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顔面神経麻痺への鍼灸

2023年5月18日3:44 PM カテゴリー:天空ブログ

〇朝起きたら、顔がこわばっていた

・朝起きた瞬間から瞼が閉じられない。

・口の動きが不自由で水を口に含むことができない。

・額の皺が消えた。

これらの症状は、すべて顔面神経麻痺によるものです。

顔面神経麻痺は、30歳から60歳代に多く、ある日、突然、顔の片側が動かせなくなるので、日常生活・社会生活の質が低下し、大きな精神的苦痛が生じることも、まれではありません。

大阪 心斎橋にある鍼灸院 天空には、顔面神経麻痺でお悩みの方が多く来院されています。鍼灸は顔の筋肉や神経に働きかけ、あなたの顔の強張りを元に戻すことができます。

顔面神経麻痺になった後に、鍼灸を行うことであなたのこれからの顔が変わります。

 

〇顔面神経麻痺とは?

顔面神経は、脳から顔に向かって伸びる神経で、顔の表情を作ることが大きな役割です。

顔面神経麻痺は、ウイルス感染または自己免疫疾患によって顔面神経が腫れ上がり、神経の伝達物質が途絶えることで顔の筋肉に浮腫が生じ、また、脊髄から顔へ延びる神経線維が障害されたことにより顔の片側が動かしにくくなる病気です。

 

顔面神経麻痺は、大きく末梢神経麻痺と中枢神経麻痺に分けられます。

 

☆中枢神経麻痺とは?

 

原因が脳内にあります。

特徴
1.脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの脳血管障害によるもの
2.手足の麻痺、構語障害などを併発する
3.CTやMRIの検査の後、脳血管障害に対する処置が必要
4.末梢性顔面麻痺に比べて著明な麻痺はなく、額の皺も寄せることはできる

 

☆末梢性顔面神経麻痺とは?

 

脳から顔の表情筋の間に起きた障害により引き起こされます。

特徴
1.中耳炎や帯状疱疹等の症状が現れ、顔面神経麻痺がその後に発症する
2.末梢性顔面神経麻痺の大半をベル麻痺とラムゼイハント症候群が占める
3.麻痺した状態では筋肉が拘縮し、顔面の痙攣は伴わない
 

この中でも、鍼灸が対応できるベル麻痺とラムゼイハント症候群は、以下のようになります。

ベル麻痺は、以下のような流れで発症します。

1.過去に何らかの原因で感染した単純性ヘルペスウイルスⅠ型が、ストレスや風邪を引くなど体力低下した時に活発に活動する
2.活性化したウイルスにより神経線維に炎症がおこり、シュワン細胞からつくられた髄鞘(ミエリン髄鞘)が損傷される
3.髄鞘には神経細胞の伝達の働きがあり、その髄鞘が損傷されると末梢神経の伝達障害が起きる
4.その結果、顔面麻痺が生じる

他には、帯状疱疹ウイルスも同じ様なことにより、顔面神経麻痺を引き起こすとされています。

これらのウイルスは感染後、治療を受けても完全に除去できずに身体に残っています。

元気な時には不活性化されており何も「いたずら」をすることはありませんが、疲労や病気になるなど体力低下が起きると再活性し、顔面神経麻痺に限らずいろいろな症状を引き起こすとされています。

 

ラムゼイハント症候群は、以下のような流れで発症します。

1.幼少期に水疱瘡に感染後、水痘帯状疱疹ウイルスが脊髄後根神経節に潜伏し、その後、長期間無症状で過ごす
2.加齢や免疫低下により、潜伏していたウイルスが再活性化し、潜伏している神経支配領域に炎症が生じる
3.まず耳からうなじにかけての帯状疱疹が生じ、その後、顔に力が入らなくなり、瞼も閉じられなくなる顔面神経麻痺となる
4.発熱、倦怠感、舌の味覚障害が見られることもある

 

〇顔面神経麻痺の診断基準について

 

顔面神経麻痺は多くの場合、その症状から判定されます。

主には、以下のような評価基準を用います。
顔面部位評価法(柳原40点法)とHousu Brackmann法です。

柳原法の有用性は、顔面神経麻痺になった直ぐに用いると予後判定できることにあります。

以下の10通りの顔の表情から判断します。
①安静時対象
②額の皺寄せ
③軽い閉眼
④強閉眼
⑤片目つぶし
⑥鼻翼を動かす
⑦頬を膨らませる
⑧イーと歯を見せる
⑨口笛を吹く
⑩口をへの字に曲げる

40点満点評価で20点以上を軽症、12点から18点を中等症、10点以下を重症としています。

初期の段階で軽症と判定されると1~2ヶ月程度で治癒、中等症で1ヶ月程度で改善し、3~4ヶ月程度で治癒、重症は2~3ヶ月では改善傾向もなく、治癒まで4ヶ月以上かかり、また、後遺症が残るという愛媛大学医学部の研究結果があります。

 

Housu Brackmann法は、顔面部位の表情運動を概括的にとらえて6段階で評価する方法です。

発症から1ヶ月〜2ヶ月の経過観察期に回復状況を判断することができます。また、部位別評価により、どの部位に神経再建が必要かがわかります。

これらは症状から判断しますので、顔面神経麻痺を得意にしている鍼灸師であれば利用が可能です。

他には、電気生理学的な診断方法があります。

 

〇ベル麻痺、ラムゼイハント症候群に鍼灸が有効な理由!

☆顔面神経麻痺への鍼

 

末梢性顔面神経麻痺の主な病態であるベル麻痺、ラムゼイハント症候群は、どちらもあなたの身体に潜んでいたヘルペスウイルスが何らかの要因により活動を活発にし、神経を包んでいる髄鞘が炎症を起こし、神経伝達が上手くいかなくなり生じます。
鍼刺激は、この髄鞘を修復できることが分かってきています。
中国の第四軍事医科大学や上海医科大学でラットを使った実験ですが、ラットの神経髄鞘を傷つけ、その後、鍼刺激をすると髄鞘の再生と修復機能を促進することが報告されています。

また、四川省リハビリテーション専門学校での研究に「末梢性顔面神経麻痺治療における鍼治療と神経修復の電子顕微鏡観察」があり、鍼により神経修復されることが画像で報告されています。

 

では、どのように鍼を進めていくと良いのかを説明します。

顔面神経領域の頸乳突孔に鍼をすると、顔面神経の側頭枝、頬骨枝、頬筋枝、下顎縁枝、頸枝に刺激が伝わり、それらの傷ついた神経を再生、修復が進んでいきます。

顔面神経は第7脳神経で、表情筋の支配や舌の前3分の2の味覚、涙腺・唾液腺の分泌などを司っています。

鍼刺激により顔面神経が修復されますと眼輪筋の働きも元に戻り、瞼の閉眼不全が起きなくなります。

顔面神経回復過程において神経の過誤支配が生じ、アブミ骨筋性耳鳴が生じることがありますが、鍼刺激はこのアブミ骨に作用するので、過誤を正常化し耳鳴、難聴を改善できることが期待されます。

また、舌の前2/3は鼓索神経支配で味覚を感じ取りますが、この鼓索神経も顔面神経の枝になります。

鍼刺激により鼓索神経の機能を修復し、顔面神経麻痺による味覚障害の改善が期待できます。

このように鍼灸が顔面神経麻痺に効果があることは、埼玉医科大学東洋医学センターなどでも多くの報告がされています。
 

☆顔面神経麻痺へのお灸

顔面神経麻痺にお灸も有用性があることが分かっています。

顔面神経麻痺は神経への信号伝達が出来なくなり、顔の筋肉が動かなくなる症状です。

お灸は麻痺した筋肉の血行の流れを改善し、神経伝達物質の髄鞘の修復し、顔面神経麻
痺の回復を促進します。

また、直接、顔にお灸するのではなく、棒灸という方法で顔から少し離し、お灸の熱で温めるという感じになりますので安全です。

この灸施術と鍼刺激により相乗効果が望め、より早く顔面神経麻痺の改善が期待できます。

 

☆顔面神経麻痺への鍼灸によるインシデント


顔面神経麻痺への鍼灸は安全な施術ではありますが、全く何も害がないというわけではなく、少し害が生じる可能性もあります。

以下にいくつか例を挙げておきます。

・内出血
身体に鍼を刺しますので内出血することがあります。
多くの場合には1週間以内におさまりますので、心配はいりません。

・低温火傷
直接、肌にお灸をしないので火傷の可能性はありませんが、お灸の熱により低温火傷が生じることがあります。

ただ、熱感をお尋ねしながら施術しますので、その可能性は低いです。

・再燃
鍼灸により神経伝達の修復がされ顔面神経麻痺の症状が消失しますが、顔面神経麻痺を引き起こした単純ヘルペスウイルスなどは残っていますので、また、再燃する可能性があります。

それを防ぐために、鍼灸とお薬の併用をお勧めします。

 

〇鍼灸を受けるに当たり通院頻度

発症後1週間~1ヶ月

重慶医科大学の最新の研究によりますと、発症後24時間以内の鍼灸が最も効果的とあります。

このように顔面神経麻痺発症後は、できるだけ早く鍼灸を受けて頂くことをお勧めします。

通院頻度は以下のようなタイムスケジュールをお勧めします。

 

・初回から3回目まで→毎日:連続3日間鍼灸を受けて頂きます。

これは、発症後に動かなくなった表情筋が、日ごとに痩せていくからです。
一旦、時間が経過しますと神経は回復しましても、瘦せた表情筋は以前のように戻りません。

早く鍼灸を受けて頂くことにより表情筋の痩せを防ぐことができますので、早期に受けて頂くことをお勧めします。

 

・4日目以降〜10日目まで→1日おきに来院して頂き、鍼灸を受けてください。

また、重慶医科大学の研究では、末梢神経麻痺の発症後10日以内の灸療法は、神経修復に最適と報告されています。

 

発症後1ヶ月~6ヶ月

・1週間に1回のペースで、鍼灸を受けて頂くことをお勧めします。
顔面神経麻痺へのお薬の治療を受けたが、あまり改善が見られなかった場合にも、同様のペースで鍼灸を受けて頂くと改善が望めます。

中国の成都中医薬大学でベル麻痺患者さんをコルチコステロイドと抗ウイルス薬を6週間服用したグループと、鍼灸のみを受けたグループを比較検討した研究があります。

結果は、鍼灸を受けたグループの方が、顔の緊張が改善されたそうです。

このように鍼灸は顔の歪みを改善することが期待できます。

また、東京大学医学部リハビリテーション科により、顔面神経麻痺後遺症障害に鍼灸が有効であったという研究報告がされています。

このようなことから顔面神経麻痺発症後、後遺症障害が残っている場合にも、同じような感じでの通院をお勧めします。

顔面神経麻痺は放っておくと、回復に時間がかかることが分かっていますので、少しでも早く、鍼灸を受けて頂くことが改善の決め手になります。

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