鍼灸治療では、主に仰向けとうつ伏せで受ける治療があります。
どの体勢で施術を行うのかは、使うツボによって変わります。うつ伏せで施術する場合は、背部兪穴と呼ばれるツボを使い、仰向けの場合には、手足の要穴や腹部募穴と呼ばれるツボを使います。
それぞれのツボの選択には理由があり、鍼灸師はそれを適宜選択して使っています。
【うつ伏せで施術する意味は】
うつ伏せで施術する場合、背部兪穴を刺激して、詰まりや鬱滞、熱を取り去る施術が多く行われます。
内臓の機能が低下すると、その周囲の皮膚に炎症や血行不良が出たり、筋肉の凝りとして表現される場合があります。
妊活鍼灸の場合には、腰から仙骨(骨盤)に皮膚の変化が見られます。こうした部分に、皮膚の黒ずみやむくみが現れます。
逆に鍼灸治療が効果を表し、子宮や卵巣で血行不良が改善されると、皮膚の黒ずみが無くなり、むくみの無い綺麗な肌になります。
これが、詰まりや鬱滞を取り去る施術になります。
ストレス過剰でイライラしている方の場合には、背中や首の周りが荒れて、皮膚炎や毛嚢炎になる方が多く見られます。
ストレスも妊活には悪影響を及ぼしますので、こうした背中や首の肌荒れも、ストレスに対応するツボで同時に施術します。
これが、熱を取る治療になります。
どちらも施術が効果を表すと、妊娠する力が挙がり、見た目も綺麗な状態になります。
【仰向けで行う施術 腹部募穴】
腹部の募穴と呼ばれるツボは、内臓器の状態を改善するために使用するツボです。
妊活鍼灸の場合には、主に下腹部の施術を中心に行います。これは子宮や卵巣がへそより下にあるためです。
子宮や卵巣の状態が悪くなると、下腹部の皮膚や筋肉にも異常が見られます。
活動低下が見られる場合には、下腹部がぺっこりと凹んだ状態になり、皮膚の表面が冷たくなります。
或いは、へそを中心として、お腹全体が固く張った太鼓のような状態になります。
こうした張りや凹み、冷えを取り除くと、子宮や卵巣の働きは回復します。良い卵を育て、着床しやすい状態になるのです。
弱りや冷えを改善する施術は、熱や詰まりを取る施術に比べると時間がかかります。
そのため、冷えや弱りがある方の場合には、仰向けでの施術に時間をかけて行うことになります。
あお向けて受ける施術は、15~20分間寝ていることもあるため、そのまま眠ってしまう方も多くいらっしゃいます。
わずか15分程度にも関わらず、深い眠りの為、数時間眠ったような状態になります。
【仰向けで行う施術 要穴】
要穴と呼ばれるツボは、手足の肘や膝から下にあります。
要穴は、東洋医学で本治法という、根本治療に利用されるツボのことです。
要穴には、からだ全体のバランスを取ったり、脳に働きかけて、内分泌や自律神経を調整する働きがあります。
<三陰交:子宮の血流増加>
要穴に加えた鍼灸刺激は、末梢の感覚神経から脊髄を通り、脳の視床という部分へ伝わります。
視床から入った刺激は、そこから脳の様々な部位へ働きかけます。
自律神経や内分泌の中枢である視床下部も、刺激が伝わる部位の一つです。視床下部に鍼灸刺激が伝わると、自律神経や内分泌腺を調整する作用があります。
・生理周期を整える。
・女性ホルモンの分泌を促す。
・子宮や卵巣の血流増加。
・子宮筋の活動性増加。
・頸管粘液の増加
・ストレスによる脳機能低下の改善。
・投薬による副作用の軽減
要穴に対する鍼灸治療により、自律神経が支配する内臓筋の活動性増加や、血流の増加が見られます。
また西洋医学や漢方薬を受けている方では、投薬による副作用の軽減を行うこともできます。
高プロラクチン血症の治療薬であるテルロンやカバサールでは、高確率で吐き気や頭痛などが見られます。
また黄体期に使用するルトラールやデュファストンでも、吐き気やイライラなどが見られます。
こうした投薬による副作用も、鍼灸で軽減することが可能です。
要穴に加える施術も、その方の状態により刺激量を変えています。長時間必要な場合には、15分~20分寝て頂きます。
要穴の施術は、脳に働き掛けるため、睡眠がより深くなる傾向があります。
【目的により使い分けます】
こうした施術をあなたの体調に合わせて使い分けます。
熱症状が強ければ、うつ伏せの時間を長くとったり、冷えや弱りが強ければ仰向けの時間を長めに取ったりして調整します。
体外受精や胚移植当日に行う施術では、全体のバランスを取る施術よりも、子宮の活動性を高めて着床をしやすくする施術を主体にするため、手足よりも腹部や腰の施術が多くなります。
時間をかけて、体質改善や卵の質を改善する場合には、手足の要穴を使用する場合が多くなるため、仰向けの時間が長くなります。
天空の鍼灸治療は、治療目的を明確にすることで、治療効果が高まりやすいようにしています。
また日々臨床と改良の積み重ねをするため、治療法も変化をさせています。