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あなたの子宮は快適でしょうか?【慢性子宮内膜炎の鍼灸治療】

2018年1月27日3:01 PM カテゴリー:不妊症

 

先日も少し触れましたが、これからは新たな不妊鍼灸の可能性を考えていくために、あまり不妊鍼灸では語られない話題についてお話したいと思います。

最近、不妊治療の分野では、着床障害の原因となる慢性子宮内膜炎というものが話題になることがあります。慢性子宮内膜炎は、一種の感染症のことです。通常、子宮内膜の周辺は、乳酸菌の一種が住み着くことで、雑菌が住みにくい環境になっています。

この環境が乱れ、雑菌が繁殖することで免疫系が過剰に反応してしまい、雑菌以外のものにまで攻撃を仕掛けるようになれば、受精卵にも影響が及びます。

こうした慢性子宮内膜炎を改善するために、鍼灸治療を役立てようというわけです。

 

【慢性子宮内膜炎とは】

 

子宮内膜には、常在菌として乳酸菌の一種が住み着いています。この乳酸菌は、女性ホルモンの影響で、グリコーゲンから作られたブドウ糖をエサにして繁殖しています。

乳酸菌は、代謝産物として乳酸を生成するため、乳酸菌が繁殖すると、その周囲は酸性度が上がります。これは大腸内で起こる現象と同じです。

大腸では、この乳酸をエネルギーにして大腸が蠕動運動を起こし、排便に利用しています。また大腸に乳酸菌が多い人は、小腸での免疫作用が適切に行われることが知られています。子宮の場合には、この乳酸菌が出す乳酸により、子宮内が酸性になることで、雑菌の繁殖を防いでいます。

何らかの原因で女性ホルモンの分泌に乱れが出ると、乳酸菌のエサであるブドウ糖が作られない為、乳酸菌の生育に支障が出てしまいます。
子宮は膣を通じて外界と通じており、肛門とも近いことから糞便中の雑菌の侵入もしやすい場所です。

乳酸菌が減り、酸性度が弱まった子宮内では、雑菌が繁殖しやすくなります。雑菌が繁殖すれば、子宮内で免疫を担っているリンパ球の働きが強まります。

雑菌が繁殖しやすい環境となった子宮内膜で、雑菌に対して攻撃を仕掛けるため、慢性的に子宮内膜で炎症を持つようになったものが、慢性子宮内膜炎です。

 

【慢性子宮内膜炎の西洋医学的治療】

 

慢性子宮内膜炎は、雑菌の繁殖による炎症であるため、菌を殺す薬剤である抗生物質が使用されます。

抗生剤は、相手を選んで殺している訳ではありませんので、体内に住む常在菌、全てに対して影響を与えます。

例えば、腸内細菌や、元々は子宮を守る存在である、乳酸菌も殺してしまいます。胚移植前や、ごく短期間に使用するのであれば効果的ですが、子宮内の環境が改善しなければ、炎症と抗生剤の投与を繰り返すことになるでしょう。

また繰り返し抗生剤を使用すると、耐性菌や薬自体の副作用の問題もありますので、漫然と抗生剤を使用することには注意が必要です。

少しでも早く完治するために、乳酸菌を補うことも一つの方法です。乳酸菌は個人により少しずつ種類が違うとされているので、その人に合った乳酸菌を探すことができるかどうかは、ある意味運次第です。

 

【慢性子宮内膜炎を根治させるには】

 

西洋医学では、とりあえず繁殖した雑菌を抗生剤で殺すことを選択しました。鍼灸治療では、少し違うアプローチで根治を目指して施術をします。

元々は、女性ホルモンの分泌が減ったせいで、グリコーゲンからブドウ糖への変換が上手くいかなくなり、乳酸菌のエサが無くなったことが、乳酸菌減少の原因でした。

では、女性ホルモンの分泌が正常に戻れば、グリコーゲンからブドウ糖への変換も上手くいくようになり、乳酸菌には十分なエサが行き届くのではないでしょうか?

また乳酸菌を増やすために、乳酸菌を摂るという方法も勧められていますが、この乳酸菌はどこから子宮に移行するのでしょうか?

私が想像するに、消化管を通って、肛門から膣に伝わるしかルートが無さそうなのですが、これは効率の良いやり方だとは思えません。

私は以前、栄養療法を専門的に使っていた時、腸内細菌のバランスを取るためにオリゴ糖の摂取をお勧めしていました。

これはオリゴ糖を腸内に入れることで、オリゴ糖をエサにする菌を増やすためです。その菌も、大腸に住む乳酸菌でした。

オリゴ糖を飲むことで乳酸菌が増え、乳酸菌が増えることで、乳酸をエネルギーにして大腸が活発に蠕動運動を行い、便秘が解消します。

さらに小腸での腸管免疫が活発になり、アレルギーなどの疾患が軽減するという考え方からでした。

乳酸菌を増やす試みとして、乳酸菌飲料を摂るというものがありましたが、効果はあまり良くありませんでした。その原因は、乳酸菌の種類が、その人により違ったからです。

固有種である乳酸菌を増やすには、その人のからだに住んでいるものを増やした方が効率が良いということです。そのため結果的には、オリゴ糖を入れ方が効果的に乳酸菌を増やすことができました。

同じ考え方をすると、子宮内の乳酸菌を増やすには、別の乳酸菌を足すよりも、子宮内の乳酸菌が育ちやすい環境にした方が良いということです。

 

【鍼灸治療の応用】

 

慢性子宮内膜炎を完治させるためには、幾つかの方法があります。

・子宮内の乳酸菌を増やす。
・子宮内の過剰な免疫活動を抑える。
・ホルモンバランスを整え、グリコーゲンからブドウ糖が作られるようにする。

この3つの中で、一番下を解決するのが、最も根治と言える方法ではないかと思います。鍼灸治療では、この3つ目の部分にフォーカスして施術を行います。

ホルモンバランスで問題になるのは、下垂体前葉から分泌して卵巣に働く、LH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞ホルモン)という二つのホルモンのバランスです。

この二つのホルモンのバランスが崩れると、結果的に女性ホルモンであるエストロゲンが十分に作られません。エストロゲンの不足が、人によっては排卵障害にも繋がりますので、排卵障害がある方などは、潜在的には慢性子宮内膜炎になりやすいのかもしれません。

LHとFSHのバランスが崩れ、エストロゲンが適量作られないと、子宮内でグリコーゲンからブドウ糖を作る働きが阻害されますので、乳酸菌が育ちにくくなります。

鍼灸治療には、このLHとFSHのバランスを整える作用があります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21816787
(多嚢胞性卵巣症候群の女性に対する鍼灸治療はLH/FSHバランスを改善する)

鍼灸治療でLHとFSHのバランスが取れれば、自然にエストロゲンの分泌もスムーズになり、良い卵も排卵できるようになります。

エストロゲンが適量分泌されれば、子宮内でグリコーゲンをブドウ糖に変換する働きも活発になり、乳酸菌にも十分な栄養が与えられるようになります。

乳酸菌が多くなれば、乳酸による酸性化で、雑菌が繁殖しにくい環境ができます。雑菌が繁殖しなければ、過剰な免疫活動も最近による炎症も起こりませんので、慢性子宮内膜炎を防ぐことができます。

 

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