きが悪くなり、その影響が「肺」に出たと考えられます。今回の事例では、まず、さまざまな症状をもたらしている「脾」の改善が急がれました。

「脾」から「肺」へ適度に「血」が送られるようになり、「肺」の炎症も改善されました。
その過程において、痛みは自然に解消されています。

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