ネットや口コミでは見たことがあっても、実際に不妊鍼灸がどういうものか、知らない人がほとんどです。私自身も、全ての不妊鍼灸の鍼灸陰を知っているわけではありません。
専門家である、私が知らないのですから、今から通おうと思っている方や、不妊鍼灸に通っているけれど、転院しようか悩んでいる方が、知らなくても当然です。
そこで私が知る限りの、不妊鍼灸の世界をご紹介します。
1.鍼灸で使用する鍼について
鍼灸で使用される鍼(針)は、大体の鍼灸院で使い捨てが使用されます。使い捨てでない場合には、滅菌する機械が設置されいる必要があります。
当院の場合には、安全性や衛生面を考えて、シャーレという鍼を置く金属製の皿以外は、全て使い捨てです。しかも日本メーカーの国産のものを使用しています。コストは掛かりますが、患者様の安心のためだと思っています。
シャーレは金属製ですので、毎回使用後は、水洗いしてから専用の滅菌器で滅菌しています。
鍼は安い中国製のものもありますが、以前、安心して使用できない出来事があったため、この国内メーカーのもので良かったと思います。
鍼の太さや長さは、治療所や患者さまの状態によりますが、0.16~0.24mmの太さで15~60mmの長さを使い分けて使用します。私がよく使用するのは、太さ0.18mm長さ15mmと太さ0.18mm長さ30mmの2種類です。
中国鍼で使用する鍼は、もう少し太い傾向があり、流派によっては刺さない鍼や木槌で叩くような鍼も使用します。
鍼灸の鍼は初めての方が見ると、本当に細くて髪の毛程度に感じるはずです。注射針や縫い針とは全く違う太さです。
2.鍼を刺す部位について
鍼を刺す部位は、かなり鍼灸師の個性(考え)に左右されます。手足の肘やひざから下しか刺さない鍼灸師もいますし、からだには全く刺さずに、触れるだけの鍼灸師もいます。
幾つかのグループに分けてご紹介します。
1.手足の数か所のみ刺す流派
この流派は脈を重視する傾向があります。そのため非常に繊細な治療をしますが、治療技術の差が大きく出ます。
2.手足やお腹、背中に刺さない鍼をする流派
この治療をする流派も幾つかに分かれますが、やはり技術の差が大きく出ます。よくお話をしてコミュニケーションをお取り下さい。
3.全身に少数だけ刺す流派
局所にも鍼を施すため、比較的効果は出やすいと思いますが、技術の差は当然あります。
4.全身に数多く刺す流派
これは流派というよりも、気が付くと刺してしまっている場合と、適切な治療部位が絞り切れない場合が多いようです。
お勧めはどれかと言われれば、当たり外れがないのは3番です。1と2は当たり外れが大きくなります。こだわりが強い鍼灸師がされる施術ですので、良い鍼灸師に当たれば、素晴らしい効果があります。
3は当たり外れもなく、比較的鍼灸の効果が出やすいやり方です。そのため、どこの鍼灸陰を選べば良いか分からない場合には、この施術法を取る所を選ぶべきです。
数の多い少ないは難しいところですが、少数と言われるのは1~3本程度、4~10本程度なら比較的少ないと言えます。それ以上で15本程度なら、全身治療としては普通です。
不妊鍼灸としては、それ以上の数であれば多い部類に入ると思います。
3.施術方針の立て方
方針の立て方は大きく2種類です。一つは西洋医学的な、解剖学や生理学に基づいている治療方針の立て方。もう一つは、それ以外の2つです。
どちらが良いとは言いかねますが、できるだけ西洋医学的な理解はされている鍼灸師の方が良いと思います。
鍼灸師が西洋医学的な理解をされていると、病院での不妊治療で医師に聞けなかったお話や、不妊治療の相談がしやすいからです。
全てを東洋医学でお話しされても、あなたの頭はますます混乱することでしょう。
4.鍼灸治療は痛いのでしょうか?
鍼灸治療は思ったほど痛くないはずです。全く痛くないとは言えません。これは流派にもよって変わります。
刺さない流派なら痛みはないでしょうが、先ほどお話した、少数刺す流派なら、全く痛みがないとは言えません。
ただ、多くの方が、我慢できる程度の刺激です。献血や予防接種などをイメージしている方は、その数分の一から、数十分の一程度だと思って下さい。
もし痛かったら、その場で鍼灸師に「痛いです!」と仰って下さい。患者が痛みを訴えているのに、そのまま痛い治療をする鍼灸師はいないはずです。
5.鍼灸を受けるときの格好は?
鍼灸治療は、殆どの場合素肌に治療を施します。そのため治療する部分は肌を出す必要があります。
先ほどご説明した手足のツボだけを使うなら、肘から先とひざから下の肌が露出できれば、パンツでもスカートでも良いことになります。
ただ全身に治療を加える場合には、衣服をめくって治療を受けるか、衣服を脱いで治療を受ける必要があります。
そこで当院では、治療着を御用意させて頂いています。治療前にあらかじめ治療着に着替えて頂いておけば、背中やお腹が楽に露出できるようになっています。
これで、治療に来られる日の衣服を、いちいち考える必要がありません。