当院で受けて頂く鍼灸治療は、妊娠して終わりではありません。妊娠中も継続して施術を受けて頂くことで、赤ちゃんの成長を助ける働きがあります。
妊娠してある程度成長すると、お母さんはお腹の中で胎動を感じることが増えてきます。
ところが妊婦さんの中には、胎動をあまり感じない方もいらっしゃいます。特に初めての妊娠の時には、正常な胎動が分かりませんので、胎動が少なくても気にしません。
でも実際には、胎動は、子宮の状態や、胎児の状態を表すバロメーターなのです。少なすぎる胎動は、不幸な転機を辿ることもあるのです。
【胎動に関する研究論文】
これはスウェーデンの大学病などの共同研究で分かったことです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9259915
科学雑誌に掲載されていた内容では、
「胎児の胎動が減少したり、消失した場合は、産科医の経験的に胎児死亡が示唆される。そこで胎動があまりない妊婦599人に対して、臍帯動脈(へその緒にある動脈)の血流(UA)とNST(ノンストレステスト)の結果を比較して、胎児の健康状態を予測するために観察した。」
とあります。
結果的には、599人の妊婦の内、19名は入院中に胎児が死亡し、残りの580名で経過を観察しました。
残りの580人の内、541人はUAとNSTの両方で安定した値が観察され、1週間後に退院しました。
最終的に周産期脂肪は、23例(3.8%)となりました。胎動は、胎児の健康状態を表すものであり、胎動の低下や消失は真剣に取り組むべき課題だとしています。
※NST(ノンストレステスト):妊婦が腹部に2つのセンサーをベルトで固定し する検査。胎児心拍と子宮の収縮を音とグラフで知らせてくれます。私は妻の付き添いで4度経験しました。
【胎動と逆子】
逆子は、比較的よく見られる妊婦トラブルです。妊娠中に逆子だと診断されても、最終的には治っていることも多いため、あまり問題にはされません。
どうしても治らない時には、帝王切開の適応になることが多いのですが、鍼灸治療にもよく来院されます。
臨床的に逆子の患者さまを診て思うことは、冷え症の方が多いことと、胎動が少ない妊婦が多いことです。
鍼灸治療をすると、必ずと言って良いほど、胎動の増加を妊婦さんが訴えます。普段は当たり前だと感じている胎動が、実はかなり大人しかったことに、皆さんショックを受けることが多いようです。
鍼灸治療で逆子治療をする場合には、胎児を元気にして、自分で回転してもらうようにします。
【胎動の低下は酸欠の影響?】
上のスウェーデンの研究では、胎児死亡の前兆として、臍帯動脈の血流低下が見られたとあります。
胎児は、栄養の摂取や酸素の運搬を、へその緒を通じて行いますので、臍帯動脈の血流が悪くなれば死活問題です。
またNSTの結果で、胎児の苦痛が観察されたとあります。NSTは、音とグラフで結果を示します。
子宮の収縮があれば、「キュゥー!」とかなり高温の苦しそうな音が鳴るのです。あの音を聞くと、出産間近な緊迫した空気を思い出します。
【まとめ】
・胎動の減少は胎児の健康状態悪化を表す。
・胎動の減少は、臍帯動脈の血流低下と関連する。
・胎動が減少すれば、病院で検査を受けるべき。
・逆子は胎動が少ない傾向がある。
・鍼灸治療を受けると胎動が増える。
・鍼灸治療は逆子治療にも安全で効果的