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不眠に悩む現代の日本人:あなたはなぜ眠らなければならいか

2017年8月8日6:07 PM カテゴリー:不眠症

○睡眠の質は時間より満足度

 

睡眠に必要な時間は8時間とか、6時間というような話がよくあります。

良い睡眠という睡眠の質は、時間ではなく、朝起きたときの「寝た感」によります。

 

例えば、不眠症は、朝起きたときのだるさ、眠気などの不快感や、日常生活を行う上で支障をきたすかどうかによって判断されます。

 

また、一般的に加齢とともに、そう睡眠時間は短くなり、睡眠状態も浅くなっていきます。

 

睡眠には一定のパターンがあります。

睡眠は、深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)からなり、セットで約90分になります。

 

良い睡眠を得るにはこのセットで考えるのがよく、90分の4倍である6時間、あるいは7時間30分が、睡眠時間として適切とされています。

これは、「寝た感」を得るには、浅い睡眠時に起きると得られやすいからでもあります。

 

では、医学的には不眠とはどう定義されているのでしょうか?

医学的な不眠の定義

・眠りにつく障害(入眠障害)

・眠り続けることの困難さ(中途覚醒)

・睡眠パターンが障害され十分な睡眠がとれない(早朝覚醒)

 

不眠症は、普通に存在する症状でもあり、成人の約10%に慢性の不眠が見られ、約50%は時々不眠を経験しているとされています。

 

しかし、現代日本人の睡眠時間は徐々に短くなる傾向にあります。

少し古いデーターですが、NHK放送文化研究所の調査によりますと、1960年代の平均睡眠時間は8時間13分、2000年には7時間23分と短くなってきています。

 

このように現代において睡眠環境は悪化しており、不眠を感じている方が増えています。

 

厚生労働省の調査でも、5人に1人が不眠で悩んでいるとあります。

特に、20~40歳代の働き盛りに多く見られます。

 

その理由も、多忙により睡眠時間が取れないと、現代社会の特質を強く反映しています。

特に、東京や大阪などの大都心では、その傾向が強く見られます。

 

○人はなぜ眠らなければならないか?

以前は、心身の疲労により、起きていることができなくなるのが、睡眠とされたり、不眠は症状であって病気ではないという考えもありました。

近年では、睡眠を取らないでいると、生命維持に危機的な状況をもたらすことが明らかになっています。

 

睡眠とは、脳が生命維持を行うために、積極的に脳によって脳のために、能動的に起こしていることが分かってきています。

すなわち、睡眠は、単なる活動停止(休息)の時間ではなく、高度な生理機能に支えられた適応行動であり、生体防御の働きであるといえます。

 

進化により発達した脳を持つ人にとって、睡眠の適否が、よりよく生活できるかどうかを左右しているといえます。

 

睡眠が満足に取れないとどうなるのでしょうか?

睡眠不足による身体への影響

・大脳の情報処理能力に影響:意識や知能、記憶などの知的活動の低下

・成長ホルモンの分泌が阻害される

・免疫力の低下

・昼間の活動で傷ついた神経を修復、新しい神経を作るホルモンの分泌が低下する

 

このようなことから、風邪をひきやすくなったり、太りやすくなったり、仕事がはかどらないなどが起きます。

 

睡眠不足の時に感じる不愉快な気分や意欲のなさは、からだではなく、大脳そのものの機能が低下し、大脳が休息を要求しているといえます。

 

このため、睡眠を実行し、目覚めの良さを得るために、動物は進化の過程で、さまざまな方式を開発してきました。

 

進化した人においては、睡眠とは大脳のためにあるといってよいほど、特殊化しています。

 

 ○睡眠への認識が高い現代

 

現代は、かつてないほど、睡眠への関心が高くなっています。

 

理由としては。

1.脳科学の進歩により睡眠の重要性が、次第に認識されてきた

2.現代社会が睡眠を慢性的に犠牲にするようになり、さまざまな悪影響が出てきた

 

1.脳科学の面から

睡眠とは、脳を持つ生命体に特有な生理機能であり、生存のために必要不可欠なものになります。

 

脳は、コンピューターのようにいつも同じレベルでの活動はできず、意識水準が絶えず揺らいでいます。

 

質の高い睡眠をすることにより、安定した高次の情報処理能力を発揮できます。

 

このようなことから、発達した大脳を持つ人にとって、睡眠は大切な役割を果たしていることが分かり、睡眠への関心が高くなってきています。

 

2.現代社会の面から

現代社会は、生産活動や経済利益を重視するあまり、睡眠を軽視し、犠牲にしてきました。

 

これにより、私たちは大きな恩恵を受けていますが、同時にさまざま歪みにより、深刻な睡眠障害が増えてきています。

 

例えば、睡眠不足による心身の疲労の蓄積が、自律神経のバランスを崩し、心臓病、糖尿病、高血圧などの生活習慣病や、発病のリスクを高めるという報告が、年々増えています。

 

2003年のアメリカのNHIにおける疫学調査では、平均睡眠時間が5時間以下の人は、8時間の人と比べて、狭心症や心筋梗塞などの病気の発病リスクが、約1.5倍になるという報告があります。

 

うつ病と不眠症の相関性が高いことも分かってきて、うつ病になる前に不眠があるとされています。

 

このように睡眠時間がある意味、日常生活の質のバロメーターの役割を果たすようになり、睡眠への関心が高くなってきたわけです。

 

○睡眠の働きのまとめ

・昼間に傷ついた身体や神経を修復する

・脳を休ませ、安定した高次の情報処理能力を得る

・ホルモンや免疫の力を蓄え、日中の活動に備える

・脳の神経を再生させるホルモンを分泌する

 

睡眠とは、人が生活をしていくうえで、必要不可欠なものであることが理解できると思います。

 

では、どのようにしてあなたは眠ることができるのでしょうか?

 

○睡眠のメカニズム

 

睡眠のメカニズムについては、以下のように分かってきています。

 

☆睡眠調節の2種類の基本法則

 

睡眠調節には2種類の基本法則があります。

1.概日性(サーガディアン)または時刻依存性の調整方式

2.時刻非依存性または恒常性(ホメオスタシス)の調整方式

 

この2つの睡眠の調整方式は、協調してお互いに助け合っています。

 

ただ、進化の過程で別々に獲得された考えられており、それぞれ独立して作用を発現できます。

 

恒常性による調整方式の方が、より高度な働きで、適応性に富んでいます。

 

1.概日性(サーガディアン)または時刻依存性の調整方式

 

人の体内には、地球の開店と相関している1日周期の「活動―休息リズム(概日リズム)」信号があります。

これを生物時計(体内時計)と呼んでいます。

 

脳は、この信号に基づいて眠気を発生させます。

 

一般に休息時間帯の夜間に、眠るのに都合の良いようなリズムが作られています。

 

また、これと別に半日周期のリズムもあります。

 

正午過ぎの一時期に眠気が少し出るのは、このことによります。

 

近年、昼寝の有用性が言われていますが、その理由の一つに、この半日周期リズムがあります。

 

問題は、この生物時計(体内時計)の1日が正確に24時間ではなく、およそ25時間というところにあります。

 

体内時計通りですと、毎日1時間のずれが生じます。

 

そのため、通常は、外界のリズムや社会リズムが主となり、無意識のうちにリセットをして24時間周期に合わせています。

 

大きくは、朝、起床時に日光を浴びることによりリセットされます。

 

そして、光を受けた約16時間後に睡眠を伝える物質であるメラトニンが大量に放出され、眠気が生じ、寝ることができます。

 

生物時計(体内時計)の仕組み

光→目→視神経→視交叉上核(生物時計)→上頸部神経節→松果体→メラトニン放出

 

不眠の原因の一つにこの生物時計(体内時計)のリセットミスがあります。

 

日常生活において、活動と休息のリズムが不規則になりますと、そのリズムにおける生物時計(体内時計)のリセットが難しくなります。

 

これにより生物時計が本来持っているリズム(25時間)で、生活するように信号が送られます。

 

実生活とのズレが徐々に生じるようになります。

このズレが不眠や昼間の眠気を引き起こします。

不規則な日常生活が、不眠の原因といえます。

 

 2.時刻非依存性または恒常性(ホメオスタシス)の調整方式

 

脳は、睡眠の恒常性(ホメオスタシス)により睡眠をコントロールしています。

これは、まず、睡眠が不足した場合に、次の眠りの質と量を決定します。

 

眠らずにいる時間(断眠時間)と睡眠欲求との間には強い相関性があります。

眠らずにいる時間が多くなるにつれて、眠気は直線的の増大します。

 

従いまして、眠らないでおこうと思っても、自力で覚醒続けることは不可能となります。

 

眠らずにいた後の睡眠は、その不足量に応じて、質的の大きく変化します。

起きていた時間が長ければ長いほど、深い眠りの時間が長くなるわけです。

 

この時の深い眠り(熟睡)は、寝入りばなの数時間のうちに優先的に配分され、睡眠不足の解消となるようにしています。

 

このことは以下のようなことを示しています。

・一定の睡眠が必須のものとしてプログラミングされている

・睡眠不足が保証されるシステムが人体に組み込まれている

 

すなわち、睡眠不足になると、その日の夜の眠りは、熟睡がより多くなり、睡眠不足を量でなく、質で補います。

睡眠不足になっても、意識的に長く寝る必要がないといえます。

 

このように脳は、意識下において睡眠の質と量を自動的にコントロールしています。

 

これが、睡眠の恒常性(ホメオスタシス)の根本といえます。

 

そうであれば、不眠症などは生じないのでは?という疑問が起きます。

 

しかし、この脳による睡眠への自動コントロールは、あくまで寝る直前までの過去の情報に基づいて作用します。

 

未来の事情を顧慮してのいわゆる「寝だめ」ができません。

すなわち、睡眠不足による「寝すぎ」の害が起きてきます。

 

熟睡は、事前の必要量から計算され、必要量が満足されますと、それ以降は、ほとんど出現せず、浅い眠りが多くなります。

 

寝不足だからと思い、長く眠りますと、浅い眠りの時間が多くなり、起きたときに気分を悪くしたり、身体はぐったりして、疲れを感じます。

 

いわゆる「寝たけれど寝たりない」という状態です。

 

この後、さらに寝る時間を増やしますと、脳は「寝ている」と判断し、眠気が生じなくなり、不眠症となるわけです。

 

意識的に、持続的に睡眠時間を増やすことが不眠に繋がるといえます。

 

3.まとめ

 

睡眠を決定するのには、概日性(サーガディアン)と恒常性(ホメオスタシス)の2種類があります。

 

それぞれの役割は。

・概日性(サーガディアン)→体外環境の安定した未来を考慮して前向きにプログラミング

・恒常性(ホメオスタシス)→体内環境の変動した過去の状態を踏まえて後ろ向きに補償

 

この2種類のシステムは互いに協調しあい、相補的な関係にあり、さまざま状況に対応して睡眠が確保できるようになっています。

 

 

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