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脳に染み付く痛みとは?鍼灸による効果について

2019年1月3日5:24 PM カテゴリー:難治疼痛

脳に染み付く痛みのメカニズム

 

痛みは、刺激として脳に伝えられます。その刺激を脳が痛みと認識して、初めて痛みを感じます。痛みの刺激が脳に伝わっても、「痛み」と認識ないと、「痛い!」とは、感じません。この辺りが痛みを難しくしています。

普通は、この痛みの刺激は、脳と脊髄の間でやり取りされています。

痛みの形
 

何らかの形で、脳に痛みの刺激が、次々と、無秩序に送られてきますと、脳は、これを鮮明に「記憶」として焼き付けます。
例えば、足首を捻挫して、痛みを我慢しながら歩き続けるなどです。

 

捻挫の痛みは、脳に送る危険信号のようなものです。この捻挫のような痛みを感じることは、からだにとって大切なことです。痛みを感じることにより、捻挫を気づかせるという役目があるからです。

 

このような痛みを、「急性痛」と呼びます。この急性の痛みに関しまして、どのような作用で、どう感じるかなどは、比較的、よく分かってきています。

 

急性の痛みに気付いたにもかかわらず、何もせず、我慢していますと、脳がその痛みを記憶します。この記憶は、痛みの遺伝子として、形あるものとして残されるとされています。痛みが脳に染み付いた状態です。

 

線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群、慢性広範囲性疼痛症候群、神経因性疼痛など、なかなか治らない、痛みの激しいものが、これに当たるとされています。

 

これらの慢性の痛みの多くは、捻挫などの部位の障害が続いているときには、起きません。その障害が治ると、なぜか、出てきます。
最初の痛みが改善されても、脳に痛みが染み付いているからです。

 

この染み付いた痛みは、正常な神経や細胞に、影響を及ぼすそうです。痛みや疲労感などのからだの症状が、広範囲に及び、苦痛を感じることになります。

 

逆に考えますと、これらのなかなか治らない慢性の痛みも、最初の段階で、痛みを丁寧に取り除き、「痛くない」状態を早く作ってあげると、起こらないともいえます。痛みは我慢せず、早く、取り除くことが、慢性の痛みにならない、秘訣といえます。

なぜ、痛みが脳に染み付くのか?

痛みを感じる系は、危険から回避する信号ですので、原始的で、あまり進化が進んでいません。
また、脳には、外力が加わり変化した後、その外力が無くなっても、元に戻りにくい性質があります。これを可塑性(かそせい)と呼んでいます。

痛みの可塑性
脳の発達段階に神経系は、環境に応じて最適の処理システムを作り上げる必要があります。そこで、よく使われる神経の回路の処理効率を高め、使われない回路の効率を下げていきます。

 

すなわち、ある一定の刺激が連続して来たり、強烈な刺激を受けた場合に、神経の可塑性が起こります。痛みを感じる刺激が、脳に伝わり続けますと、脳にある、「痛みを抑制する細胞」が減少することも分かってきています。

 

脳の可塑性とこの細胞の減少により、脳が「不具合」を起こし、慢性の痛みになるのではと、考えられています。慢性の痛みとは、脳の「異常興奮」ともいえます。

痛みが更なる痛みを引き起こす

からだのどこかで刺激を感じますと、この刺激は、神経を通して、脊髄から脳へと伝わります。そして、これを痛みと感じた脳は、今度は、脊髄を通して、この刺激を抑制したり、場合によっては促進したりします。

 

現在、これらの活動を繰り返すことにより、脊髄において分子レベルで、変化が起こることが知られています。これは、通常は無害な刺激や、細胞を傷つける、「ある刺激」に対して、反応を過敏にしたり、延長したりします。これを、「ワインド・アップ現象」と呼んでいます。

ワインド・アップ現象
脊髄の中の細胞に、痛みを調整する物質が異常に多く作られ、脳へと伝達され、「痛い!」と感じることが分かってきています。痛みにより、別の痛みを感じさせる物質が作られるというわけです。

 

ただ、この過程がどうのように変化していくかに関しましては、現在のところ分かっていません。このように、脳や脊髄で変化が起き、慢性の痛みが生じた状態を、「中枢性感作」と呼んでいます。

痛みの原因は「脳」にある?

現在、慢性の痛みが生じた、中枢性感作は、症状が、広い範囲に広がり、持続していく現象をも含むとしています。そして、このことが生じる引き金は、からだの内部(脳)にある可能性が考えられています。

 

膝や腰の痛みの刺激によるものではなく、脳や脊髄などの中枢の神経系で起こっている現象ということです。あくまで、理論上ですが、線維筋痛症や過敏性腸症候群などは、感情的な出来事や、うつ病、不安症からくるからだの症状の後遺症から、痛みが激しくなる可能性があるとされています。

 

他には、癖を持つ患者さまの場合は、脳のドーパミンという快楽中枢の作用により、慢性の痛みが生じる可能性があるとされています。また、ストレスによって、脳の不安症に関する経路や、感情の中枢などが、興奮し、不安症、感情の障害が促進されます。

 

このことは、ストレスが減少した後でも、「脳の可塑性」により続き、慢性の痛みを引き起こす可能性があるとされています。痛みを感じると、楽しいこと、ストレスのどちらからの刺激によっても、慢性の痛みになる可能性があるということです。

 

慢性の痛みが、治り難い原因は、ここにあります。どちらか一方だけと分かっていますと、治療法も考えやすいです。しかし、両方となりますと、どちらかをまず、認識する必要があります。

 

これを区別することが、意外に難しいのです。また、この両者が複雑に絡み合い、ある時はストレスで、ある時は楽しみからということがあります。

 

これが、更に、慢性の痛みの治療を難しくしている、原因でもあります。痛みが慢性化しますと、なかなか治らず、場合によっては、痛みがひどくなったりします。時には、線維筋痛症や複合性局所疼痛症候群、神経因性疼痛などの難病へと移行するのは、これらのことによります。

「脳に染み付く痛み」どうすれば治るか?

脳は、痛みの経験によって、学習します。また、痛みを維持するだけでなく、永久にその症状を促進させたりします。この痛みを消すには、脳や脊髄における細胞分子の変化を起こさないことと、変化した細胞を改善することです。

 

また、ストレスだけでなく、癖による快楽などの根底にある細胞分子の変化を修正することです。これらのことにより、さまざまな慢性の痛みや線維筋痛症や複合性局所疼痛などの治療につながるのではと想定されています。

 

大切なことは、慢性の痛みに対し、早期の治療を心がけ、脳において痛みの可塑性が生じないようにすることです。

 

鍼灸は、このことを可能にする力を持っています。ストレス、快楽のどちらも、痛みを激しくする可能性があるとは、交感神経、副交感神経のどちらもが、痛みに関係しているといえます。

 

鍼灸は、その施術法により、どちらの神経にもアプローチすることができます。そして、両者が複雑に絡み合っている場合は、それぞれにアプローチすることもできます。

 

そして、両者が複雑に絡み合っている場合は、それぞれにアプローチすることもできます。これを、鍼灸の「2面性」と呼んでいます。一方を活発にしたり、別の方を抑制したり、同時にできます。

 

ここに、鍼灸の「切れ」があります。線維筋痛症や複合性局所疼痛、神経因性疼痛などは、まず、少しでも痛みや苦しみを改善することが大切になります。

 

そして、「少しの痛みの改善」に、患者さまご自身がフォーカスしていくことも、脳の可塑性を解消する助けになります。その時、その時に応じた治療法を選択し、「痛みを楽」にすることを繰り返し、繰り返すことが、これらの病気を治すポイントになります。

 

これは、鍼灸だけでなく、お薬での治療でも、同じことです。そして、痛みが生じたら、我慢せずに、早く、痛みを消す、これが、慢性の痛みを生じさせない、最良の治療法です。

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