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【更年期障害】奈良県、50代 女性、鍼灸治療のケース

2013年6月12日5:19 PM カテゴリー:更年期障害,症例

奈良県の患者様:「毎日イライラして何も出来ない。」

今回の症例は更年期障害となった女性のケースです。

避けられない症状とはいえ、日常にも支障をきたほどの苛立ちやその苛立ちからの落ち込みは耐え難いものがあります。
今回の症例では、更年期障害を複数回の治療で改善していった様子を書き綴ります。

今までの経過

1年ぐらい前に生理が来なかったり来たりしだした。その後、急に熱くなったり、顔に汗をよくかくようになった。

顔がよく火照るようになってきて、のぼせて、めまいをよく起こすようになった。

婦人科に行くと、更年期障害と診断され、 更年期かと思うと、憂鬱になってきた。子供たちのすることが、いちいち、癇に障るようになりだした。
これではいけないと思うがどうしようもなくなり、自分を責めた。夜もよく眠れなくなり、動悸を感じるようになりだした。

婦人科でホルモン療法を受けたが、あまり変化がなかった。最近は、常にイライラするようになり、何もする気が起きなくなってきた。何かしようとすると、めまいを感じ何もできないこともある。生理は今のところは来ない状態。

来院当日の状態は何事に対しても、意欲を失っておられ、暗い感じの顔つきでした。

鍼治療が良いと勧められて来たものの、どうしてよいか分からない状態で、緊張もあったせいか、顔の火照りがひどくなっていました。
またカウンセリング中には自分を強く責める言葉が多くありました。

何か行動しようとすると動悸が強くなるようで、ここまで来る間に動悸が強くなっており、肩こり感が強く、特に首の付け根に緊張が強くありました。

血圧は正常でしたが、脈拍は少し速め、腰痛や背中の張りはありませんでした。
他にも不眠やイライラ感により食欲がないとのことでした。

更年期障害への複数回の鍼灸治療による様子

初回の治療では肩こり感や首の付けの緊張を取り除くため、直径0.20ミリ、長さ48ミリの鍼を首に付け根から、首の骨の際、肩にかけて刺し,約20分間そのままの状態で寝てもらいました。その後、すべての鍼を抜いた後、凝り感の特に強いところ2か所に、同じ種類の鍼で刺し、丁寧に凝りを取り除きました。

次の仰向けになってもらい、動悸や感情の高ぶりを抑えるツボ5か所を選択し、直径0.16ミリ、長さ30ミリの鍼を刺しました。

刺した、後に、全身の気(エネルギー)のバランスを整える、調整をし、約30分間そのままで、寝てもらいました。途中、1度、からだの状態を確認し、更にバランスを整えるようにしました。

・治療後
鍼治療は初めてでしたが、抵抗なく治療を受けることができたようです。特に、仰向けの状態では、途中、眠くなり、うとうとされたようです。肩こり感や首の付け根の緊張感はすっかりと取れ、気持ちよくなられていました。

来院された際の火照りや動機も解消していました。脈拍も正常になっていました。お腹が久しぶりに空いたようでした。鍼治療の直後の効果は良い感じでしたので、週に1回のペースで治療を続けてもらうことにしました。

2回目から8回目の治療

2回目に来院された時に、鍼治療で何とかなりそうな気がするとのことでした。治療の方針は変えず、1回目と同じ治療をしました。

・治療後
肩こり感を感じることは、ほぼ無くなっていました。首の付け根の凝り感は、まだ、少し残っている感じでした。夜、寝つきは良くなったようですが、時々、朝、早く目が覚めることがありました。お子様の行動にイライラすることも減ってきていました。

火照りや汗をかくことは無くなってきました。何か行動を起こす時のめまい感も減ってきたようでした。

9回目の治療

来院前に、天候の不順があり、寒暖の差が激しい日が続いていました。体調を崩され、動悸が生じ、また、ひどくなるのではと、不安感を抱いておられました。首の付け根の凝り感も強くなっていました。

鍼治療は初回と同じ方法を選択しましたが、肩、首に鍼を刺したままにする時間を30分間に変更しました。また、仰向けの状態で、鍼を刺したままにする時間も40分間に変更しました。

・治療後
からだに温もり感や、充実感があり、不安感は解消していました。首の付け根の凝り感は消えていました。

動悸や脈拍の速さは改善していました。天候による一時的な体調変化であることを理解し、安心されたようでした。

10回目から16回目の治療

初回と同じ治療を行いました。

・治療後
回数が増えるごとに、状態が安定し、何か起きても、イライラすることが無くなってきました。ご自分を責めることもなくなり、更年期は誰でもある、普通のことと理解されるようになりました。途中、寒暖の差が激しい日がありましたが、からだに変化は起きず、対応できるようになっていました。睡眠もしっかりとれ、食欲も正常なってきました。まだ、まだ、やれるという気持ちが強く感じられるようになってきましたので、終了としました。




施術者の感想

更年期障害と間違えやすい病気がいくつかあります。代表的なものは、糖尿病、甲状腺機能障害、高血圧、うつ病、子宮筋腫などがあります。
今回の患者さまは、事前に婦人科を受診され、更年期と診断されていますので、問題はありませんでした。更年期は、卵巣の機能が衰え始め、女性ホルモンの分泌が急激に変化する時期です。

この急激な変化にからだが対応できず、いろいろな症状が出てきます。また、脳において、女性ホルモンの分泌を命令する場所と自律神経を支配している場所は近い距離にあります。近くにあるため、お互いに影響しあいます。

ホルモンバランスだけでなく、自律神経の働きも乱れてくるため、さまざまな症状が出てきます。更年期障害の症状は、本当に人それぞれです。どのように複雑な症状が出ても、決して特別ではありません。症状が軽い人も、重い人も、原理的には同じです。

まず、このことを理解して頂くだけでも、症状の改善につながります。

更年期障害には、大きく3つの要因があります。からだの要因、心理的要因、環境的要因です。今回の患者さまの場合は、からだの要因から始まり、お子様の行動という環境、そして、そこから自己を責めるという、心理的要因を引き起こされ、複雑な症状が生じるようなりました。

自己を責めることは、うつ病と似た症状を引き出します。不眠、動悸、食欲がない、何もやる気が起きないなどです。抑うつ傾向の方は、ご本が自覚されていなくても、肩こり感、特に首の付け根の緊張があります。

今回の事例でも、患者さまからの訴えはありませんでしたが、確認しますと、やはり肩こり感がありました。このような場合は、更年期障害を改善するツボに鍼をするだけでは、解決しません。


必ず、肩、首の凝り感を取り除く必要があります。これは、自律神経を支配している視床下部のあるところが、脳の中でも比較的首に近いことがあります。首の筋肉の緊張の影響を受けやすいことにあります。

また、首の筋肉の下に脳行く比較的大きな血管があります。筋肉の緊張によりこの欠陥も影響を受け、脳行く血流が減ります。脳が栄養されなくなり、自律神経のコントロールが更に、狂い、さまざまな症状が生じます。

肩、首の凝り感を取り除き、これらの影響をなくすことが、今回の事例では、大切なことが理解できます。手足のツボに鍼を刺しますと、女性ホルモンの分泌や自律神経の働きをと問えることができます。

また、脳へ行く、血液の量を増やしますので、栄養不足に陥っていた脳が、栄養され、脳全体の働きが改善されます。このように両サイドから刺激を与えることで、よりよく、更年期障害が改善されていきます。

天候とからだのバランスは、関係が深いものがあります。からだは、暑い時は緩むことで、汗を出したりして、暑さをしのぎます。寒い時は、緊張して、体温を上げ、寒さに対抗します。

このようにして、からだの働きを一定にしようとしています。この働きも自律神経によるものです。更年期により、自律神経の働きが上手くいかないときは、この天候に対応する働きも上手く動きません。この患者さまのように、寒暖の差により、体調を崩されることはよくあります。

今回のように、きちんとケアすれば問題はありません。更年期障害は、治療により、一気によくなることはりません。必ず、良くなったり、悪くなったりを繰り返します。ただ、悪くなっても、最初ほど悪くなることはりません。

ある程度、幅を持って治っていきます。今回の事例でも、改善されてから、ある程度の期間、様子をみて、終了するかどうかを決めました。



東洋医学からの視点

中医学では、女性の子宮は、からだの縦の大きなツボのラインである、衝脈(しょうみゃく)と任脈(にんみゃく)に支配されているとしています。特に、衝脈は足から顔まで走っています。生理に関しましても、この衝脈と任脈がコントロールしています。

男女を問わず、衝脈と任脈は、下腹部の性器から始まっていますので、女性の場合は、子宮から始まっています。この両方のツボの流れは、「腎」と深いつながりがあります。とくに任脈(にんみゃく)は、「腎」と同じといえるぐらいです。

「腎」には、人が生まれた時に、その父母からもらい受けて生命力(先天の精)が存在するところです。生きる力や、自然治癒力の倉庫ともいえます。

閉経は、衝脈(しょうみゃく)と任脈(にんみゃく)の流れが、悪くなったから起こるとされています。また、加齢とともに「腎」の先天の精が減少し、卵を作れなくなるとされています。更年期障害により、このからだの大きな縦のラインである、衝脈と任脈の働きが悪くなります。

衝脈は足から顔まで走っていますので、その働きが乱れますと、からだ全体がおかしくなります。終点が顔ですので、からだの他へ行くべき、「熱」がそのまま、顔まで一気に走り上がったりします。これが、顔の火照りや顔の汗を引き起こします。この患者さまが、まさしくこのケースでした。

顔だけに「熱」が行きますと、ほかのところは「冷え」を生じます。顔の火照りと手足の冷えがセットになりやすいのは、このせいです。任脈はからだのお腹側の中心線で、頭までつながっています。このツボのラインの働きがおかしくなれば、当然、食欲不振、むかつき、イライラなどが生じます。

「腎」は生命力の根源である「先天の精」を持っています。これは、加齢とともに減少します。この「先天の精」は、脳を養っています。更年期障害で、任脈からの「気(エネルギー)」が、脳にあまり行かなくなり、「腎」からの栄養も減少し、脳の働きが、落ちます。

これにより、無気力感、イライラ、憂鬱感などが生じます。この患者さまの場合は、まず、任脈の働きが乱れ、脳がそれにより栄養されないので、「腎」により多くの栄養を要求しました。

「腎」も最初は、遅れていましたが、だんだんと送れなくなり、脳は栄養不足となりました。何もやる気が起きない、うつに似た症状が遅れて出てきたのは、このようなことによります。

ツボのラインは、「気」の通り道でもあります。この働きが乱れれば、「気」が減少もしますが、「気」通りにくくもなります。あちこちで「気」が詰まった状態を作ります。これが肩こり感、首の詰り、あるいは、腰痛などを生じさせます。ある意味で、生理痛としての肩こりや腰痛と似ています。

今回の事例のように、更年期障害で肩こり感などが強く現れた場合は、それを取り除くことは、「気(エネルギー)」の流れを良くすることになります。「血(栄養源)」は「気」によって運ばれますので、「気」の流れが良くなりますと、栄養源も運ばれます。脳が栄養されるわけです。

この理由から、肩こり感をしっかり取り除きました。これにより、衝脈、任脈の流れが良くなりました。任脈の流れが良くなり、食欲が回復し、食べることにより、栄養が作られます。この栄養を「後天の精」と呼んでいます。

「後天の精」は、「先天の精」の代用ができます。鍼治療は、「気」を補給することや、「気」の流れを良くすることができます。それと、食事からの栄養とが、上手くマッチして、更年期障害の改善ができます。

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