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慢性子宮内膜炎を抱える不育症女性に対する流産予防のための鍼灸治療

2018年8月27日9:58 AM カテゴリー:不妊症

慢性子宮内膜炎と不育症克服のための鍼灸治療

 

【妊娠後に慢性子宮内膜炎が判明】

 

この女性は、2度目の初期流産を経験した後、不育症の検査をするために、大阪市内の不妊専門クリニックを受診されました。

ところが、不育症と着床障害の検査結果が出る前に、3人目の妊娠が判明しました。その後、クリニックでの検査結果が告げられ、慢性子宮内膜炎に罹っていることが分かったのです。


2人の流産後、予防的に飲んでいたアスピリンと、漢方薬の服用は続けていましたが、慢性子宮内膜炎については、病院では治療ができないとのことでした。

病院で行う慢性子宮内膜炎の治療は、一般的に抗生剤の服用が行われますが、妊娠初期であるため、服薬ができないのです。

途方に暮れた女性でしたが、ご主人が何か手はないかと探している内に、当院のHPに行き当たりました。

 

【不育症のための鍼灸治療開始】

 

先ずは流産予防のための鍼灸治療を開始し、子宮の状態が良ければ、慢性子宮内膜炎は、自然治癒も望めることを告げました。

また、慢性子宮内膜炎は、着床障害の原因にはなりますが、流産との関連は不明とのことですので、取り敢えず体調を良くして、不育症対策をすることにしました。

 

<初診時のご様子と鍼灸治療>

 

この患者さまは、血液凝固因子である、プロテインCの低下と、HLA抗原陽性があるため、アスピリンと、柴苓湯は、継続して飲んで頂く事にしました。


妊娠前には、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)であると診断されたこともあり、体質的にも、血液凝固異常があることが考えられます。

自覚的には、あまり辛い症状はないようですが、背中や肩の筋肉は固く緊張しており、手足の冷えや自汗(汗が漏れ出る)があります。また、お腹は硬く冷たいご様子でした。

初診時は、妊娠5週目ということでした。

 

配穴: 次髎 肝兪 三陰交 太谿 関元

 

最も流産しやすい妊娠7~8週の心拍確認までは、週2回来院して頂くことにしました。予定では、その後週1回に変更し、初期流産がぐっと減る妊娠12週を超えるまでは、週1回ペースを守って頂くことにしました。

未だ心理的な不安感が強く、今までの妊娠とは違って、かなり安定しているとはいえ、安心はできないと仰っていました。

 

<2診目のご様子と鍼灸治療>

 

特に、体調不良等は、見られないとのことでした。

 

配穴:復溜 三陰交 関元 肺兪 心兪 次髎

 

<3診目のご様子と鍼灸治療>

 

当院を受診する2日前に、心拍を確認ができたそうです。ただ少し茶色いおりものが出るそうで、まだ不安感が付きまとうそうです。

 

配穴:復溜 三陰交 次髎 心兪

 

<4診目のご様子と鍼灸治療>

 

受診の3日前にクリニックを受診し、心拍を再び確認しました。病院の診察では、非常に順調だと言われたようで、出血も全くない状態を維持できているとのことでした。

 

配穴:復溜 三陰交 関元に鍉鍼(刺さない鍼) 次髎 心兪 脾兪

 

<5診目のご様子と鍼灸治療>

 

体調は順調ですが、たまに茶色いおりものが出ていたそうです。

 

配穴:照海 復溜 関元 下脘

 

<6診目のご様子と鍼灸治療>

 

エコー画像では、2頭身に成長が確認できたそうです。

 

配穴:復溜 三陰交 腹部散鍼

肺兪 腎兪に施灸

 

<7診目のご様子と鍼灸治療>

 

検診で高血圧を指摘されたため、血圧低下のため施術をしました。

 

配穴:照海 三陰交 列缺 腹部散鍼

 

施術後に血圧測定し、101/65 脈拍55で正常確認。

 

<8診目のご様子と鍼灸治療>

 

病院で、血圧が正常に戻っていると言われたそうです。

 

施術:腹部散鍼 復溜 照海

 

施術後の血圧 106/66 脈拍62

 

<9診目のご様子と鍼灸治療>

 

本日で妊娠12週目に入ったため、施術の間隔を2週に1回とする予定。

血圧も正常で、一般病院に転院し、母子手帳も頂いたそうです。


 

配穴:三陰交 公孫 腹部散鍼

 

【考察】

 

今回の患者さまは、2度にわたる流産を経験され、不育症検査もしている不妊専門病院に転院されました。

ところが、不育症検査の結果が出る前に3度目の妊娠が発覚し、しかも検査結果で3つの異常が判明しました。

・HLA抗原陽性
・プロテインC低値
・慢性子宮内膜炎

上の二つに関しては、アスピリンと柴苓湯が処方されましたが、慢性子宮内膜炎に関しては、病院でできることがないと言われてしまいました。

また多嚢胞性卵巣症候群のせいで、生理不順もありました。妊娠前の血液検査を見せて頂くと、しっかりLH高値という特徴も出ていました。


またAMHも非常に高く、卵胞の発育にも問題があるはずです。


AMHは高いほど良いと勘違いされますが、AMH自身は、卵胞の発育を妨げる働きがあります。そのため、多嚢胞性卵巣症候群の方では、卵胞が十分に発育せず、排卵も起こりません。

本来は、卵胞の排卵障害がある多嚢胞性卵巣症候群や、着床障害の原因である慢性子宮内膜炎があると、妊娠自体がしにくいはずですが、この患者さまは、比較的妊娠しやすい傾向がありました。

ここが不妊治療の難しいところで、一般的には妊娠が難しいはず状態の人が、いとも簡単に妊娠することもありますし、全く原因が定かではない人でも、妊娠されない人がたくさんいらっしゃいます。

この女性の場合、西洋医学的には、妊娠しにくく流産しやすい状態のはずですが、結果的に、妊娠しやすく流産しやすくなっていました。

では東洋医学的にはどうかというと、脈診では腎虚と言われる状態が強く見られました。腎虚は、不妊症の中でも治りにくい状態で、流産傾向もよく見られます。

「腎は生殖を主る」と東洋医学では考えられており、その腎が弱っている状態は、妊娠や出産でトラブルが起こりやすい状態なのです。

そこで私は、初診の時から継続的に腎経に対してアプローチをしながら、直接的に子宮に近いツボ(次髎・関元など)も使用してきました。


その結果、この患者さまは、つわりすら殆どない状態で、微量の出血はあったものの、無事12週の壁を越えました。

現在の予定では、本人が自信が出るまで施術を続ける予定です。流産を複数回経験すると、妊娠を継続する自信が湧いてこなくなります。

私たちは、そうした患者さまに寄り添い、安心して妊婦生活が送れるように、サポートします。不育症と診断された女性の内、心理的サポートを受けている方は、80%以上の確率で出産に至るというデータもあります。

それに加えて、体調を整える鍼灸治療をすることで、体調面での不安も無くして頂けば、多くの方は、出産に前向きに挑めるようになります。

心身ともにサポートできるのは、鍼灸治療ならではの利点ではないでしょうか。
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