今回は、男性の血流についてのお話です。
女性だけではなく、男性においても血液循環は重要な問題です。精索静脈瘤は、男性の精子の質を落とし、男性不妊の原因にもなります。
手術療法もありますが、この精索静脈瘤には鍼灸治療が非常によく効きます。
【精索静脈瘤とは】
精巣には、精巣動脈という動脈から新鮮な血液が送られています。精巣の中に栄養や酸素を届けた後、精巣静脈で血液を心臓の方に送り届けます。
このとき精索という筒の中を通ります。何らかの原因で精巣静脈の血液循環が悪化し、静脈が逆流すると精索静脈瘤になります。
上の図を見て頂くと、右の精巣から出ている静脈は、下大静脈という太い血管に直接繋がっていますが、左の精巣静脈は左腎静脈を経由して下大静脈に繋がっていることが分かります。
このときほぼ直角に曲がりながら腎静脈に繋がるため、血流が流れ込み難いとされています。
更に左腎静脈は、上から腹大動脈の枝分かれした血管に押さえ付けられるため、より血行障害が起こりやすいとされています。
そのため精索静脈瘤は左側に多く発生します。
精索静脈瘤がある男性は、血液の逆流が生じるため、血液がうっ滞しやすいため、熱の発散がしにくくなり、精巣温度の上昇と共に精子の劣化が起こるようです。
【精索静脈瘤と精子】
精索静脈瘤を持っている方の中でも、精子の質に悪影響が出る方は、比較的重症の方だとされています。
ふくらはぎに出る静脈瘤を見たことがある方は、想像が付くと思いますが、精索静脈瘤も血管のコブが外見上認められます。
精子形成に異常が認められるのは、かなり高度な精索静脈瘤を持つ場合だとされていますで、最近は手術療法を積極的に行わない泌尿科医や男性不妊専門医もいらっしゃいます。
日帰り手術でもできるとはいえ、あまり積極的に受けたいものではありませんよね?
【精索静脈瘤と鍼灸治療】
手術療法を受けなくても、精索静脈瘤による精子の改善ができると言えば、鍼灸を受けて見たくなりませんか?
しかも鍼灸治療の効果は、精索静脈瘤による精子の劣化のみならず、全ての体調改善に繋がるのですから。
ここで、精索静脈瘤の手術療法と鍼灸治療の効果を比べた論文をご紹介します。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26791438
精索静脈瘤患者の精子パラメーターに対する鍼治療と静脈瘤切除術の効果を比較するランダム化臨床試験
この研究の目的は、初回不妊症患者の精子パラメータおよび妊娠率に及ぼす鍼治療の影響を評価することであった。 2008年1月から2010年5月までに、原発不妊(保護されていない性交、健康的な妻の1年)および正常なホルモンレベルおよび異常な精液分析を伴う精索静脈瘤を有する30人の男性を無作為に2群に分けた。第1群は精細な微細静脈瘤切除術を施行し、第2群は2ヵ月間、1週間に2回の鍼治療を受けた。両群は、治療後6ヶ月で精液分析で評価した。両群の患者は、妊娠に関して電話とEメールで評価した。患者の平均年齢は27.2歳であり、群は年齢に関して同等であった(P = 0.542)。治療前の精子の濃度、運動性および形態学的特徴は、両方の群で同様であった。精子の濃度および運動性は、処置後の両方の群において有意に改善した。精液濃度の増加は、静脈瘤切除群と比較して鍼治療群で高かった(P = 0.039)。平均追跡期間は42か月であり、妊娠率は両群で33%強調された。精液異常を呈した原発性不妊性精索静脈瘤患者の鍼治療は効果的であると思われ、静脈瘤切除術の治療と同等の結果を示す。
如何でしょうか?同等程度の成果とありますが、論文の中では、鍼灸治療の方が優れている点もありました。
今回ご紹介した精索静脈瘤は、精巣から下大静脈に戻る血流が悪くなることで起こる、精巣温度の上昇が原因で起こる男性不妊でした。
鍼灸治療は、自律神経をコントロールして血流を改善する効果が高いため、手術療法と違い、根本的な原因を改善できたのだと思います。
その結果が、一部とはいえ、手術療法以上の臨床効果を出すことに、成功したのだと予想されます。
私は、鍼灸のことを、東洋医学的理解だけではなく、西洋医学的、生理学的にも理解することで、妊活にもっと幅広く活用できると信じています。
鍼灸治療は、男性不妊にも高い臨床効果がありますので、是非ご夫婦で妊活にご参加下さい。