不妊専門病院に行くと、最近は比較的早い時期にAMH(アンチミューラリアンホルモン)の値を測ります。
このAMHというのは、卵巣予備機能とも言われますが、どうも言葉だけが独り歩きしてしまっているようです。
正しくAMHのことを知ることで、必要のない恐れを取り除きましょう。
AHMとは
AMHは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです。
卵巣からは、毎月1個の卵が排卵されますが、準備段階の卵が常に数十個~数百個成長を続けています。
つまり排卵自体は1個でも、卵巣の中は育ちかけの小さな卵たちがたくさんいるのです。
この育ちかけの卵の周囲にある、顆粒膜細胞から出たホルモンがAMHです。
<トートラ解剖学より>
そこでAMHが高い女性は、卵巣で育ちかけの卵がたくさんあるということで、卵巣にたくさんの卵が残っていると評価されます。
AMHは変動します
AMHは育ちかけの卵胞から分泌されるホルモンです。そのため、測る時期や条件で数値の変動が見られます。
例えば冬季には、AMHが2割弱少なくなります。またHMGやFSHが上昇すれば、AMHも上がります。
また妊娠やピルの服用で低下します。最もAMHが高くなるのは、生理から生理の終了までの間です。
喫煙者や受動喫煙をする環境では、AMHは下がりますし、何かの病気に罹った時にもAMHは下がります。
AMHの数値を上げるには、ビタミンDの摂取が良いとされています。ビタミンDの受容体は、卵巣内の顆粒膜細胞に存在しており、卵胞の発育にビタミンDが関係していることが分かっています。
AMHは直接卵の質とは関係ありません
AMHの数値が高いと、卵の質が良いわけではありません。逆に、AMHの数値が低いからと言って、卵の質が悪いわけでもありません。
AMHは、あくまでも卵巣内の育ちかけの卵胞数と割り切って下さい。
例えば、排卵障害の一種であるPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)では、卵巣内に育ちかけの卵胞が多いため、AMHは非常に高くなります。
だからと言って、PCOSの女性の妊娠率が高いわけではありませんし、妊娠しやすいわけではありません。
強いて言えば、PCOSの方は、採卵をする場合には、比較的採卵数は多くなりますので、体外受精や顕微授精には有利な場合もあるということです。
AMHが低くても閉経するわけではありません
オランダで1992〜2001年に行われた調査では、AMHで閉経の時期を予測するのは難しいということが分かりました。
若年者の場合には、閉経が早いか遅いかという、「傾向」の判断は付くそうです。30代後半以降では、その傾向すらも、予測することもできないそうです。
また母親の閉経年齢が低い方で、自分のAMHが低い方では、閉経年齢が早くなる傾向があるそうです。
そうした条件に当てはまる方は、妊活をスピードアップして下さい。
スピードアップとは、体外受精をするということではなく、あくまでも、しっかりと体調管理するということです。
AMHが低くても妊娠します
現状では、AMHが低いからと言って妊娠しにくいとしたデータはありません。
私が今まで治療してきた女性も、AMHが1.0を切る人はかなり多く、それと妊娠はあまり関係ありませんでした。
ただAMHが低いという心理的ダメージは、かなり心に大きく響いていたように思います。
正しい事実を知れば、こうした間違ったイメージで負う心理的ダメージは、かなり軽減されると思います。
AMHが低くても妊娠はできます。
【体外受精に対する鍼灸治療の論文】
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26455718
こちらの論文では、体外受精で採卵を行う女性240人を4群に分けて調査しています。
1.鍼灸治療 2.偽薬での治療 3.投薬生理周期管理 4.コントロール群
この調査では、1と3の群で採卵数の増加、AMHの上昇が見られ、鍼灸治療の群では、著しく妊娠率が高かったそうです。
どうしてもAMHの数値が気になるなら、鍼灸治療も選択肢の一つだということです。
AMHの数値を上げながら、妊娠率自体も改善することができます。