一口に不妊鍼灸と言っても、流派や鍼灸師の考え方によって、色々な方法があります。それぞれ不妊治療や鍼灸に対する認識が違い、これが同じ「鍼灸」という治療法なのか、というくらい幅があります。
私たちのような専門家からすれば、どれも理論としては言いたいことは分かるのですが、一般の方からすれば困惑するだろうと思います。
そこで鍼灸の方法と、その理論的な背景を、できるだけ分かりやすくご紹介します。ここでは治療法の良し悪しは判断しませんが、あなたが望むような不妊鍼灸を受ける手助けになれば幸いです。
治療法と流派の違い
1.刺さない鍼
2.中医学的鍼灸
3.現代医学的鍼灸
4.特殊な流派
1.刺さない鍼
鍼を刺さない流派は幾つかあります。自己流を含めれば、その数はかなり多いと思います。
こうした鍼灸の特徴は、「痛くない」ということです。物理的な刺激量としては、最も弱い部類だと思います。
鍼が皮膚の中に入りませんので、痛みを感じることはありません。鍼灸師の手の暖かさを感じるか、皮膚表面でチクチクと刺激を感じる程度のはずです。
焼き針という熱した金属棒を使う流派では、熱した鍼で皮膚を刺激するため、チクチクするかもしれません。敏感な方や、少しからだの弱りが強い方では、独特な響きを感じる方もいるでしょう。
こうした刺さない針は、脳を介してからだに指令を送るため、上手にやれば効果が挙がることもあります。ただ上手にやらなければ、全く効果が出ない可能性が高い治療法です。
いわゆる「気」を動かして治療を行うため、非常に東洋医学っぽいのですが、その実態を理解できる人間がごく少数で、イメージの中だけで気の操作を行おうとするため、鍼灸師も患者も何となく治療が始まって、何となく終わることもあります。
鍼灸の学生時代に、多くの学生がこの流派を志し、志半ばで挫折するのはそのためです。
この流派は基本的に東洋医学的な考えで治療を行うため、病院での不妊治療に対する専門的な相談はできないことが多いと思います。
2.中医学的鍼灸
中医学も幾つかのグループに分かれます。現代中医学と言うグループは、初心者鍼灸師にも分かりやすいため、多くの鍼灸学生や初学者に支持されます。
また治療効果も分かりやすく出るため、最も効果を得やすい流派の一つです。
ただ治療法や刺激法により、かなりの痛みや響きを伴います。比較的、太い鍼や長い鍼を使用して、ツボの響きを重視するため、人によっては痛いと感じる人もいるはずです。
実際に、近所の中国人鍼灸師の治療に耐え切れずに、遠くからわざわざ当院へ転院された患者さんもいました。
古典的な中医学鍼灸は、ごく少数の鍼で行う流派と、平均的な10~15本程度の鍼数で行う流派があります。少数の鍼しか使わない流派は、鍼灸師の実力差が大きく現れるため、効果を挙げることが難しいため、鍼灸師の腕が問われます。
気、血、津液の全てを治療の対象にしています。そのため、腕のいい鍼灸師に当たると、非常に高い治療効果を挙げます。
少数鍼の流派では、治療に対するこだわりが強く、患者側の意見は全く聞いてもらえない可能性もあり、病院の相談などはしにくいかもしれません。
平均的な鍼数の流派では、中医学と西洋医学の両方を学んでいることも多いため、病院の相談や投薬の相談もしやすいと思います。
初めて鍼灸を受ける方なら、こうした流派の鍼灸師を選ぶと、当たり外れがないということです。
3.現代医学的鍼灸
現代医学的な鍼灸のグループは、統計やデータ、解剖学的に明確な理論をベースに治療をします。誰が来ても、同じような方法で治療するため、鍼灸師の腕や経験による差が出にくい方法です。
代表的なものに、陰部神経刺鍼があります。尾骨辺りから、仙骨に沿って、平行に長い鍼を入れていく方法で、かなりの響きがあると予想されます。
この流派では、妊娠率などが、かなり明確に公表されています。ある意味では、最も信用がおける流派の一つだと思います。
病院の相談も西洋医学的意識が高いため、比較的相談もしやすいと思います。
4.その他
鍼灸にはかなり特殊な流派も存在します。中には宗教に近いものや、実際に宗教団体が主催するものもあります。
治療効果は謎ですが、個人的にはあまりお勧めしません。
できるだけ常識的な理論で、共感できる治療方針を持つ治療所か、病院での不妊治療の相談がしやすいところにしましょう。
【まとめ】
妊活は、多くの誤った情報が溢れています。それを一般の方が判断することは難しく、貴重な時間の浪費にも繋がります。
東洋医学的な概念だけでなく、できれば病院での治療なども相談できる治療所を選ぶ方が、ストレスなく妊活を続けられます。
またそういった治療所の方が、妊活を早く終えることができます。1日も早く妊娠するためには、自分の労力を少なくして、楽に妊活を行うことが大事です。
【鍼灸院 天空の不妊鍼灸とは】
当院では、中医学を基本にして、刺さない鍼やしっかり響かせる鍼、西洋医学的な鍼灸治療まで、時と場合、そして治療を受けて頂く方の状態によって変えています。
では順に、当院での初回の内容をご紹介します。
1.カウンセリング表の記入
予診票は2種類ご用意しています。1つは、一般的な住所や氏名などを記入するもの。もう1種類は、妊活専用の予診票です。今までに受けた治療の内容や、あなたのからだについてのお話を伺います。
2.カウンセリング
当院では専用のカウンセリング室(個室)で行います。
カウンセリングでは、記入して頂いた妊活のお話を伺ったり、お持ちいただいた基礎体温表や血液検査を見させて頂きます。
血液検査はホルモン検査だけではなく、健康診断などの一般検査も分析することで、
・現在の健康状態
・内蔵機能
・免疫機能
・栄養状態
・投薬の影響
・総合的な妊娠をする力
を分析します。
カウンセリングは、基本的に西洋医学的な方法で行い、できるだけ的確にご自身の状態を認識して頂きます。自分の状態をよく理解すれば、これからどういった妊活をするべきかが、見えてくるからです。
また、今後の妊活に対するご希望をお伺いし、それに適した生活指導や、妊活の指導をさせて頂きます。
3.検査
鍼灸室に移り、治療着に着替えて頂いてから、実際にからだを触って検査をします。東洋医学では、これを「切診」といいます。
「脈診や腹診、背侯診、経絡診」などを行います。この時に、舌の状態も観察します。
そして、施術方針を決定して鍼灸を開始します。
4.施術
鍼灸は、からだの状態により変わりますが、うつ伏せと仰向けの2つの臥位ですることが殆どです。
場合によっては、横向きで施術を行うこともあります。
施術時間は約1時間です。刺激量を抑える必要がある場合には、30分程度のこともあります。
5.評価と今後の説明
病院の不妊治療との併用をするかどうか、投薬を続けるかどうか、鍼灸の頻度などを決めていきます。通常は、週1回程度の治療頻度になります。
こうした天空での初回は、1時間30分~2時間かけてじっくり行います。初回の際にじっくりお話を伺うことで、施術方針を明確に設定することができます。
また中・長期的な評価としては、血液検査の内容が変化していることを3か月程度で確認して頂きます。
鍼灸によりからだが変化して、妊娠に近付いていることを実感して頂くためです。
施術の結果、妊娠された場合には、妊娠7~8週目(心拍確認)までは通院して頂きます。
妊娠後、安産を目的に通院される方は、月に1回程度の通院をして頂きます。