あなたのお腹に眠っている卵は、やがて静かに目を覚まし、卵胞の中で180日かけて大きくなります。
特に後半の3か月は、卵胞が急激に成長をして、血液から栄養や女性ホルモン受取り、更に卵胞は成熟をします。
成熟した卵胞は、卵を排卵し、黄体へと変化します。今回は排卵された卵のお話です。
【排卵後の卵の行方】
排卵された卵は、急激に劣化します。精子は、子宮の中で1週間生き延びることがありますが、卵は排卵された後、急激に劣化します。排卵後、わずか1日の間に受精や着床する能力を失います。
そのため、排卵後にタイミングを取ったのでは、卵の劣化が早すぎて妊娠する確率が非常に低くなります。
理想的なタイミングは、卵が排卵されてくるのを、複数の精子が待ち構えていることが重要なのです。
そのためタイミングは排卵よりもずっと前に取るべきです。排卵の2日前が最も妊娠率が高く、排卵の1日後であれば妊娠率は0%になります。一方、排卵前は妊娠率が高く、5日前程度なら妊娠が可能です。
様々な方法で排卵日を予想することができれば、排卵日前にタイミングを取ることが必要です。
これは着床とも関連しますので、たとえ受精卵となったとしても、時間的に着床の扉が開いていないと、妊娠をしても流産となります。
卵の劣化、着床の窓と、妊娠は時間との闘いでもあると言えます。
【受精卵となってから先のお話】
あなたの卵が、無事にパートナーの精子と出会えたら、受精卵となり卵管を移動して子宮に達します。
卵管の中では、繊毛に運ばれて移動するため、この繊毛運動が働かないと、卵管内で着床してしまい、子宮外妊娠となります。
無事に子宮内に移動できれば、子宮内膜の周囲を漂いながら、着地点に到達します。子宮内膜の着床時期(着床の窓)と適合すれば、無事に着床となり妊娠が成立します。
着床後は、子宮内膜の構造が徐々に変化をしていきます。子宮から内膜へ延びていたラセン動脈が、徐々に形を変えていきます。
ラセン動脈はその字の通り、らせん状にねじれた動脈ですが、徐々に緩やかなカーブに変化して、胎盤から伸びてくる動脈と血液の交換がしやすいようになります。
受精卵は、妊娠から数週間、母体と血液を交流させていません。つまり卵自身の栄養で、数週間は生き延びているのです。
そのため、妊娠前の卵への栄養供給は大事なわけです。卵の成長の過程で、十分な栄養が供給されていなければ、卵は細胞分裂して分化する材料がないため、成長が止まってしまいます。当院で栄養指導を行うのは、そのためです。
最近の研究では、7~13週程度で血液が母体から胎児に届くようになることが、モニターして分かったそうです。
妊娠7週は、心拍が確認されて、少し安定したころです。この時までに成長を害することがあれば、初期流産となります。
1.卵の成長過程での栄養不良
2.ラセン動脈の形態変化
3.その他胎盤の成長や胎盤付近での血栓症など
こうしたことがないように、妊娠前からのからだ作りが必要なのです。
【妊娠初期の鍼灸治療】
妊娠初期は、鍼灸学校などでは鍼灸治療を禁忌としているところもあります。
これは鍼灸をして流産をするということではなく、たまたま発生した妊娠初期の流産と、鍼灸の関連性を疑われる予防策としてだと思われます。
本来の鍼灸治療は、妊娠初期に起こる様々なトラブル解決をする効果があるため、もっと妊娠初期にも選ばれるべき治療法だと思います。
先程書いたらせん動脈では、特に曲がりくねった構造から、血栓が発生しやすい部位です。
胎盤形成の初期に、らせん動脈が上手く形成されなかったり、PCOSや内膜症の方のように血液凝固異常が出やすい方の場合には、得に血栓から流産に繋がりやすいようです。
http://s-igaku.umin.jp/DATA/63_04/63_04_03.pdf
(子宮腺筋症と血液凝固異常に関する論文)
鍼灸治療は、血液凝固異常に対する効果もあり、初期流産を予防する効果もあります。
個人的には、ぜひ鍼灸を安定期まで受けて頂きたいと思います。