自律神経失調症へ鍼灸治療「鍼治療の都度に元気になり、冷え症も感じなくなって、嬉しいです」
「ちょっとしたことで疲れが残り、朝起きるのが辛い、冷え症もひどく、日常生活に支障をきたしているのを何とかしたい」
これは自律神経失調症を鍼灸治療で改善して欲しいと来院された患者さんの言葉です。
自律神経失調症も症状がひどくなりますと、日常生活に支障をきたします。
元気に楽しく日常生活を過ごせるようになりたいと、期待を胸に、初めての鍼灸治療に緊張しながら当院に来院してくださりました。
また、からだの治療と同時に美容鍼灸も希望されていました。
その気持ちに応え、丁寧にカウンセリング・鍼灸治療を行った記録を紹介します。
・今までの経過
もともと疲れやすい
若いときから8時間、10時間寝ても、起きるとしんどく、疲れを感じる
4,5年前更年期に入ってから、より疲れやすくなり、頭痛を感じるようになった
同居している義父に付きまとわれしんどい
日中、30分でもいいから横になりたいと感じる
下半身の冷えがひどい
結婚後、年中、下痢、ひどければ水様性の下痢
スカートはいてスパーに行き、1時間後の下痢になった
年中、お腹が緩い感じ
冬になると霜焼けをする
顔と足が常に浮腫む、疲れるとよりひどくなる
顔のむくみが特にひどく、目が落ち込んでいるように思う
顔の肌の張りもなくなってきた
子どものお弁当を作るのに朝4時起きのことがあり、その時は、前日に頭痛になる
7,8年に前に左の卵巣を摘出した
朝、起きるのがつらい、1回で起きることができない
最近、不安感が強くなった
最近、息苦しくなった、呼吸を意識するようになった
息切れ感もある
4,5年前から生理不順、婦人科で更年期障害と診断された
自律神経失調症への鍼灸治療と施術後の状態について
来院当日の状態は、疲れからか、顔色が良くなく、目もくぼんでいました。声も小さく不安げに話されていました。
婦人科で更年期障害と診断されていますが、お薬は飲んでおられませんでした。
この患者さんの場合は、更年期障害とも、自律神経失調症とも判断できます。
女性の生理をコントロールしているフィートバック機構と、からだの働きコントロールしているフィートバック機構は、近くにありお互いに影響し合うことが分かっているからです。
そのどちらも、ホルモンバランスや神経の働きのバランスの乱れによるものですので、その乱れを改善すると症状はよくなると説明しましたところ、安心された様子でした。
また、若いころからの疲れやすささも、同じ原因であることを説明し、鍼灸治療を続けていくことにより、改善が期待できることも説明し、納得して頂けました。
・初回の治療
肩こり感を訴えれれていませんでしたが、今回のようなケースでは、首の緊張感が状態を悪化させることがよくありますので、肩首へ鍼治療をしました。
これは「頸性神経筋症候群(頸性うつ)」という考えがあり、首の筋肉の緊張により、自律神経の働きが乱れ、うつと同じような症状を引き起こすとされています。
東京脳神経センター理事長・脳神経外科医の松井先生が気づかれ、命名されています。
肩首の筋肉の緊張感の強いところ左右各3か所に、鍼を数ミリ程度刺し、そのまま15分程度、おいておきました。
使用した鍼は、直径0.18ミリ、長さ30ミリです。
その後、すべての鍼を抜き、第七頸椎の下にある、大椎というツボのあたりの筋肉が緊張し、盛り上がっていましたので、その緊張感を取り除く鍼をしました。
次に仰向けの状態で、自律神経の乱れを改善できるツボ、呼吸の働きを助ける呼吸筋の緊張を取り除くツボ、脳血流の改善を期待できるツボを選択し、鍼を刺しました。
鍼を刺したツボはすべてで10か所になります。
使用した鍼は、直径0.16ミリ、長さ15ミリです。
この時に、同時に美容鍼灸も実施しました。
自律神経を調整するツボを選択する際に、それだけでなく同時に、顔の血流や、肌のくすみを改善できるツボを選択してあります。
顔には、フェイスラインを中心にたるみや張りを改善できるツボを選び、9か所に鍼を刺しました。
使用した鍼は、直径0.16ミリ、長さ15ミリです。
治療後は、からだの緊張感が取れ、ポカポカと温かみを感じておられました。
顔の表情も変化し、一緒に来られていたお友達が、あまりの顔の変化に驚いておられました。
・
2回目の鍼治療
鍼治療の後、寝込むことがなくなったと喜んでおられました。
お腹の緩さを感じなくなり、普通に食事ができるとありました。
治療は前回と同じで、美容鍼も同時に行いました。
治療後は、全身が軽くなったとありました。
また、顔が小さくなっていると喜んでおられました。
次回まで、約3週間空くので、不安があるとのことでしたので、呼吸の働きを助ける呼吸筋にシールのついた長さ0.6ミリのごく小さい鍼を貼りました。
この鍼は、からだに入っていくことはありませんし、ほとんど何も感じない程度の刺激ですが、意外に効果があります。
・
3,4回目の治療
毎回の治療ごとに体調の良化を実感でき、息を気にすることがなくなったとありました。
頭痛が起きることがなく過ごせるのが、ありがたいとのことでした。
この冬は、霜焼けがなく、冷えを感じなくなったとありました。
鍼治療は、初回と同じで、美容鍼も同時に行っています。
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5回目の治療
花粉症の季節になり、花粉症が生じ、疲れやすさが戻ってきたとありました。
寝ると翌日は楽なのでありがたいとのことでした。
また、顔や足のむくみもないとありました。
ただ、子どもお弁当作りなどがあるので、6時間睡眠で元気になりたいが、現況は8時間寝ないといけないので、早く寝るようにしている。
23時に就寝し、5時に起きて、元気に過ごせるのが希望とありました。
鍼治療で使用したツボや、鍼は同じですが、肩首の治療の際に、最初より少し深く刺しました。
また、外部環境に強くなリ、花粉症にも効果のあるツボを加え、そのツボが有効に動くように、刺激を与えました。
美容鍼灸も同時に行っています。
鍼治療後は、花粉症の症状は消え、顔色もよくなっていました。
・
6回目~9回目の鍼治療
患者さんのお母様が脳梗塞で入院され、ほぼ毎日、病院に行くという事態が起き、ストレスにより状態が悪化されていました。
鍼治療を始めてから、下痢をすることがなかったが、今回の件で、スカートをはくと下痢をしやすくなった。
下痢と便秘を繰り返すようになった。
睡眠時間を確保できず、疲れやすい。横になるとすぐに寝てしまい、ソファで寝込むことが多い。
鍼治療は、ほぼ同じですが、肩甲骨の内側の筋肉の緊張が著しかったので、その緊張を取り除く、鍼を加えました。
また、精神的ストレスにより、気持ちが滅入っておられましたので、気持ちが安定する鍼治療も加えました。
同時に花粉症対策も行っています。
ツボには、一つのツボで、複数の作用を持っているツボが多くあります。
今回のように、症状が増えても、あまり鍼を刺すツボを増やすことなく、治療を行っています。
美容鍼灸も同時に実施しています。
鍼治療後は、不安感も解消され、元気を取りも出しておられました。
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10回目~13回目の鍼治療
鍼治療の回数を重ねるごとに、精神的ストレスに対応できるようになってこられ、疲労感がなくなり、体重も増え、やりたいことができるようになってきたとありました。
顔の表情も明るくなり、お友達に「最近、元気で、若くなり、綺麗になったね」と言われるようになったとありました。
からだの冷え感もなくなり、夜、薄着で過ごしても、寒くなく、下痢や便秘もしなくなったとのことでした。
鍼治療は、前回と同じです。
美容鍼も、同時に行っています。
治療後は、より、元気になり、やる気が出てきたとありました。
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14回目~17回目の鍼治療
忙しい日が続くと、頭痛や疲れやすが出るものの、すぐに回復をし、全体的には、元気になり、睡眠時間が少なくなっても、大丈夫とありました。
お腹の症状は、ほぼなくなり、冷えもなく、頻尿も改善したとありました。
元気で、毎日が過ごせるようになったのが、何よりもうれしいとありました。
また、顔のむくみ、くすみなども改善され、見違えるようになったと、お友達に言われるのが、楽しいともありました。
鍼治療は、前回と同じです。
美容鍼灸も同時に実施しています。
治療後は、すっきり感とからだのぬくもり、充実感があるとのことでした。
ほぼ、日常生活に問題が無くなりましたので、今回で、一旦、終了としました。
・施術者の感想
今回の患者さまは、若いときから疲れやすさがあり、冷え症もありました。
ベースに血流が悪いという、自律神経の乱れがあったようです。
自律神経のうち交感神経は、血管を取りまとっていますので、交感神経の興奮が続きますと、血管を締め付け、血流が悪くなることがあります。
お話をお伺いしていますと、非常に他人に気を使われ、また、自分よりも家族や友人を大切にするという感じでした。
常日頃、気を使うという行為が、知らず知らずのうちに、ストレスとなり、交感神経の過緊張を引き起こし、今回のような状態になったようです。
また、更年期障害もあり、それが、更に自律神経の働きを乱し、症状の悪化を引き起こしたようです。
内臓の働きは、自律神経により調整されています。
例えば、怖い目にあいますと、交感神経が興奮し、心拍数が上がり、血圧も上がります。
その後、落ち着いてきますと、副交感神経が活発になり、心拍数を下げ、血圧を安定させるというように働いています。
この自律神経の上のようなフィートバック機構は、「脳の視床下部―下垂体―副腎」という系によって成り立っています。
女性の生理周期にも同じようなフィートバック機構があり、それは、「脳の視床下部―下垂体―卵巣」という系によって活動しています。
このように、自律神経系と生理周期などをコントロールする系は、ほぼ同じルートをたどります。
以前は、お互いに干渉することはないとされていましたが、近年の研究で、相互に干渉することが分かってきています。
すなわち、女性の場合は、自律神経の乱れが生理不順、生理痛を引き起こし、逆に、生理不順が自律神経の乱れを引き起こすことがあるわけです。
月経前症候群や更年期障害において、抑うつ症気味なる、イライラしやすいなどは、このことによります。
今回の患者さまも、更年期に入ってから症状の悪化が見られ、不安感が強くなったのは、もともとの自律神経の乱れに、更年期の症状が加わり、双方が干渉しあって生じたと考えられます。
このような場合に、更年期だけ、自律神経だけに焦点を当て、治療を進めても、芳しい結果がでないことがよくあります。
複雑な症状を引き起こす基礎となっているものを見極め、それになにが付随しているかを考える必要があります。
今回の例でも、疲れやすさ、冷え、下痢、頭痛、むくみ、息切れなど症状が複雑になっています。
しかし、おおもとは、交感神経の過緊張による血流の悪化といえます。
交感神経の興奮を抑制し、血流を改善すれば、徐々に全ての症状が消えていくようになります。
血流の改善が、脳および子宮でなされることにより、自律神経系や更年期障害による興奮を是正することができます。
鍼灸治療もそこにフォーカスしておこなっていきました。
このように、複雑な症状も、それを紐解いていけば、一つの成り立ちに行きつきます。
そして、その状態を改善していけば、患者さまにあまり負担をかけることなく、治していくことができます。
・東洋医学からの視点
古代医学において、人は3つの要素から生命を維持しているとあります。
その3つの要素とは。
1.もって生まれた生命力(先天の本)
2.飲食による栄養(後天の本)
3.呼吸によるガス交換(宗気)
今回の患者さまは、若いころ疲れやすく、冷え、下痢気味でした。
これは、2番目の飲食による栄養が上手く働いていなかったといえます。
古代医学(中医学)において、口から摂取された飲食物は、胃で簡単に消化された後、脾臓が清濁を分け、栄養素としての精気を肺に運び、そこから全身に送られるとしています。
現代学的には、上の考えは少しおかしいですが、長くなりますのでそこは触れません。
そして、この脾(脾臓)の働きが悪くなりますと、消化器系ですので、当然、下痢や便秘を引き起こします。
また、精気という栄養素、すなわち血液を栄養のあるものにする物質が少なくなりますので、血液により全身を温めることができず、冷え症となります。
この脾には、栄養素を全身に運び、老廃物を回収する(運化)という働きがあります。
脾の働きが悪化しますと、老廃物の回収が遅れ、むくみをつくりだします。
更には、脾の働きが弱くなりますと、疲れやすく、すぐに横になりたがると古代の医学書には記載されています。
このように今回の患者さまは、脾の働きの悪化がベースにあったようです。
脾の働きの悪化により、飲食物の精気が肺に送り込まれなくなりますと、肺の働きも悪くなり、息切れや呼吸の障害を感じるようになります。
更年期障害は、古代医学では、肝臓(肝)と腎臓(腎)の働きの衰えとしています。
このうち肝は、血液循環と関係が深く、肝の働きの悪化は、脾に対して良質な血液をつくるように要求し、脾に負担がかかります。
腎は、先天の本と結びつきが深く、この蔵の衰えは、肝と同じようなこと脾に要求し、負担をかけます。
更年期障害になり、症状の悪化が見られたのは、このような理由によると、古代医学(中医学)では、考えることができます。
今回の鍼灸治療におきましても、この脾の働きを改善することを、第一に考えおこないました。
脾の働きが改善され、摂取した飲食物から栄養素を十分に引き出し、それを全身に送り込めるようになることが大切です。
それにより、各臓器がそれぞれに十分に働き、症状が改善されます。
現代医学的、古代医学的(中医学)、どちらもで考えても、複雑な症状を一つの成り立ちから紐解けますと、治療は進めやすく、症状の改善にもつながります。
このように、複雑な症状を一元化し、治療方針を立て、鍼灸治療を進めていくことを、大阪、心斎橋の鍼灸院 天空は、最も大切にしています。