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鍼灸師養成講座その2 PCOSの西洋医学と東洋医学の応用

2018年10月29日11:04 AM カテゴリー:PCOS(多嚢胞性卵巣症候群),不妊鍼灸

PCOSを西洋医学的に考えると

 

海外の臨床研究では、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方は、抑うつ症状に陥りやすい傾向があるそうです。

考え込むからPCOSになるのか、考え込みやすい方がPCOSになりやすいのかといえば、その両方が当てはまるのではないかと思われます。

PCOSの直接的な原因は、血液中の男性ホルモンが多いため、卵胞が十分に成長できないことが原因ではないかとされています。

女性の場合、この男性ホルモンは、主に副腎と卵巣で作られています。副腎の場合には、ストレス刺激により作られ、防御反応を高めるために使われます。

卵巣の場合には、女性ホルモンの材料として作られ、正常なら男性ホルモンから女性ホルモンであるエストロゲンが作られます。

PCOSの方は、この女性ホルモンに変換する作業が、上手くいっていないということになります。

 

東洋医学的な考え方をプラスしてPCOSを分析すると

 

PCOSの原因である男性ホルモンの過剰分泌は、2つの原因で起こることを最初に書きました。

 

1.ストレスに対応するため副腎で作られるため
2.卵巣で作られる男性ホルモンが女性ホルモンに変換できないため

 

では1つずつ考えていきます。

 

1.ストレスに対応するため副腎で作られるため

 

1のストレスに関しては、2つの考え方をする必要があります。1つはストレスの種類について、そしてもう1つは、性格的な傾向についてです。

ストレスの種類に関しては、急激な強いストレスと、慢性的な弱いストレスが関係します。その両方がPCOSと関係がありますが、東洋医学的には、それぞれ違う臓腑に影響を与えます。

急激な強いストレスは、肝に影響を与えると考えられます。慢性的な弱いストレスは、脾に影響を与えると思われます。

更に性格的な傾向としては、脾が最も影響を受けやすいはずです。脾は、思い煩うと病む臓腑であると、されています。

これらを見ると、ストレスで起こる男性ホルモンの過剰分泌には、肝と脾という臓腑が関係が深いということが分かります。

では、肝と脾がどのようにPCOSと関わるのかを、更に専門的に掘り下げます。

 

1-A.東洋医学的考察

 


肝は疏泄作用を持つ臓です。疏泄とは、気血をスムーズに押し流す作用を持ちますが、肝が傷むと疏泄作用が弱まるため、気血の循環が妨げられます。

急激なストレスで肝の疏泄作用が低下すると、PCOSの臨床症状である血液凝固異常が表れます。また気の鬱滞により、卵巣や子宮の機能低下も起こると考えられます。

疏泄作用の低下による血液凝固異常は、PCOS患者の排卵誘発で起こるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)とも関連が深く、鍼灸治療でOHSSが予防できるのは、瘀血に対する処置ができているからでしょう。

これはPCOSの鍼灸治療でよく使用される、三陰交の血性のお陰だと思われます。PCOSの施術をしている鍼灸師は、瘀血に対する処置を必ずしておくことが、OHSSや流産予防につながるはずです。

但し、胎児は生理的な瘀血とも言えますから、過剰な刺激はいけません。くれぐれも、鍼灸治療で流産を誘発することがないようにして下さい。自身の無い鍼灸師は、PCOSの施術は黄体期に行わないことです。

肝の疏泄が悪くなると、その影響は五臓に及びますが、非常に影響を受けやすいのが脾です。肝の疏泄は、脾の運化作用や昇清作用にも影響を及ぼし、肝脾不和という状態を起こします。

その影響は、当然ながら情志の失調にも及びます。もともとクヨクヨしやすい脾の弱い女性は、肝の昂ぶりに更に情志を失調させてしまいます。

こうして肝と脾はメンタルを確実に蝕(むしば)み、高ストレスは持続して悪循環に陥り、副腎から大量のアンドロゲンを分泌します。

更に副腎からは、副腎皮質ホルモンの分泌と共に、視床下部に対してGnRHの分泌抑制まで起こすようになります。

不妊状態は更に深くなります。

 

2.卵巣で作られる男性ホルモンが女性ホルモンに変換できないため

 

卵巣で作られるアンドロゲンは、アロマターゼを活性化することで、エストロゲンに変換されます。但し、アンドロゲンの分泌が多すぎると、変換が間に合わず、大量のアンドロゲンが血中に放出されることになります。

アンドロゲンは、LH(黄体刺激ホルモン)の分泌過剰により、卵胞の莢膜細胞でアンドロゲンが大量に作られることが原因で起こります。

つまり、LHが高いことが、そもそもの原因だということです。高LHの原因として挙げられるのが、耐糖能異常です。

耐糖能異常は、インスリンの働きが悪いことで、血糖値が下がりにくい状態を言います。糖の過剰摂取が原因で起こる場合もありますが、遺伝的にインスリン受容体の働きが弱い方もいるようです。

耐糖能異常は、HOMA-Rという検査で簡単に知ることができます。

耐糖能異常の方は、糖の過剰摂取が原因である場合には、肥満であることが多いですが、遺伝的な耐糖能異常の場合には、逆に痩せ型である場合が多いです。

そのため、海外では肥満型のPCOSが多いのですが、日本人の場合には、圧倒的に痩せ型のPCOS患者が多い印象があります。

これは、インスリンの働きが悪いため、血中の中性脂肪を脂肪細胞に取り込むことができないためです。つまり、「太りたくても太れない」という方が、多いということになります。

 

2-A.東洋医学的考察

 


耐糖能異常は、糖質に対する代謝異常ですから、東洋医学的には、甘味に対応する脾の異常であると考えられます。

甘味の摂り過ぎで脾を傷めるか、先天的に脾の働きが弱い人は、耐糖能異常を起こし易いということなります。

また脾は思い過ぎると患うため、ストレスが過剰になっても、脾を弱らせることで、耐糖能異常になりやすいとも言えます。

また、脾は統血作用も持っています。肝と共に、血液凝固異常とも関連することは想像に難くありません。

脾虚の特徴である、浮腫みや消化不良なども、PCOS患者さんによく見られる特徴の一つです。こうした脾虚に対する施術を加えることは、PCOSの鍼灸治療では欠かせないことです。

脾の弱りを扶けることができれば、あなたはPCOSの東洋医学的な施術ができるということになります。

単に経絡の調整に留まらず、食事指導や生活指導全般が大事なことは、脾というものを理解されていれば分かるはずです。

脾は、手足を動かすことでよく働きますから、適切な運動指導も養生として指導することは、鍼灸師としても必要なことです。

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