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更年期障害の誤解を解く

2016年10月2日10:21 AM カテゴリー:更年期障害

更年期症状と更年期障害

 

50歳ぐらいの女性が、さまざまな症状(不定愁訴)を訴えますと、「更年期障害では?」と言われたり、ご自身がおっしゃったりします。

しかしながら、「不定愁訴=更年期障害」ではありません。

更年期障害とは医学的に以下のように定義されています。

「更年期に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、これらの症状の中で日常生活に支障を来す病態を更年期障害と定義する。」

わかりやすく説明しますと、更年期と呼ばれる時期に、検査をしてもどこにも上はないが症状があり、そのことで日常生活が楽に行えない状態といえます。

日常生活に問題がないレベルの症状は、更年期症状として区別しています。

目次

・更年期障害とは?

・更年期障害の症状は?

・更年期障害において否定すべき病気

・なぜ、更年期障害の症状は複雑なのか?

・更年期障害に有効な鍼灸治療

 

更年期障害とは?

では、更年期障害とは、どのような状態をいうのでしょうか?

大きくは、以下の3点が全てあること、とされています。

 

更年期障害は更年期に現れる

 

更年期とは閉経の前後5年間を指します。

更年期相当の年齢になり、12ヶ月以上生理が来ない状態が、「閉経」になります。

女性ホルモンのエストロゲンは、生理周期中の時期より、大きく変化します。

また、閉経の6ヶ月前ぐらいまで、エストロゲンが低下しない場合もあることから、ホルモン値により、閉経かどうかを判断するには難しいとされています。

日本人女性の閉経年齢は、その中央値が50.54歳で、早い女性で45歳前後、遅い方で56歳前後と報告されています。

更年期相当年齢とは、大まかにいいますと、40~60歳ぐらいといえます。

70歳の女性で、最近,始まったのぼせ、汗かきや、20~30歳代の女性に起きる、ほてり、不眠、イライラなどの症状は、更年期障害ではありません。

また、50歳前後で、3ヶ月生理が来ない、あるいは、2週間で生理があるが、量が少ないなどの大きな生理周期の乱れがない場合も、更年期のような症状が現れても、それは、更年期障害ではないとされています。

持続されるストレスからか、あるいは、他に病気が隠れている可能性があります。

俗に言う「若年性更年期障害」と呼ばれている状態は、更年期障害ではなく、多くの場合ストレスに晒され,生じています。

 

器質的変化によらない(検査で異常が無い)

 

更年期障害かどうかを判断する際は、何かの症状があったり、検査で何かが見つかり、更年期障害と診断するわけではありません。

医学的に除外診断と呼ばれ、○○がない、△△がない、××がないなど、あらゆる診察や検査をして更年期障害以外に想定できる病気がないから更年期障害と診断されます。

背後に隠れているかもしれない病気を見逃さないとも、大切とされています。

 

日常生活に支障を来す

 

閉経は、女性のライフスタイルの中で、必ず起こります。

女性ホルモンであるエストロゲンが少なくなることによる更年期症状は、誰でも生じるとも言えます。

なんとなく気になる程度の症状まで、完全に消えることはないとも言えます。

日常生活に差し障りがあるかないかで、改善したかどうかを判断するようにとされています。

なぜ、更年期障害を起こるのかについては、女性ホルモンが少なくなることが、重要な要素とされていますが、その発現の機序については、未だ不明です。

また、ホルモンの減少だけでなく、この時期に生じやすい対人関係や家族の問題、さらには心理的な要因も重なり複雑に絡み合うことにより、多様な症状が生じるのではと、考えられています。

 

更年期障害の症状は?

 

更年期障害といいますと、のぼせ・ほてりというホット・フラッシュが一番に取り上げられます。

ただ、このような症状があれば、更年期障害という、特徴的な症状はないとされています。

エストロゲンが減少することに、本当に関連している症状は、何かということは長く議論されています。

2005年に発表されたアメリのNIHによる報告では、以下のような症状が関係しているとしています。

1.ほてり・のぼせなどの血管運動神経障害様症状

2.膣の乾燥

3.性交痛

4.睡眠障害

また、おそらく関連している症状として

1.抑うつ

2.不安

3.イライラ

もしかすると関連があるものとして

1.尿失禁

その他、認知障害については、十分な情報が無く、背部痛、疲れやすさ、肩こり、関節痛などの身体の症状については、関連性がないとしています。

 

ただ、日本における調査報告は、少し異なるようです。

慶應義塾大学病院における調査では、ホット・フラッシュや発汗などと同じように、疲れやすさ、肩こりが多いとしています。

また、身体的な症状と精神的な症状が、同じようにあることも特徴的であるとしています。

 

更年期障害において否定すべき病気

 

更年期障害かどうかを判断するに当たり、症状からまず除外を考えるべき病気に以下のようなものがあります。

 

○症状→除外すべき病気

症状全般→うつ病、甲状腺機能異常(亢進・低下)

倦怠感・意欲低下→肝機能霜害、貧血

動悸→貧血

めまい→メニエル病、貧血

指のこわばり→関節リウマチ

頭痛→脳腫瘍、薬剤誘発性頭痛

腰痛→椎間板ヘルニア

膝痛→変形性膝関節症

ホット・フラッシュ→カルシウム拮抗薬服用

 

更年期障害には、メンタルストレスが大きくい関係しているとされています。

精神的な症状が多いので、まず、精神的障害かどうかを判断する必要性があります。

精神障害の中でも、うつ病を中心とする気分障害、パニック障害を含む不安障害が多いことが知られています。

更年期症状が生じた際には、まず、心療内科において、上のような病気ではないかどうかを、診断してもらうことが大切になります。

 

次に、比較的多いのが、甲状腺機能異常です。

亢進症、低下症ともに、更年期障害と同じような症状が起きます。

その他の症状にも注意が必要とされ、まず、専門医にてしっかりと診断を受け、否定された上で、更年期と判断することになります。

また、この世代は高血圧の問題で、降圧剤を飲んでいることがよくあります。

この降圧剤のうちカルシウム拮抗薬を服用していますと、血管拡張により、顔面紅潮、動悸、頭痛、全身倦怠感などの副作用が出ることがあります。

このようなときは、検査で異常が出にくく、更年期障害と判断される場合があります。

降圧剤を飲んでいるときには、どのような薬なのか、かかりつけの薬剤師さんに相談するのがよいでしょう。

 

なぜ、更年期障害の症状は複雑なのか?

 

更年期障害の症状は、千差万別で、患者さんお一人お一人で違うとも言えます。

大学病院における更年期外来での初診時の愁訴には以下のようなものがあるようです。

割合の多い順に

・疲れやすい

・肩こりがある

・物忘れをする

・神経質である

・汗をかきやすい

・腰や手足が冷える

・腰が痛い

・イライラする

・つまらないことにくよくよする

・顔が熱くなる(ほてる)

・不安感がある

・憂鬱になることが多い

・覚えられない

・意欲がわかない

・夜、寝てもすぐに目が覚める

・頭が痛い

・興奮しやすい

・手足の節々に痛みがある

・夜、なかなか寝付けない

・息切れがする

などがありますが、他にもさまざまな症状があります。

 

では、なぜ、このように複雑な症状が生じるのでしょうか?

人の身体に備わっている神経やホルモンの活動におけるフィートバック機構から見ると、ある程度の推察ができます。

まず、女性の生理周期のフィートバック機構は

脳の視床下部→下垂体→卵巣系

となっています。

自律神経のフィートバック機構は

脳の視床下部→下垂体→副腎系

となっています。

様々なホルモンのフィートバック機構は

脳の視床下部→下垂体→甲状腺系

となっています。

生理周期、自律神経、ホルモンをどのように作用させるかというコントロールタワーが、同じ視床下部にあります。

近年の生理学では、近くにあると影響を受けるとされています。

すなわち、生理周期が乱れますと、自律神経の働きが乱れたり、ホルモンバランスが崩れることが起きるわけです。

また、女性ホルモンと甲状腺刺激ホルモンなどが、お互いに干渉し合っているという説もあります。

更年期は入り、エストロゲンの分泌が減り、生理周期のフィートバック機構に負担がかかり、脳の視床下部からの指令が乱れますと、自律神経の働きを乱し、ホルモンバランス崩すようになります。

このように3つの機構の作用が乱れてきますので、複雑な症状が絡み合って生じるわけです。

それぞれが、その他のフィートバック機構に影響を与えますので、単純に説明できなくなります。

そして、症状が強くなり、長引くことにより、そのこと自体がストレスとなり、更に症状を悪化させるという負のスパイラルを作るようになっていきます。

このような状態になりますと、抑うつ症状が起きるようになり、更に悪化していきます。

 

更年期障害に有効な鍼灸治療

 

更年期障害は、ある意味、身体に備わっている調整機構の乱れと言えます。

そのため、ある症状に焦点を当て、治療を進めてもあまり芳しい効果が望めません。

調整機構の乱れ、其のものを改善する必要があります。

お薬は、そのほとんどが「1対1対応」で、効果を出しています。

更年期障害におけるホルモン療法があり、効果的ではりますが、それでも、女性ホルモンに対して作用しているのであり、自律神経やそのほかのホルモンに対しては、作用していません。

鍼灸治療は、脳血流を改善することができます。

手や足のツボに鍼をすることにより、その刺激が脊髄を通り、脳に伝わり、刺激を受けた脳へ血液が多く送り込まれることが、動物実験などにより分かってきています。

ホルモンや栄養物質、酸素は、血液により運ばれます。

脳への血流が増えることにより、栄養を十分に受けた脳は、その働きを改善することができます。

そのことが、脳の視床下部で行われますと、生理周期、自律神経、ホルモンのフィートバック機構の働きが改善されます。

これにより、更年期障害の改善が見込めるわけです。

また、刺激を受けた脳から前向き感を出す物質が放出されることも、分かっています。

前向き感物質により、やる気が出る、感情的にならないなどの効果も期待できます。

このように鍼灸治療は、あなたの更年期障害を根本的に改善することができます。

 

 

 

 

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