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「鍼灸の知識を深めるために」2013年度、鍼灸学会にて その1

2013年6月28日6:40 PM カテゴリー:学会・勉強会

6月7日(金)~9日(日)まで、3日間に渡り、福岡県の博多にて、鍼灸の学会がありました。

3日間、私が参加した学会が、どのような感じなのか、雰囲気でも味わってもらえればと思います。6月7日、14:00~17:00まで、「基礎と臨床の交流」として、頭痛の話がありました。まず、3人の演者から講演がありました。

1.熊本市民病院 診療部長 橋本 洋一先生(日本頭痛学会 理事)


橋本先生からは、頭痛全般の話がありました。

近年、頭痛の診断はかなり変わってきているようです。危なくない頭痛は、俗に、「頭痛3兄弟」と呼ばれています。その中でも、多い、緊張型頭痛と片頭痛の区別をしっかりとつける必要がない傾向にあるようです。

また、従来では、肩こりのない頭痛は片頭痛とされていましたが、今では、関係がないようです。肩こりは、緊張型頭痛であれ、片頭痛であれ、人により、あったり、なかったりするというのが、今の解釈です。

片頭痛は女性に多い傾向にあります。片頭痛になる、エピソード的な話を紹介してもらいました。子供の時に、車酔いをしやすく女子が、初潮をきっかけに、片頭痛になるというパーターンです。

最近、頭痛が問題になるのは、市販の痛み止めを飲み過ぎて、悪化させている方が多いことです。これには、神経内科が、正しく頭痛の診断をできていず、片頭痛なのに、肩こりがあるから緊張型頭痛と安易に診断し、適切な治療をしてこなかったということもあるそうです。

危険な頭痛は、統計的には、20%程度といわれていますが、実際は、数%のようです。その見分け方の基本は、当院のサイトでもお知らせしたいますように、「いつもと違う頭痛」です。

くも膜下出血による、頭痛はよく、「ハンマーで、殴られたような痛み」と説明されますが、いつも、そうとは限りません。これを先生は、「教科書を書いた人も、説明している人も、誰もハンマーで頭を殴られた人はいないので、正しい表現かどうかは分からない。」と話されていました。

先生からは、「とにかく、いつも違う頭痛と感じたら、救急車を呼んでも、直ぐに、脳外科へ行くべき。今の救急隊は、そのことについてよく知っているので、意識がはっきりしていても、いつも違う頭痛と聞くとしっかりと手続きしてくれる。」とありました。


2.慶應義塾大学医学部 神経内科 鳥海 春樹先生

鳥海先生は、鍼灸院を開業しながら、慶応大学の医学部の非常勤講師をされています。先生に与えられた課題は、頭痛に対する鍼治療の基礎研究をレビューすることです。

頭痛自体がなぜなるのかが、よく分かっていないので、基礎研究は世界中でも、2件ほどしか見当たらずレビューには至らなかったようです。原因が分からないので、片頭痛モデルの動物が作れないということです。そして、動物は、「頭が痛い」とは言ってくれませんのでよけいです。

そこで、先生は、自分の臨床研究の結果を発表されました。片頭痛は、前兆物質が発生し、その後、片頭痛となり、首肩の凝りも伴うというのが定説です。

しかし、逆ではないか考え、首肩の凝りを先に取り除けば、前兆物質はでないのでは、と実験されました。

もっとも、担当教授にそのことを提案したときは、「お前は英語が読めないのか?ここに前兆物質が先に発生し、片頭痛になると書いてあるだろうと。」といわれたそうですが、めげずに実験したそうです。その結果は、凝りを先に取り除くことで、前兆物質の発生量が減少し、片頭痛にならない人が多かったそうです。

肩こりからくる頭痛は、緊張型頭痛だけでなく、片頭痛もそうではないかという結論でした。まだ、一つの研究論文だけですので、結論付けはできませんが、面白い内容でした。

3.埼玉医科大学 東洋医学センター   菊池 友和先生

菊池先生には、世界における臨床からの頭痛に対する鍼治療の論文をレビューする課題を与えられていました。それによりますと、鍼治療は、片頭痛や、緊張型頭痛に、一定の効果が認められ、患者さまがその治療を望むなら、勧めてよいというレベルにあるそうです。

これは、世界的なエビデンス(科学的根拠)になります。その中でも、前兆のない片頭痛には、首肩などに鍼治療をすることは、薬を飲むより効果的であることも、複数の論文を再調査した結果、分かってきたようです。

講演を聞いて-院長としてのまとめ-

片頭痛時には、首の上の方、頭の付け根に近いところに緊張がよく出るので、そこに鍼を刺すと効果的とありました。これらのことは、片頭痛の原因とされる三叉神経を刺激するのではなく、その周りの筋肉を緩めることにより、三叉神経の興奮が抑えられのではということです。

片頭痛時にマッサージをすると悪化することはよくあります。そこから、鍼も首や肩に刺さないほうが良いとされていました、今回の発表でそうでもないことが分かりました。マッサージだと悪化し、鍼だと改善するのは、三叉神経の周りの筋肉をどう緩めるかにあるようです。

マッサージのように広い範囲を緩めると、血流が良くなり、片頭痛は悪化します。お風呂に入ると悪化するのも、このせいです。今回の発表のように、ピンポイントで鍼を刺し、筋肉だけを緩め、血流はあまり増えないようにすると、三叉神経の興奮だけが抑えられ、頭痛が改善します。

次の睡眠の話でも会ったことですが、やはり、このような学会に出て、新しいことを聴くことは大切です。片頭痛の鍼治療で、教科書的に首、肩に鍼を刺すと悪化すると思い避けていましたが、片頭痛のケースによっては、効果があることを知り、良かったです。

これで、また、片頭痛治療に対するアプローチの仕方が増えました。

続いて、「ストレスや睡眠とからだとこころの疲労」を題目に久留米大学の医学部長 内村直尚教授が行った講演に関する情報についても書き綴ります。
「鍼灸の知識を深めるために」2013年度、鍼灸学会にて その2

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