2013年10月13日11:43 AM カテゴリー:
片頭痛,
症例
片頭痛へ鍼灸治療「ストレスに対して抵抗力が出来てきました。」
今回は、子供のころからの片頭痛持ちで、直ぐにお腹の調子が悪くなる30代女性が頭痛と下痢から解放されるまでの例です。
前回の過敏性腸症候群と病気の成り立ちが似かよっています。
一見、異なった病気でも、根底は同じということはよくあります。そこをどう判断するかが、分かれ目になります。
・今までの経過
子供のころから片頭痛がある
休日に頭痛になりやすい
左側の首が痛くなりやすい
首の痛みは運動をすれば楽になる
5,6年前からマッサージによく行くが改善しない
しんどくなると整体に行くというのが習慣化しているが根本的に治っていないので、それを断ち切りたい
子供のころからお腹の調子が悪くなりやすい
からだがだるくなり横になりたいとよく思う
来院当日は朝から頭痛がしているとのことでした。
左肩が上がっている感じで、背骨にも歪みがあり、これが左側の首の痛みの原因のようでした。
市販の頭痛薬を、頭痛が始まる前に飲んでいるも、常にだるさを感じ「今日は特にだるいです。」と伝えられました。
また左側だけでなく、右側にも凝り感が強くありました。
ストレートネックで、首の湾曲があまりありませんでした。
偏頭痛への鍼灸治療と施術後の状態について
・初回の治療
鍼治療が初めてで、若干、緊張気味でした。うつ伏せの状態で、首や肩の左右5か所に、直径0.20ミリ、長さ48ミリの鍼を刺し、また、背骨の歪んでいるところに、直径0.18ミリ、長さ30ミリの鍼を刺し、約20分間そのままでいてもらいました。
その後、すべての鍼を抜き、首に近い背骨の辺りが膨らんでいましたので、そこに鍼を刺し、緊張を取り除きました。
また、残っているコリのあるところに鍼を刺し、慎重に取り除いていきました。
次に、仰向けになってもらい手や足のツボを5か所選択しました。
それらのツボに、直径0.16ミリ、長さ15ミリの鍼と直径0.18ミリ、長さ30ミリの鍼を用いて刺し、「気(エネルギー)」の調整をし、約20分間そのままでいてもらいました。
治療後は頭痛はすっきりと解消していました。
首の痛みやからだのだるさも取れ、いい感じになったようです。
休みの日でないと大阪市の心斎橋まで来るのが難しいので、月2回のペースで通院してもらうことにしました。
・2回目の治療
前回の治療後、頭痛を感じることがなく、今朝、少し、頭痛があったようでした。
肩首の治療は、初回と同じです。
仰向けに寝た状態で、観察しますと、右脚の内側に蜘蛛状血管腫という赤く細かいミミズ腫れのようなものがありました。
お腹の調子が悪いのではと確認しますと、確かにそのようで、梅雨時になるとお腹の具合が悪くなりやすいとのことでした。
全身を調整する鍼治療は、初回の治療に、お腹の調子を改善する鍼を加えました。
使用した鍼は、初回と同じです。
治療後は頭痛は解消していました。
からだ全体が温もり、お腹の痛みや不快感も消えていました。
・3回目の治療
片頭痛を感じることがほとんどなくなり、薬を飲むこともなくなってきたということでした。
治療は2回目と同じです。
治療後は全体的に良い感じのようでした。
・4回目から9回目の治療
暑さや忙しさで、肩凝りやしんどさを感じるが、全体的には良い方向に向かっている感じとのことでした。
薬を飲まずにすんでいるのが、一番うれしい様子でした。治療は2回目と同じです。
治療後は鍼の後はすっきりしており、良い感じで、この状態が長続きするようになってきているのがうれしいとありました。
・10回目の治療
お腹の調子も悪くなることが少なくなり、からだ全体が元気になってきたのを実感している様子でした。
治療は2回目と同じです。
治療後はだんだんと元気になり、ストレスに対しても抵抗力が出たようで、これからも続けていきたいとありました。
現在、月2回のペースで来院されています。
施術者の感想
この患者さまは、休日になると頭が痛くなるという典型的な片頭痛です。ただ、運動や、マッサージで楽になることから、緊張型頭痛もあるようです。
近年、このように、片頭痛と緊張型頭痛を合わせた頭痛の患者さまは、増えてきています。これを「変容型頭痛」、「混合型頭痛」などと呼んでいますが、はっきりとした定義は、今のところありません。
首の痛みなどは首の骨に若干の歪みがあったことによるものと考えられます。
背骨の首に近いところの緊張による盛り上がった感じは、ストレスによるものです。
仕事や緊張感などによりストレスが重なりますと、よく見られる症状で、この緊張感を取り除きますと、不思議と気持ちが楽になります。
今回の症例と前回の過敏性腸症候群の症例は、似ています。
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【過敏性腸症候群】大阪府在住、30代女性、鍼灸治療のケース
この患者さまの訴えは、頭痛を主としていますが、お腹の調子の悪さが子供のころかありました。
前回の患者さまの訴えは、下痢でしたが、ストレスが強くなりますと頭痛を生じていました。
下痢などのお腹の調子の悪さが主となれば、過敏性腸症候群となり、頭痛が主となれば片頭痛となるわけです。
どちらもその根底は同じで、交感神経の過緊張により、脳の働きが乱れたことによります。
今回の患者さまは、単に片頭痛として治療するのではなく、脳の働きを改善する治療も必要だったということになります。
背骨の首近くの筋肉の盛り上がりも、このことを示唆しています。
また、からだがだるくなりやすいのも、お腹の調子の悪さから、自律神経の働きが乱れ、血流が悪くなったからと思われます。
お臍の下あたりに、太陽神経叢という自律神経系の大きな「支店」のようなものがあります。
お腹の調子が悪くなりますと、この太陽神経叢の働きが乱れ、自律神経の働きも乱れるという関係にあるからです。
東洋医学からの視点
この患者さまの主な訴えは頭痛でしたが、根底にある病気は、お腹の調子の悪さでした。
食べたものを消化吸収し、栄養素ができます。これを「後天の本」と呼んでいます。これは「脾」によってなされます。
また、「脾」はこの栄養素をからだの隅々まで送る届ける働きがあります。これを「運化」と呼んでいます。
この患者さまは、この「運化」の働きが落ち、栄養素が脳や筋肉に十分に送り届けられないことにより、頭痛や筋肉痛、からだのだるさなどを引き起こしていました。
2回目の治療の時ふくらはぎの辺りに、蜘蛛状血管腫が出ていました。その場所は「脾」を中心としたツボの流れの上にありました。
「脾」の「運化」の働きが落ち、流れが悪くなり生じたものです。
背骨の首に近い筋肉が盛り上がっているところには、「大椎」というツボがあります。
このツボはからだの陽気(からだを動かすエネルギー)が、集まるところです。仕事をしたり、考えたり、また、運動するときにも使われるのが、陽気です。
この患者さまは、締め切りのきつい仕事をされており、集中して仕事をする時間が長く、「陽気」を多く必要としています。
多くの陽気が一気に大椎というツボの場所に集まり、処理しきれなくなり、滞りふくらみ、筋肉の盛り上がりとなったわけです。
また、もともと「気」の流れが悪いという体質もそれをさらにひどくしていました。
2回目の治療から、「脾」の働きを改善する治療を加えることにより、頭痛だけでなく、からだ全体の調子が良くなっていきました。
この患者さまの主な訴えである片頭痛、お腹の調子の悪さの源流は同じだったわけです。
今回の症例は、一見、複雑に見える症状も、よく観察すると、その根底は同じで、そこに治療の焦点を当てると、すべてが良くなっていくことを、改めて教えてもらった例と言えます。
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実際のお客様の声:【片頭痛】大阪市在住、30代女性、鍼灸治療のケース