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2014年度、鍼灸学会(愛媛県松山市)にて -尿の病気に対する鍼灸治療-

2014年7月4日3:30 PM カテゴリー:学会・勉強会

5月16日(金)から18日(日)まで、愛媛県の松山市で鍼灸学会がありました。

例年は6月の第2週なのですが、今年は会場の関係で、5月になったようです。しかも、GW開けでしたので、当院の患者さまにご迷惑をおかけするような形になりました。

学会を通して学びえたことを、少しでも多く患者さまに還元できるようにしていきます。

この4月から、新卒の女性鍼灸師が勤務しており、彼女も学会に参加し、その内容の濃さに驚いていたようです。

学会の様子を紹介していきます。

学会初日の様子・講演内容

5月16日(金)「基礎と臨床の交流」として泌尿器科における鍼灸治療の効果と現状について講演がありました。

泌尿器の病気に関する鍼治療の有効性に関しましては、明治国際医療大学教授の北小路先生が、先駆者です。

北小路先生は、私が、明治の鍼灸専門学校に入学したときに、教員見習いとして勤務されていました。

また、授業の進め方の勉強として、授業を見学されており、ある意味一緒に授業を受けていました。

そのようにご縁のある先生がコーディネーターをされていましたので、興味深く、講演を聞きました。

1.明治国際医療大学教授邵仁哲先生

邵先生から医師の立場から鍼灸師が知っておくべき泌尿器の領域に関する知識についてお話がありました。

泌尿器とは、「尿を分泌する器官」ということですが、それぞれの文字に意味があります。

「泌」は腎臓・副腎やホルモンを、「尿」は尿管を、「器」は尿の入れ物・膀胱となっています。

鍼灸師が、尿のトラブルに関し治療をするにあたり、下部尿路症状といわれる尿を貯める作用や、排出に関する知識が必要とありました。

その中でも、「蓄尿症状」、「排尿症状」、「排尿後症状」が重要とのことでした。それぞれを簡単にまとめておきます。

〇蓄尿症状
膀胱に尿を貯めているときにみられる症状のことです。主に3つあります。

昼間頻尿→日中の排尿の回数が多くなること
夜間頻尿→夜寝ているときに1回以上、トイレに行く状態
尿意切迫感→急におっしこに行きたくなり、我慢することが難しい状態

〇排尿症状
おっしこをするときにみられる症状のことです。主に

尿勢低下→おっしこの勢いが弱いこと
尿線分割・錯乱→排尿中におっしこが二つに分かれたり、飛び散ったりする状態
尿線途絶→排尿中におっしこが1回以上途切れる状態
排尿遅延→排尿の準備ができてから、実際に出るまでに時間がかかる状態
腹圧排尿→おっしこをするのに、力まないとできない状態
週末滴下→なかなか終わらずに、おっしこの勢いが低下する状態

これらの症状は、男性の前立腺肥大に多いようです。

〇排尿後症状
おっしこが終わったら直後にみられる症状のことです。

残尿感→おっしこをしても、尿が残っている感じがする状態
排尿後尿滴下→おっしこが終わったのに、不意に尿が出てくる状態
(男性では便器から離れた後、情勢では立ち上がった後)

尿のトラブルには、このようにさまざまなものがあります。

また、男性は、膀胱→尿道→前立腺となっていますが、女性には前立腺がありません。

そのため、「男性は尿が出にくくなることが多く、女性は洩れやすくなる」という傾向にあります。

他の症状以上に、男性と女性と分けて考えていく必要があるそうです。

大まかには、男性は尿道炎になりやすく、女性は膀胱炎になりやすいという傾向があるようです。

おっしこを溜める、出すのは、それぞれ支配している神経が異なります。

交感神経である下腹神経に働きにより、膀胱が緩み、尿を溜めることができます。

排尿する際には、2つの神経がかかわっています。

一つは副交感神経である骨盤神経で、膀胱を収縮させ、尿を絞り出します。

もう一つは、体性神経である陰部神経の働きです。この神経は筋肉に働きかける神経です。

外尿道括約筋と骨盤底筋に働きかけ、尿を排出させます。

尿を溜める際に漏れてはいけないので、緊張やストレスに対応する、交感神経の支配を受けているそうです。

尿のトラブルによるさまざまな症状は、上の3つの神経の働き乱れによるものといえます。

自律神経の支配を受けていますので、ストレスにより、尿のトラブルが生じてくる可能性があります。

これらの尿のトラブルの原因には主に以下のようなものがあります。

1.前立腺肥大症・前立腺がん
前立腺が大きくなることにより、尿道を圧迫して、尿が出にくくなったりします。

2.過活動膀胱
尿を溜めるときに、膀胱が勝手に収縮することにより、尿意切迫感・頻尿などが生じます。

3.神経因性膀胱
尿の働きをつかさどる神経の働きが乱れ、さまざまな症状が生じます。

4.尿失禁
膀胱括約筋、骨盤底筋など尿を出すことに関係している筋肉の働きが悪くなり生じます。

尿の障害は、それ自体が、主な症状となることは少ない傾向にあるそうです。ただ、ある病気で来院された場合に、数多い訴えのうちの一つになることはよくあるそうです。

そのなかでも、近年、よく話題になるメタボリック、生活習慣病との関係が深いとありました。

たとえば、肥満になると夜間の排尿回数が多くなる、高血圧は夜間の排尿回数を多くするリスクを生じさせるなどです。

糖尿病と尿のトラブルとの相関も高いとされています。

その中でも、邵先生は尿のトラブルが、メタボリックシンドロームを引き起こす引き金になるのではないかと指摘されています。

中高年以降の尿のトラブルは、意外に、大きな問題を含んでいる印象を受けました。

2.明治東洋医学院専任教員本城久司先生

本城先生は、北小路先生の一番弟子にあたる先生です。先生からは、尿のトラブルに関する鍼灸治療の効果について、お話がありました。

前立腺の肥大や、骨盤の問題による尿のトラブルに関しまして、国際的なエビデンスが確立されているようです。

鍼治療は、下部尿路障害に関し、有効であるとされています。

また、国際的には泌尿器科の医師のほうが、鍼灸師より、下部尿路障害に関する鍼治療に興味を持っているともありました。

尿のトラブルに関してエビデンスを確立しやすいのは、問診票が調っている点があるようです。

1回の尿の量を測定したり、夜間の排尿回数を数えたりすることで、尿のトラブルがある程度、分かる点にあるようです。

この点は、痛みと異なります。

痛みは患者さんの訴えが中心となりますので、測定し数字化することが難しいからです。

鍼治療は、排尿障害に効果的とありました。

特に、尿意切迫感、過膀胱活動に行こうとありました。

鍼治療により、尿失禁の回数減少、排尿回数の減少などが期待できるようです。

これは、鍼治療により、膀胱の蓄尿作用が強くなり、尿を多く溜めることができるようになるからだそうです。

脚のツボに鍼をし、電気を流しますと、交感神経の働きが活発になり、蓄尿期が長くな利、排尿改善につながるともありました。

3.筑波技術大学准教授大沢秀雄先生

大沢先生から、基礎実験からの報告がありました。

麻酔をしたラットの実験では、鍼刺激により、尿管の運動が活発になったそうです。

また、この時に、末梢の神経を切断しても、効果は変化がなく、内臓の神経を切断すると効果が出なくなったとありました。

このことは鍼刺激による、尿管活動への効果は、より中枢に近いところで起こっていることを示唆しています。

膀胱運動に関する実験では、膀胱に尿がいっぱいある状態では、鍼刺激により、膀胱は周期的に排尿しようと活動したそうです。

逆に尿が少ない状態では、尿を溜める働きが活発になったそうです。

この際に、脊髄を切断しますと、鍼刺激が有効な場所が会陰部だけとなったことから、脊髄の反射によるものと推定されていました。

尿のトラブルは、自律神経の働きが乱れによることから、鍼刺激による「体性―自律神経反射」により改善が期待できそうです。

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