大阪市内は雪が降ることは殆どありませんが、それでも冬の寒さは厳しくなってきました。
冬の季節は、古くから東洋医学では腎臓の季節と言われています。これからの季節は、腎臓が最も働く季節だということです。
また腎臓は、東洋医学では生殖をコントロールする臓器だとも言われています。この冬の時期、腎臓がしっかり働くようにすれば、あなたの妊活は成功するかもしれません。
【冬と腎臓】
冬は腎臓が活躍する季節と言いましたが、逆に言うなら、冬は腎臓に非常に負担が掛かる季節です。
冬場は運動量も少なく、血液が巡りにくい上、末梢の血管は寒さで収縮します。また血液が冷えて固まりやすくなりますので、どうしてもむくみが出やすくなります。
そのため、血液を強い力で押し出すため、血圧が上がりやすくなります。強い圧力で、腎臓に血液が流れ込みます。
そのため、血液をろ過する役割の腎臓には、非常に大きな負担が掛かります。
【腎臓と生殖機能】
東洋医学では「腎は生殖を主(つかさど)る」と表現します。
つまり、腎臓は何らかの形で生殖作用と繋がりがあるということです。色々と説はあるのですが、私は血液の循環に注目しています。
生殖において最も大きな作用を及ぼすのは、卵巣や精巣です。女性ホルモンや男性ホルモンを分泌し、精子や卵子を育てる部分ですから、当然といえば当然です。
この精巣と卵巣の血液循環は、少し特殊な走行をしています。精巣と卵巣に血液を送る動脈は普通なのですが、精巣と卵巣に血液を送った帰り道である静脈が特殊なのです。
精巣と卵巣に、新鮮な酸素や栄養、性ホルモンを送った帰り道である静脈が、左側だけ一旦腎臓の静脈を経由して走行するのです。
その時の走行が、直角に曲がって左腎静脈に流れ込むため、血行障害を起こし易い構造になっています。上の図では精巣静脈ですが、卵巣静脈も同様の走行になっています。
こうした構造のせいで、左精巣には血液が逆流しやすく、精索静脈瘤ができやすいと言われています。
精索静脈瘤は、精子の質を悪化させる原因です。精索静脈瘤を改善すると、精子の質や量が改善して男性不妊が解消することも多々あります。
卵巣ではあまり聞きませんが、血流が悪くなりやすいのは、構造的には同じだと思います。血液が逆流すると、流れ込む血液も入りにくいため、栄養障害や酸欠を起こすことで、質の良い精子や卵が作りにくくなるということです。
冬場に腎臓に高い血圧や負荷がかかると、腎静脈の圧力も高まるでしょうから、より精巣や卵巣への血液の逆流が起こりやすくなる可能性があります。
【冬に腎臓の鍼をする理由】
冬は、腎臓にとって過酷な季節です。逆言えば、最も働いてほしい季節でもあります。
腎臓に負担を掛ける血流の問題を、何らかの方法で解決すれば、腎臓の負担は大きく軽減します。
また腎臓の血流がスムーズになることで、卵巣や精巣の血流も改善し、精子や卵の質が良くなるはずです。
腎臓にかかる負荷を軽くするには、次のような方法が考えられます。
・下半身からの血流を戻りやすくする。
・血液を固まりにくい状態にする。
・腎臓のろ過機能を高める。
・過剰に高くなった血圧を調整する。
下半身からの血液が戻りやすくなると、血圧が下がり、静脈の血流が良くなります。
不妊鍼灸をしていると、卵巣機能が低い方は、下半身のむくみや冷えがよく見られます。
下腹部や仙骨部にもむくみや冷えが感じられます。
こうした下半身の冷えやむくみを防ぐには、しっかり足を動かすことが大事です。軽く歩くだけでも、静脈の血流は良くなります。
また、食事で塩分を控えめにすることも大事です。塩分が多くなると、どうしてもむくみが出やすくなります。
血液が固まりにくくするには、常に血液が滞りなく巡っていることが重要です。また高ストレス状態であると、血液が凝固しやすくなりますので、リラックスできる時間を作ることも必要です。
腎機能を上げるには、塩分を控える生活や、定期的な軽い運動が必要となります。過剰な水分やアルコール摂取を控えることも、あなたの腎臓機能を高めることになります。
血圧を調節する仕組みは、次のような式で成り立ちます。
血圧=末梢血管抵抗×血液量
つまり血圧を下げるには、血液量を少なくするか、血管の抵抗を少なくするかしかありません。
血液量を少なくすることは、あまりお勧めできませんので、末梢の血管を弛緩させれば良いのです。
末梢血管は、自律神経の交感神経が働くと収縮します。逆に副交感神経が働ければ、末梢血管は弛緩して血圧が下がります。
副交感神経は、リラックスすれば働きますので、心身ともにリラックスすれば良いわけです。
リラックスということは、先ほどの血液凝固の時にも出てきました。冬という季節の過ごし方は、リラックスするというのが、一つのポイントかもしれません。
冬の間しっかり休息できた人は、春になって草木が伸びるように、しっかりと元気を出すことができます。
冬は、春の準備をする季節でもあるのです。
【冬の妊活鍼灸】
冬は血液循環が悪くなり、血液が凝固しやすくなります。そのため、冬の鍼灸治療は、血液の循環をスムーズにして、心臓への戻りを助ける治療をします。
腰や下腹部、または足のツボを良く使用します。これは、妊活鍼灸の目的ともよく相関します。
冬場は、鍼灸治療で血液循環や血液凝固を改善し、質の良い卵を育て、質の良い内膜を作りましょう。