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胚盤胞移植に伴う鍼灸治療の症例

2018年6月14日7:50 AM カテゴリー:不妊症

「中学時代からの生理不順、不正出血……。でも諦めない!」

 

大阪府在住  30代前半女性 胚盤胞移植のための鍼灸治療

 

<来院までのご様子>

 

来院して頂いた患者さまは、3年に渡り不妊治療を続けていますが、なかなか妊娠に至らないため、不妊専門病院で治療を開始されたそうです。

中学生時代から不正出血や生理不順があり、2~3カ月生理が来ないこともあったということです。そのため、妊活をするまでの間も、定期的に病院でビルを服用していたということでした。

 

<生理の様子>

 

・生理の出血は少ない。
・生理前後にはPMS症状がある。
・生理前にはイライラやニキビが目立つ
・生理が来ると腰痛と下腹痛がある。
・血の色は暗く、固まりが混じる。

<病院での治療>

 

病院での不妊検査では、特に異状がないということでした。そこでタイミング法を約1年間、その後人工授精を4回行いましたが妊娠反応すら出なかったため、今後のお仕事や年齢のことを考え、体外受精を選択されました。

高刺激で排卵誘発を行い採卵したところ、39個採卵し、その内受精が11個、更に分割を進めるたところ、胚盤胞が10個凍結できました。

来院前に1個移植しましたが、妊娠反応すら出なかったため、何か妊娠率が上がる方法はないかと、ネットで検索した結果、当院HPを見付けて来院されました。

<鍼灸治療>

 

【初診時のご様子】


初診時は、女性鍼灸師が担当しました。背部の不快な筋緊張を取り除き、下半身の血流を改善するための施術をしました。

うつ伏せで、背部、腰部に6本の鍼を刺し、置鍼10分

ステンレス製使い捨て鍼 長さ30mm 太さ0.18mm使用

仰向けで下腿に6本、腹部に1本の鍼を刺し、置鍼10分

鍼を抜いた後は、背中の凝りと足の冷たさが軽減していると仰っていました。5日後に2回目の胚盤胞移植後の鍼灸治療に来院予定です。

【2診目・胚盤胞移植当日】

 

首、肩、背中、腰に7本鍼を刺し8分置鍼しました。

次に仰向けで腹部に1本、下腿に2本の鍼を刺して15分置鍼しました。

9日後に判定がありました。

判定の結果は陽性でしたが、2週間後に胎嚢確認ができず化学流産となりました。

 

【3診目】

 

前回の移植後、約1カ月で3回目の移植となりました。子宮内膜の肥厚が、今までは6~7mmだったのが、10mmになったと喜んでいらっしゃいました。

前回の妊娠反応からの流産で落ち込んでいると思っていたのですが、「私にも妊娠反応が出るんだと自信が出ました。」と仰って頂けました。

今回は移植前に来院ができず、胚移植当日のみとなってしまいました。

うつ伏せで、背部と腰部に4本の鍼を刺して置鍼しました。

さらに仰向けで、下腿に2本、腹部に2本の鍼を刺して置鍼しました。

 

【4診目】

 

3回目の胚移植の結果も、前回と同様に、陽性反応は出たけれどその後が続かなったそうです。ただ前回の施術時に、着床がしにくいのかもしれないと、ビタミンDをお勧めしたのですが、それ以来ずっと飲んで頂いているそうです。

今回も背部に2か所、腰部に2か所鍼を刺しました。次に仰向けになり、下腿に2か所、腹部に1か所鍼を刺しました。

今回の患者さまのようにモチベーションが高い人は、良い結果になることが多く、気持ちと結果が連動していることは強く感じます。

 

【電話でのご連絡】

 

「今回は、無事胎嚢確認ができました!ありがとうございました!!」

とご連絡を頂きました。今後は、妊娠維持とつわり予防で鍼灸治療を続ける予定です。

<平成30年6月◎日現在>

 

<考察>

 

慢性的な肩こりや腰痛などは、お仕事柄ずっとあるようでした。お仕事に関しては、非常にやりがいはあるようですが、ストレスも溜まりやすく、疲れるそうです。

おからだを触ってみても、肩こりや背中の張りが強く、下あごや背中にニキビが出ていました。ただ下腹部や腰は柔らかく、張りがない感じがしました。

患者さまのお話を聞いたうえで、おからだの状態を診ると、妊娠しにくい状態であることは一目瞭然でした。ポイントは幾つかあります。

 

1.昔からの生理不順・不正出血。
2.生理の出血が少ない。
3.生理の血が少なく、固まりが混じる。
4.PMS症状がある。
5.ニキビが目立つ。
6.採卵数が異常に多い
7.下腹部や腰に力がない。

 

生理不順があることから、生理周期の働きがどこかで乱れていることが分かります。生理周期は、脳の視床下部というところから始まり、ホルモン分泌が連鎖的に繋がり、卵巣からの女性ホルモン分泌が起こります。

この働きの中で、乱れが起こっているということです。そうしたホルモン分泌の乱れの中で、最も起こりやすいのは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)です。

多嚢胞性卵巣症候群は、下垂体から分泌されるLHとFSHというホルモンのバランスが乱れ、LHが多く分泌されることで起こります。LHが多く分泌されると、LHの働きで分泌されるアンドロゲンというホルモンが多く分泌されます。アンドロゲンは男性ホルモンの一種です。

正常ならアンドロゲンは、アロマターゼという酵素の働きでエストロゲンに変換されます。ところが、アンドロゲンが増え過ぎると、男性ホルモンとしての働きが強くなり過ぎるため、エストロゲンを作ることができません。


また常であれば、エストロゲンの分泌がきっかけになって排卵が起こりますが、多嚢胞性卵巣症候群では、エストロゲンの分泌が制限されるため、排卵がスムーズに起こりません。


排卵が起こらないため、排卵後の卵胞から分泌されるはずの黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されません。そのため高温期が正常に起こらず、高温期があまりはっきり来ない、黄体機能不全という状態になります。

つまり多嚢胞性卵巣症候群は、生理周期が乱れ、排卵が上手くできないため、不妊傾向が強く出るということです。さらに多嚢胞性卵巣症候群の特長を列記します。

 

<多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の特長>

 

・LHがFSHに比べて高い。(生理2~3日後測定)
・男性ホルモンであるアンドロゲンの数値が高い。
・アンドロゲンによる男性化(低音声化、体毛が濃くなる、肌荒れ、ニキビイライラ
・育ちかけの小さい卵胞が多くできる。
・AMHが高い
・排卵障害
生理不順、稀発月経、無月経
血液凝固異常がある。(月経の固まり、生理痛、)
・耐糖能異常の方が見られる。
・排卵誘発剤に反応すれば多胎妊娠になりやすい。
・排卵誘発剤を使用すれば、採卵数が多くなる。
・排卵誘発を使用した採卵でOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりやすい。

こうした内容を全て加味すると、元々多嚢胞性卵巣症候群の傾向が強くあったように思います。ただ多嚢胞性卵巣症候群では、ネックレスサインという特徴的な超音波エコー像が診られるため、婦人科で見落とすことがあるのかは分かりません。

また、アンドロゲンが分泌過剰になる原因にはもう一つあります。アンドロゲンが多く分泌されるためには、LHが多く分泌される必要があります。

LHが過剰に分泌される方の中には、耐糖能異常というものがあります。耐糖能異常は、糖尿病の方に見られるようなインスリンが効きにくい方のことです。

耐糖能異常は肥満の方や、遺伝的に糖尿病になりやすい方に多く見られます。近親者で糖尿病の方がいる方で、排卵障害や生理不順がある方は、一度耐糖能異常の検査することをお勧めします。

ただ今回の患者さまは痩せ型の方で、耐糖能異常の検査はされていないため分かりません。

アンドロゲンが上がる原因として、もう一つ、ストレスというものがあります。人はストレスを感じると、防御反応として、副腎からコルチゾールというホルモンを分泌します。コルチゾールは、更に副腎に働きかけ、副腎でアンドロゲンを分泌させます。アンドロゲンは、卵巣や精巣だけではなく、副腎でも作っているのです。

副腎から作られるアンドロゲンが増えても、男性ホルモンとして働くことで、ニキビや肌荒れ、イライラを引き起こします。

今回の患者さまは、ストレスが多く、PMS症状やニキビが見られることからも、ストレスとの関連は無視できません。

 

【多嚢胞性卵巣症候群は排卵(採卵)すればOKではない】

 

多嚢胞性卵巣症候群は、卵胞が上手く育たず、排卵もしにくいという特徴があるのですが、それだけではなく、血液が固まりやすくなる(血液凝固異常)という特徴もあります。

多嚢胞性卵巣症候群では、元々ホルモンバランスが悪いという特徴もありますから、卵胞の成長がしづらい上に、血流という面でもハンデを抱えているというわけです。

そのため、多嚢胞性卵巣症候群の方は採卵数は多くなりますが、卵の質が悪く、妊娠しても育ちにくいという傾向があります。

また血液が凝固しやすいため、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になった時の血栓症リスクが非常に高く、排卵誘発や採卵の際には注意が必要です。

多嚢胞性卵巣症候群の方は、採卵数をやたらと増やすよりも、良い卵を採るためのからだ作りが、体外受精成功の秘訣と言っても良いでしょう。

では良い卵を育てるには、どうすれば良いのでしょうか?

 

【良い卵を育てる条件】

 

・ホルモンバランスを良くする。
・血液循環を良くする。
・ストレスを溜めない。
・生活リズムを整える。
・栄養の摂取を心掛ける。(特に動物性たんぱく質、ビタミンD、オメガ3脂肪酸)

 

ホルモンバランスを整えるには、ホルモン剤を飲むだけではいけません。自然にホルモンバランスが整うように、ストレス管理や生活リズムに気を配った生活が重要です。

また卵胞の成長には、ビタミンDが重要な働きをしています。

動物性たんぱく質を摂ることで、からだに必要なたんぱく質と脂質を同時に摂ることができます。

卵胞の成長に必要なビタミンDと動物性たんぱく質、さらにオメガ3脂肪酸を一度に摂るには、青魚が一番良いと思います。サーモンや鮭なら、さらにビタミンDまで摂取できます。


こうして食事で得た栄養は、血液循環を通して卵巣に届けられますので、最終的には血流が大事になります。卵巣の血流を増やすためには、副交感神経を優位にする必要があります。

鍼灸治療なら、交感神経をブロックし、副交感神経を優位にして卵巣に血液をたくさん送ることができます。体外受精と鍼灸治療との併用で、採卵数の増加や卵の質の改善が見られるのは、こうした理由からです。

 

【鍼灸治療なら着床率UP効果も】

 

妊活は、妊娠して終わりではありません。その後、無事に出産するまでの間、妊娠を維持する必要があります。

妊娠初期の流産の内、ごく初期のものは、流産というよりも着床が上手く完了していないとも言えます。流産と着床障害は、紙一重の関係です。

鍼灸治療は、採卵前に受けることで、卵の質を良くする効果や採卵数を増やす効果が得られ、採卵時期に受けることで、採卵のストレスを軽減し、OHSSを防ぐ効果が得られ、更に移植前に受けることで、着床率を上げる効果も期待できます。

受ける時期によって効果が変わるため、目的に合わせて受ける時期を選択するか、週1回程度で準備機関から妊娠12週程度まで受けることをお勧めします。

初期の流産は妊娠12週までが90%以上を占めますので、その期間を妊活の最重要期間とするべきです。


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