PCOSからPMOSへ|鍼灸院 天空

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2026.10.12

PCOSからPMOSへ

名前の変更が伝えている、これからの女性の健康の見方

「PCOSと診断されたけれど、最近はPMOSという言葉も見かけるようになった」
「名前が変わると、これまでの治療も変わるの?」
「妊活中ではないけれど、生理不順や体調の波について相談してよいのだろうか?」

そんな疑問を持つ方へ。

近年、これまでPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と呼ばれてきた症状について、名称をPMOSへ見直す国際的な動きが公表されています。

PMOSは、英語で 「Polyendocrine Metabolic Ovarian Syndrome」 と表され、日本語では「多内分泌代謝性卵巣症候群」と訳されています。

これは、単に病名の呼び方を変えるための話ではありません。

これまで「卵巣の病気」「不妊の原因」と受け止められやすかった状態を、生理や排卵だけでなく、ホルモン、代謝、睡眠、心の状態、そして将来の健康まで含めて見ていこうとする、大切な視点の変化です。

現時点では、読者の混乱を避けるため、この記事では基本的に多くの婦人科クリニックにならい「PMOS(旧PCOS)」と表記します。

 

「多嚢胞」という言葉が生んできた、見えにくい誤解

PCOSは、英語の 「Polycystic Ovary Syndrome」の略で、日本語では「多嚢胞性卵巣症候群」と呼ばれてきました。

しかし、この名称には、実際の状態とは異なる印象を与えやすい面がありました。

「嚢胞」と聞くと、卵巣に腫瘍のような袋や、水のたまったものが多数あるのではないかと、不安になる方もあるからです。

しかし、超音波検査で見られる小さな粒状の所見は、一般にイメージされる病的な嚢胞とは異なります。

発育の途中にある卵胞が多数見られる状態を示しているのですが、「卵巣に危険な嚢胞がたくさんある」と受け取られることもあり、不要な不安を生じさせることがありました。

また、超音波画像の特徴だけが強く意識されると、生理不順、排卵の悩み、ニキビ、体重変化、気分の揺れ、不安感などがあっても、「自分は当てはまらないかもしれない」と考え、相談や診断につながりにくくなる可能性もありました。

PMOSという新しい名称には、こうした誤解を減らし、状態の全体像をより正確に伝えたいという意図が込められています。

 

PMOSという名前に込められたこと

PMOSの名称には、生理や排卵だけにとどまらない視点が含まれています。

生理や排卵は、卵巣だけで決まるものではない

生理や排卵には、卵巣だけでなく、脳からの指令に関わるホルモン、アンドロゲンと呼ばれるホルモン、血糖の調整に関わるインスリンなど、複数の働きが関係しています。

たとえば、

・生理が不規則になる
・排卵のタイミングがつかみにくい
・ニキビや体毛の変化が気になる
・ 体重が変わりやすい
・疲れやすさが続く
・気持ちが揺れやすい
・睡眠の状態が気になる

などといった悩みは、一つひとつ別の問題に見えるかもしれません。

しかし、背景にホルモンや代謝の状態が関わっている場合もあります。

PMOSの「多内分泌」という言葉には、「身体の中で起きていることを、一つの臓器だけの問題として切り離さずに見ていく」という視点があります。

 

「代謝」も、将来の健康を考えるうえで大切になる

PMOSの「M」は、代謝を意味する 「Metabolic」です。

血糖、脂質、体重、インスリンの働きなどは、生理や排卵とは別の話に見えるかもしれません。

けれど、PMOS(旧PCOS)では、こうした代謝面も含めて確認し、必要に応じて婦人科や内科などと連携しながら、将来の健康を長い目で考えていくことが大切とされています。

妊娠を望む時期だけの話ではありません。

・生理不順が気になっている時期
・妊活について考え始めた時期
・出産後に自分の健康を見直したい時期
・年齢を重ね、生活習慣や体調の変化が気になり始めた時期

など、自分のからだを後回しにしないために、必要な視点です。

 

名前が変わっても、診断や治療が急にすべて変わるわけではありません

「PMOSになったら、今までの検査や薬が変わるのではないか」

そう心配になる方もいるかもしれません。

今回の名称見直しは、状態の捉え方をより実態に近づけるためのものです。

名称がPMOS(多内分泌代謝性卵巣症候群)へ移行することによって、検査や治療が突然すべて変わるわけではありません。

婦人科では、月経の状態、排卵の有無、血液検査、超音波検査、妊娠希望の有無、体重や代謝に関する状態などを踏まえ、その方に必要な方針が検討されます。

低用量ピル、排卵を促す治療、代謝に関わる薬などが選択されることもあります。

PMOSという名称が伝えているのは、治療を複雑にすることではありません。

「生理や排卵だけでなく、生活、睡眠、食事、ストレス、心身の状態まで含めて、その人の健康を見ていこうとすること。」

そこに、この名称見直しの大切な意味があります。

 

日本では当面、「PCOS/PMOS」の併記が続くと考えられます

国際的にはPMOSへの名称移行が進められていますが、日本国内で、すべての表記がすぐにPMOSへ統一されるわけではありません。

当面は、

・PMOS(旧PCOS)
・ PCOS/PMOS
・ 多嚢胞性卵巣症候群(新名称:PMOS)

といった併記が使われることが予想されます。

国際的なガイドラインへの統合・実装は、今後の改訂に合わせて進められる見通しです。

一方、日本では診断基準、保険病名、電子カルテ上の表記などについて、直ちに一斉変更となるかは明確ではありません。

病院で「PCOS」と説明を受けても、情報の中で「PMOS」という表記を見かけても、現時点では同じ流れの中にある名称として理解しておくとよいでしょう。

 

「治療を受けているのに、毎日はつらい」と感じるとき

婦人科で診察を受け、必要な検査や治療を始めている。

それでも、毎日の困りごとがすべてなくなるわけではありません。

・生理が不規則で、予定を立てにくい
・生理前後の痛みやだるさで、仕事や家事に集中しにくい
・治療中ではあるものの、睡眠や疲れ、冷えも気になる
・ 妊活を考え始めたことで、不安が大きくなった
・ 薬を使いながらも、生活面で自分にできることを知りたい
・婦人科で聞きそびれたことを、どこに相談すればよいか分からない

こうした悩みは、検査結果や診断名だけでは語りきれません。

PMOSという名前が示しているのは、からだの一部分だけを見るのではなく、日常生活の中で感じているつらさも置き去りにしないという視点です。

その意味では、今回の名称変更は女性のライフスタイルに合わせて健康を考えていくという面も含まれ、有意義な改定だと言えると思われます。

 

鍼灸は、PMOS(旧PCOS)と向き合う選択肢になり得るのか

PMOSに関する鍼灸研究は、現時点では主に、旧名称であるPCOSを対象として積み重ねられています。

研究結果だけを見て、「鍼灸を受ければ必ず排卵する」「鍼灸だけで治療できる」と言うことはできません。

一方で、排卵に関する状態、代謝面、ニキビや生活の質、気分の変化などについて、鍼灸がどのような役割を果たし得るのかを調べる研究は、少しずつ蓄積されています。

大切なのは、鍼灸を婦人科診療の代わりにすることではありません。

必要な検査、診断、薬による治療、不妊治療などを大切にしながら、薬だけでは拾いきれない日々のつらさや、治療を続けるための心身のコンディションについても相談する。

鍼灸は、そのために加えられる選択肢の一つです。

 

鍼灸に関する研究では、どのようなことが報告されているのか

 

排卵に関する研究

2025年には、PCOSに伴う排卵機能障害を対象に、43件、4,827名のランダム化比較試験を統合したメタ解析が報告されています。

この解析では、鍼治療単独と偽鍼を比較した場合、排卵率に関する指標で鍼治療群が上回る結果が報告されました。

また、薬物療法との比較や、鍼治療と漢方薬を組み合わせた場合についても検討が行われています。

さらに、鍼治療の方法、頻度、治療期間といった条件によって、結果がどのように変わるかを検討する分析も行われました。

メタ解析は、現時点で最もエビデンスレベルが高い研究方法とされています。

ただ、この結果から「鍼灸を受ければ排卵が改善する」とは言えず、その可能性を示したものになります。

しかし、排卵に関する悩みを抱える方が、婦人科での検査や治療を受けながら、鍼灸も相談先の一つとして検討する背景になる研究だと言えます。

 

代謝に関する研究

PMOSという新しい名称には、「代謝」という視点も含まれています。

2025年には、PCOSにおける鍼治療とメトホルミンについて、インスリン感受性への影響を比較した複数研究の解析も報告されています。

この解析では、インスリン抵抗性に関する代表的な指標ではメトホルミンがより良い結果を示した一方、空腹時血糖や体格に関わる一部の指標では、鍼治療にも変化がみられたと報告されています。

ここから言えるのは、薬より鍼灸が優れているということではなく、また、お薬を止めて、鍼灸だけでよいということでもありません。

ただ、睡眠、疲労感、緊張、ストレス、生活リズム、生理に伴うつらさなど、日常の状態にも目を向けたい方にとって、鍼灸が補完的な役割を果たせることを意味しています。

血糖、インスリンの働き、体重、脂質などに関わる状態は、必要に応じて婦人科や内科で確認し、医師とともに治療方針を考えることが大切です。

その上で、鍼灸も選択肢として考える意義がある研究結果といえます。

 

検査の数値だけではなく、毎日の過ごしやすさにも目を向ける

PCOSの女性926名を対象とした大規模なランダム化比較試験の二次解析では、4ヶ月間の介入後、鍼治療群においてニキビ、LDLコレステロール、気分や生活の質に関する一部の項目に変化が報告されました。

一方で、生活の質に関する変化の一部は、比較対象の施術を受けた方にも見られています。

これは、鍼灸は全身症状や気分、生活の質に関与できると言えるものではありませんが、その可能性があることを意味しています。

ただ、PMOS(旧PCOS)と向き合うときに大切なのは、排卵の有無や検査値だけではないことを改めて考えさせてくれます。

眠りが浅い。
疲れが抜けない。
月経前後に気分が大きく揺れる。
肌の状態が気になる。
治療を続けているけれど、毎日のしんどさも誰かに聞いてほしい。

そうした悩みもまた、置き去りにしてよいものではなく、向き合う必要があることを示している研究結果ともいえます。

 

婦人科での治療を大切にしながら、鍼灸に相談できること

鍼灸は、婦人科での検査、診断、薬物療法に代わるものではありません。

生理不順、無月経、不正出血、強い月経痛、急な体重変化、妊娠に関する悩みなどがある場合は、まず婦人科で必要な診察や検査を受けることが大切です。

そのうえで鍼灸は、婦人科での治療と並行しながら、日々のつらさや生活上の困りごとを相談する選択肢の一つになります。

たとえば、次のような思いで来院をされる方が多いです。

・婦人科で治療を受けているが、生理に伴う痛みや体調の波もなんとかしたい
・服薬中ではあるものの、不眠、疲労感、冷え、緊張なども含めて自分の状態を見直したい
・薬を自己判断でやめるのではなく、主治医の治療を大切にしながら徐々に減薬したい
・妊活だけでなく、これからの生理や健康についても向き合いたい
・生理や排卵、婦人科治療に関する悩みを、女性鍼灸師に話したい

鍼灸院 天空では、現在受けている治療、生理周期、痛みや冷え、睡眠、食事、仕事の忙しさ、ストレスの状況などだけではなく、これまでの経緯について詳しくお伺いします。

そして、今の生活に合わせて、鍼灸治療や日常の過ごし方について一緒に整理していきます。

婦人科に通っているから、鍼灸院へ相談してはいけないわけではありません。

必要な医療を受けながら、日々の状態も置き去りにしない。

そのために、相談先を一つ増やすという考え方もあります。

 

女性にしか話しにくい悩みを、安心して話せる場所に

生理、排卵、妊活、服薬、体重、肌、感情の揺れや更年期。

女性の身体に関する悩みは、親しい人にも話しにくいことがあります。

婦人科の診察では時間が限られ、「本当は聞きたかったけれど、うまく言葉にできなかった」という経験がある方もいるかもしれません。

鍼灸院 天空には、女性鍼灸師が在籍しています。

「女性に相談したい」
「生理や妊活の悩みを、気兼ねなく話したい」
「治療のことだけでなく、生活の中で感じているつらさも聞いてほしい」

そのように感じる方は、ご予約の際に「女性鍼灸師希望」とお伝えください。

話せるところからで大丈夫です。

婦人科での診療を大切にしながら、今の身体と毎日の暮らしに目を向ける時間をつくっていきましょう。

 

鍼灸院 天空の取り組み

鍼灸院 天空は、身体の痛みだけでなく、睡眠、疲労感、ストレス、気分の揺れや自律神経の乱れ、ホルモンバランス、血流など、日々の心身の状態にも目を向けた鍼灸相談を大切にしています。

当院は、以下の登録・認定を受けています。

・精神科医と鍼灸師の連携を掲げるAPNETの「こころの鍼灸院MAP」登録院 

・日本線維筋痛症・慢性痛学会「診療ネットワーク参加医療機関マップ」の鍼灸・カイロプラクティック登録施設

・日本栄養精神医学会「カウンセリング型認定施設」

 

生理や排卵、妊活、服薬中の体調、睡眠、疲労感、心身のコンディション、自律神経の乱れについても、現在受けている医療を大切にしながらご相談いただけます。

 

PMOSへの名称見直しは、自分の健康を後回しにしないためのきっかけです

 

PCOSからPMOSへ。

この名称見直しが伝えているのは、卵巣だけの話でも、妊活の時だけの話でもありません。

月経。
排卵。
ホルモン。
血流
代謝。
睡眠。
気持ちの状態。
自律神経。
そして、これから先の健康。

それらを切り離さずに見ていくことが大切だという、新しい視点です。

生理が不規則なことが気になっている。
体調の波に振り回されている。
婦人科で治療を受けながら、自分にできることも考えたい。
一度、落ち着いて話を聞いてほしい。

そう感じているなら、一人で抱え込まないでください。

婦人科での治療を大切にしながら、毎日の体調も置き去りにしない。

鍼灸も、そのために相談できる選択肢の一つです。

 

よくあるご質問

 

PMOSになったら、これまでの診断や治療は変わりますか?

名称の移行と、診断・治療が急にすべて変わることは別です。

現在の症状、検査結果、妊娠希望の有無、代謝に関する状態などを踏まえ、婦人科で必要な方針が検討されます。

気になる点は、かかりつけの婦人科医にご相談ください。

 

PMOSは、妊活をしていない人にも関係がありますか?

関係があります。

PMOSは、妊娠や排卵だけでなく、月経、ホルモン、代謝、生活習慣、心身の状態、将来の健康まで含めて考えていく視点を持つ名称です。

妊娠を希望していない時期でも、生理不順や体調の変化が気になる場合は、婦人科へ相談しましょう。

 

鍼灸だけでPMOSに対応できますか?

月経不順、排卵に関する悩み、代謝に関する問題には、婦人科での検査・診断が重要です。

鍼灸はそれに代わるものではありませんが、婦人科での治療と並行しながら、PMOSの症状に関し関わることは可能です。

また、PMOSに伴う生理に伴うつらさ、生活上の不調、心身のコンディションや自律神経の乱れ、血流などに関し相談する選択肢の一つです。

 

薬を飲んでいますが、鍼灸を受けてもよいですか?

服薬中に鍼灸を受けに来られている方もいます。

初回の際には、服用している薬や受けている治療について、差し支えない範囲でお聞かせください。

薬の中止・減量・変更などの指示はできませんが、主治医に相談したい内容を一緒に整理し、伝えやすくするお手伝いはできます。

 

女性鍼灸師を指名できますか?

はい。鍼灸院 天空には女性鍼灸師が在籍しています。

女性鍼灸師をご希望の方は、ご予約時に「女性鍼灸師希望」とお申し付けください。

月経、妊活、婦人科での治療、日常の体調について、話せる範囲から伺います。

参考情報

・PMOSへの名称見直しに関する国際的な合意形成・原著論文
・ Wei J, et al. PCOSの排卵機能障害に対する鍼治療の用量反応メタ分析. 「Frontiers in Endocrinology」. 2025. PMID: 40951420. doi: 10.3389/fendo.2025.1610338
・Wang Y, et al. PCOSにおける鍼治療とメトホルミンのインスリン感受性に関するシステマティックレビュー・メタ分析. 「Frontiers in Endocrinology」. 2025. PMID: 40607225
・Chang H, et al. PCOSに対する鍼治療の座瘡、脂質、生活の質に関する二次解析. 「Frontiers in Endocrinology」. 2023. PMID: 37711905. doi: 10.3389/fendo.2023.1237260

※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としています。

PMOS(旧PCOS)の診断、検査、治療、服薬に関する判断は、婦人科などの医療機関へご相談ください。鍼灸は医療機関での診療に代わるものではありません。

※記事内の名称変更に関する情報は、公開時点で確認できる資料に基づいています。国内の診断基準・保険病名・医療機関での表記は、今後変更される可能性があります。

婦人科の治療を大切にしながら、あなたの毎日まで置き去りにしない。

 

この記事を書いた人

執筆:秋吉 理也子

鍼灸師:鍼灸院 天空
全日本鍼灸学会 会員
日本栄養精神医学会 会員・認定士

内容確認:夘野 裕樹(院長)

鍼灸師:全日本支給学会 認定鍼灸師・指導鍼灸師
全日本鍼灸学会 会員
日本線維筋痛症・慢性痛学会 会員

公開日:2026年10月12日
最終更新日:2026年10月12日

 

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