始めに
新年を迎え早や1ヶ月経ち、立春も過ぎました。
今年も大阪 心斎橋の鍼灸院 天空における昨年の妊活鍼灸の振り返りをしたいと思います。
2021年は、21人の妊活女性が妊娠(胎嚢確認まで)されました。
昨年は、2年近く通院され無事、妊娠されるケースなど、妊活鍼灸で頑張っている女性鍼灸師にとってもうれしい結果になりました。
平均年齢は33.7歳で、当院にて妊活鍼灸を受けられて7.1ヶ月で妊娠までに至っています。
昨年の特徴的なことして、40代で妊娠された方や重篤な基礎疾患がある方なども妊娠に至ったことがあります。
日本生殖医学会によりますと、40代になりますと体外受精を行っても、その成功率が約20%としています。
当院では医学的な検査はできませんので、確たる根拠はありませんが、40代女性や基礎疾患のある女性の妊娠へのお役立てができたのではと考えています。
この考えを裏付けるのものとしまして、海外の研究ですが、以下のようなものがあります。
2002年にドイツと中国の研究チームがアメリカの生殖医療会誌に、以下のような報告を行っています。
体外受精(IVF)を受ける女性160人を、体外受精の際に受精卵を子宮に戻す前後に鍼を実施した群と通常の体外受精を行った群に分けて比較検討しています。
この結果は、鍼を受けたグループの妊娠率は42.5%、通常のグループは26.3%になったそうです。
また、2006年のデンマークでの研究では、肺移植当日に鍼を受けると受けない場合と比較して約1.6倍、妊娠率が上がったとあります。
日本での報告では症例報告になりますが、40代後半での妊娠例や基礎疾患がある場合の妊娠例などが多くあります。
そして、その時に特徴的なことしましては、肩こり・腰痛、頭痛、生理不順・生理痛などのいわゆる不定愁訴が先に改善され、その後、妊娠に至るケースが多いとあります。
当院でも、同じような傾向を示しています。
これは不定愁訴が改善されることにより、女性ホルモンの分泌が安定し、知らず知らずのうちに基礎体温が一定になる、生理周期が安定することにより、2次卵胞の成長が良くなるからではと考えられています。
症例報告
このようなことを踏まえながら、以下の症例を読んで頂き、あなたの妊活への少しでも参考になればうれしいです。
症例1
30代女性
〇
これまでの経過
・2年前から妊活を始めて、タイミング法、人工授精を試したがうまくいかない
・体外受精で2回移植を試すも結果が出ず
・採卵した卵に未成熟が多く、良い卵がとれない
・手足が冷えやすい
〇
鍼灸内容
【初回】
<うつ伏せ>
首、肩、の緊張を取り除き、交感神経の緊張をゆるめるための鍼をしました。
腰回りに鍼をして子宮、卵巣の血流を良くなるようにしました。
長さ30㎜ 太さ0.18mmの使い捨て鍼(首肩)使用
長さ50㎜ 太さ0.2mmの使い捨て鍼(腰回り)使用
<仰向け>
身体の冷えに対するツボ、血流を良くするツボなどに鍼をしました。
長さ30㎜ 太さ0.18mmの使い捨て鍼使用
【2~9回目】
鍼したあと身体が軽くなった。
生理順調に来た。
採卵周期に入り、無事採卵。
卵が4つとれて胚盤胞まで進んだ。
<うつぶせ、仰向け>
初回と同じ
【10~15回目】
移植後、胎嚢・心拍確認できた。
それ以降、空腹時や夜になると胸のむかつきがでてくるようになった。
便秘気味になり、2,3日に1回の頻度になってきた。
<うつぶせ>
刺激を軽くして首肩、背中の張りをほぐすように鍼を打ちました。
長さ15㎜ 太さ0.16mmの使い捨て鍼使用
<仰向け>お腹(子宮)へ血液がしっかり流れるようにするツボ(手足)に鍼とお灸をしました。
胃の周辺の張りがある部分に軽く刺激を与え、胃腸の動きを良くするようにお腹周りに鍼とお灸をしました。
長さ15㎜ 太さ0.16mmの使い捨て鍼使用
鍼灸を受けた後は、しばらくつわりの症状がマシになる、とのことでしたので、定期的に来院して頂くことを勧めました。
症例2
20代女性
主に身体の痛み、筋肉のひきつり(自律神経失調症)を訴えていました。
〇
これまでの経過
・5カ月前と3カ月前に妊娠→流産を経験
・最初の流産後、背中に痛みが出てきて、2回目の流産後に腰痛、胸の周りのズキズキした痛み、ツッパリ感を感じるようになった
・肩甲骨周りの痛みがずっと取れない
・内科、整形外科、神経内科、ペインクリニックを受診するも改善しない
・最終的に精神的なストレスと言われ、抗うつ剤を処方された
・動悸、頭痛なども頻繁に感じるようになった
・まぶたや身体の色んな場所がピクピク痙攣する
〇
鍼灸内容
【初回】
<うつ伏せ>
首、肩、の緊張を取り除き、交感神経の緊張をゆるめるために鍼を刺しました。
腰回りに鍼をして子宮、卵巣の血流を良くするようにしました。
長さ15㎜ 太さ0.16mmの使い捨て鍼使用
<仰向け>
自律神経の乱れを整えるツボに鍼をしました。
長さ15㎜ 太さ0.16mmの使い捨て鍼使用
【2~5回目】
<うつ伏せ>
初回と同じです。
<仰向け>
初回と同じです。
腹にお灸を加えました。
5回目で痛みの度合いが少しずつましになってきたそうです。
【6~9回目】
<うつ伏せ>
初回と同じ
<仰向け>
前回と同じ
痛くなる頻度、筋肉のぴくつきが徐々に減ってきたそうです。
【10~12回目】
<うつ伏せ>
初回と同じです。
<仰向け>
前回と同じです。
痛みは、最初と比べると大分ましになったそうです。
【13~14回目】
13回目で妊娠検査薬陽性となっていたそうです。
14回目で悪阻症状が出てきたとありました。
<うつ伏せ>
刺激を弱めにして首、肩に鍼をしました。
<仰向け>
お腹に酸素、栄養がしっかり行くように手足に鍼をしました。
お腹の血流を良くするために、お腹と足のツボにお灸をしました。
この方は、慢性の痛みや自律神経改善を目的として来院されましたが、鍼灸を受けることにより、これまで上手くいかなかったのに妊娠できたそうです。
症例3
20代女性
〇
これまでの経過
・2020年3月からタイミング法で妊活をしていた
・不正出血が続き、検査をしたら子宮内膜に小さなポリープがいくつか見つかる
・2021年3月にポリープの手術をして2,3カ月妊活をお休み
・7月に結婚式を行う、それまでに妊娠しても構わない
・妊活をはじめて生理周期が1週間、遅れるようになった
・円形脱毛症が高校生からできやすい
・高校生の時、生理が半年来なかったことがある
・冷え症
〇
鍼灸内容
【初回】
<うつ伏せ>
首、肩、の緊張を取り除き、交感神経の緊張をゆるめるために鍼を刺しました。
腰回りに鍼をして子宮、卵巣の血流を良くするようにしました。
長さ30㎜ 太さ0.18mmの使い捨て鍼(首肩)使用
長さ50㎜ 太さ0.2mmの使い捨て鍼(腰回り)使用
<仰向け>
身体を温め、ストレスを和らげるようにツボに鍼をしました。
長さ30㎜ 太さ0.18mmの使い捨て鍼使用
【2回目】
手術後、生理が2カ月以上来ていない、便秘気味、身内の不幸、式の準備が重なってストレス感じるとありました。
<うつ伏せ>
初回と同じ
<仰向け>
血液の流れを良くするために初回にプラスしてお腹、足のツボに鍼を足しました。
【3~5回目】
3カ月ぶりに生理が来た。
体温の平均が35度台から36,5度くらいまで上がった。
挙式後、円形脱毛の部分の髪が生えてきた。
<うつ伏せ>
初回と同じ
<仰向け>
2回目と同じ
【6~8回目】病院でホルモン検査、卵管造影をして異常なしだった。
6回目、8回目でタイミングを取った。
<うつ伏せ>
初回と同じ
<仰向け>
2回目と同じ
タイミング後
<うつ伏せ>
刺激を弱めにして首、肩に鍼をしました。
<仰向け>
お腹に酸素、栄養がしっかり行くように手足に鍼をしました。
お腹の血流を良くする為にお腹と足のツボにお灸をしました。
その後、心拍確認ができたと報告がありました。
少し長くなりましたので、今回をこれで終わります。
次回より、症例報告を続けたいと思います。