不妊治療には、その時に注目されている治療法があり、そうした流行りの治療法は、ここ10数年でもかなり変化しているように思います。
それだけ生殖医学ということは、よく分かっていない分野なのです。よく分かっていないことを、試行錯誤を繰り返しながらアップトゥデートしているため、病院の検査内容や治療内容は日々進化します。
胚盤胞移植は、ここのところ最も妊娠率が高い方法として取り上げられ、できることなら受精卵は胚盤胞の状態で移植が試みられます。
ところが、胚盤胞移植でしか妊娠しないわけではありません。中には初期胚でしか妊娠しない人もいるのです。
【胚盤胞移植の問題点】
胚盤胞は、受精後5~6日後の分割が進んだ胚を言います。
自然な妊娠の場合、ちょうど着床する時期の胚が、胚盤胞という状態です。
そのため、子宮に直接戻す場合には、着床寸前の胚盤胞が最も適しているというわけです。
病院によって成功率は違いますが、大体3~4割程度の妊娠率となるようです。
ただし、採卵後に受精させた受精卵が、胚盤胞になる確率も3~4割程度となります。
すると、実際に妊娠するのは採卵10個に対して1~2回ということになります。
この胚盤胞にまで分割できない場合には、採卵だけ重ねて移植ができないということになります。
施設によっては、胚盤胞移植に育たない卵は移植しない病院もありますので、そういった病院の場合には、採卵のみ何年も重ねることもあります。
【初期胚移植でしか妊娠しない場合もある】
一昔前と違い、受精卵を育てる環境は大きく変化しています。採卵の技術(設備)向上や、胚を育てる培養液の進歩など、胚が育つ環境はかなり良くなっていると思われます。
そのため胚盤胞に育つ受精卵の割合は、徐々に良くはなっているようですが、健康的な子宮に勝るものではありません。
健康的な子宮環境さえ作ることができれば、やはり子宮内の方が胚は良く育つのだと思われます。
私自身も臨床の中で、初期胚にしか育たないにも関わらず、妊娠するという人を何名も経験しています。
培養液では育たないのに、子宮の中ではしっかり育ち、妊娠してご出産されるのです。
以前海外から治療を受けに来ていた方も、ご主人は無精子症でしたが、TESEで採った精子になる前の細胞を顕微授精させ、初期胚移植にも関わらず、お2人のお子さんを無事にご出産されていました。
この患者さまも、胚盤胞まで育たないため、苦肉の策として初期胚移植をしていたのですが、1度目の出産を経験して、自分には初期胚移植が合っていると確信されたそうです。
【成功の秘訣は子宮環境】
こうした初期胚移植を成功させるには、子宮内の環境を、培養液よりも、より妊娠に適した形にする必要があります。
そのためには、鍼灸治療で血液循環を良くしておき、栄養環境を整え、さらに免疫も整えるということが必要になります。
栄養はバランスよく、必要十分量摂ることが必要です。妊娠に必要な栄養だけを摂るのではなく、あくまでも全体的に摂るのです。
そうすることで、からだが優先順位が高いところから栄養を運び、最終的には、子宮や卵巣にも運んでくれるようになります。
それ以外の方法で、優先的に子宮や卵巣に送るには、鍼灸治療で卵巣や子宮周囲の血流だけを狙って、血流を増加させる方法があります。
子宮も卵巣も内臓器ですので、自律神経の命令で血流が増減するようになっています。鍼灸治療は、自律神経に作用するため、子宮や卵巣の血流を狙って良くすることができるのです。
最後の免疫環境は、着床ということに関しては、最も重要な要素になります。子宮内膜で免疫バランスが崩れると、胚や胎児を異物と認識して攻撃してしまいます。
鍼灸治療は、この免疫系のバランスを整え、妊娠しやすく流産しにくい胎内免疫環境を整えるのです。