うつ病に対する鍼灸治療のエビデンス
3席目は、うつ病に対する鍼灸治療のエビデンスに関してのレビューでした。
演者の先生は、明治国際医療大学の山崎 翼先生でした。
国内・国外を問わず、査読のある医学雑誌に投稿された、うつ病に関する鍼灸治療の効果についての論文は、2011年までと、それ以降に大きな変化があるとありました。
1.2011年までの傾向
世界的な医療におけるエビデンス(科学的根拠)を調査するコクラン共同計画では、コクランライブラリーという本を出しています。
その本において、鍼灸のうつ病に関する論文の内容を調査したところ、以下のような傾向だったそうです。
・薬物治療+鍼治療=有効
・うつ病の標準治療より鍼治療単独の方が有効
・うつ病に対して鍼治療単独とそのほかの治療法を比較し検討した論文が多い
ただし、内容を吟味しますと、バイアスがあり、エビデンスが不十分、あるいは、効果にばらつきがあり、評価が難しいとあります。
このバイアスは、出版バイアスとも呼ばれ、鍼灸に限らず否定的な結果に関する情報が公になりにくいことによるのでは、ということでした。
2.2012年から2016年の傾向
うつ病に鍼灸治療が効果的なのかどうかという論文が増加してきているとありました。
その中でも、特徴的な傾向に以下のようなものがあったそうです。
・原発性のうつ病に鍼治療が有効という論文がある
・鍼治療+薬物がうつ病に有効という論文が圧倒的に増えている
・頭に鍼を刺して電気を流すDCEA治療がうつ病に効果的という論文が増えている
2011年までは、鍼治療単独ということが大きな流れだったようです.
その後、鍼治療に薬物を加えた治療法に関する論文が増加しているとのことでした。
論文数としましては、無作為化比較試験によるものが、735本あったそうです。
また、脳梗塞後のうつ病に関しましては、鍼治療の効果が高いこともはっきりしているようです。
3.うつ病に対する鍼灸治療のエビデンス
これらのことをまとめコクラン共同計画では、うつ病に関する鍼灸治療の効果を以下のように判断しています。
・鍼灸治療と偽鍼(シャム鍼)を比較して、鍼治療は
改善率では有意に改善(統計学的に正しい範囲で改善)
反応率、緩解率では有意な改善を示さない
また、薬物治療との併用を勧めるとあります。
2013年にイギリスで薬物療法単独、薬物療法+鍼灸治療、薬物療法+カウンセリングの3群を比較した大規模の無作為化比較試験(RCT)が実施されています。
その結果は、薬物療法+鍼灸治療、薬物療法+カウンセリングが、薬物療法単独より有意に改善したとあったそうです。
4.まとめ
コクラン共同計画、イギリスでの大規模な臨床試験の結果などから、うつ病に関しましては、お薬と併用しながら鍼灸治療を進めていくことが、大切であることが理解できます。
実際、大阪 心斎橋の鍼灸院 天空におきましても、うつ病患者さんに鍼治療を行っていきますと、お薬の効きが良くなる傾向にあります。
薬の効きが良くなり、症状が改善していきますと、心療内科の先生から、薬の量を減らしましょうと提案があり、さらに改善が進むのが早くなるケースが多くあります。