2018年11月22日5:07 PM カテゴリー:
線維筋痛症,
難治疼痛
増えている難治性の慢性疼痛
なかなか治らない痛みを訴える方が、近年、増えてきています。
医学的には、3ヶ月以上、痛みが続きますと、「慢性疼痛」と判断されます。
日本医科大学の岡 寛先生が調査された結果によりますと、10ポイント中5ポイント以上の痛みが、3ヶ月以上続く慢性の痛みを感じている方は、22.5%だったそうです。
約4人に1人の割合で、慢性の痛みを感じる方がいる計算になります。相当の数の方が、慢性の痛みで苦しんでいることが読み取れます。
そのうちの約7割の方が、現代医学、漢方、鍼灸、その他民間療法を受けても現状に不満足だったようです。
これは、ある意味で問題のある数字といえます。
確かに、大阪・心斎橋の鍼灸院 天空にも、慢性の痛みを訴える方が多く来られています。
そのうちの7割近くは、病院で診断がつかず、どうしてよいか分からず、整形外科、心療内科、整骨院、あるいは、民間療法の整体などを経て、最後の手段として、鍼灸治療にかけるという感じで来院されています。
長引く痛みの代表的な病気、線維筋痛症
難治性疼痛の代表的な疾患に、線維筋痛症があります。
この病気は、まだあまり知られていません。2007年に女子アナウンサーが線維筋痛症を苦にして自殺したことがニュースになり、そこから少し理解されるようになってきました。
2011年から2012年に保険診療で標準薬としてリリカが認められ、ガイドラインも出来上がり、認知度が上がってきています。
厚生労働省の線維筋痛症研究班や民間製薬会社の調査から、日本に約200万人の線維筋痛症の患者さんがいることが確実と推定されています。
これらの調査から特徴的なことが見つかっています。
1.15歳以下の患者さんが5%を占めている
子供の繊維筋痛症を若年性線維筋痛症と呼んでいます。
線維筋痛症の痛みが原因で、かなりの数で不登校が起こっていると考えられます。
お子さまの場合はより病気の理解が進んでいませんので、精神論的に判断され、苦しんでいるお子さまが多いとされています。
2.30代から50代の女性に多い
線維筋痛症友の会から出版されている「線維筋痛症白書」によりますと患者さんのうち、92%の方が、働くことができない、あるいは勤務に支障をきたしているとあります。
30代か50代といいますと、社会人として働き盛りといえます。その年代に病気で働くことができないのは、さまざまな問題を生みます。
線維筋痛症の診断基準
線維筋痛症には、診断基準があり、1990年にアメリカリウマチ学会が制定しました。
この基準には3つの要点があります。
1.からだの広範囲の痛み
単に右半身、上半身などが痛いというのではなく、頸椎、胸椎、腰椎という体の軸になる骨を含めた広範囲に痛みがある
高齢者の方の場合は、骨粗鬆症と判断されがちな痛みです。
また、非特異的慢性腰痛症と診断され、異常はないからと湿布だけ出されることもよくあります。
変形性頸椎症、仙腸関節炎、椎間関節症と診断され、治療を受けても、痛みが変わらず、主治医や周囲の理解がなく、苦しんでいる場合があります。
2.からだの広範囲の痛みが3ヶ月以上続く
3.腱付着部の左右9対の18か所のうち、11か所以上に触ると激痛を感じる圧痛点がある
からだは筋肉が関節とつながり、筋肉が関節に作用することで、動くことができます。
筋肉は関節・骨に近づくほど細くなり、腱になっていき、関節とつながります。
その部分を腱付着部と呼んでいます。
この腱付着部は、解剖学的に神経や血管が非常に細かく密になっていますので、痛みを感じやすい場所といえます。
逆に痛みを感じやすくなりますと、腱付着部が圧痛点という触れるだけで痛いという表現をします。
肩甲骨の内側、後頭下部、坐骨神経点、大転子の少し下、膝の内側など9か所にそのようなポイントがあります。
右と左にありますので、からだ全体で18か所の圧痛点がつくられます。
このうち、11か所以上に圧痛点があれば、線維筋痛症と判断されます。
アメリカの診断基準ではありますが、日本人の9割以上は当てはまるようですので、問題なく使用されています。
診断基準の盲点
重症の線維筋痛症患者さんの場合は、からだ中のあちこちが痛く、耐えられない場合があります。
この場合は、圧痛点はなくなってしまいます。
圧痛点とは、ある意味、相対的なものだからです。
痛いところ、痛くないところがあるので、その区別から、ある場所が特に痛いと感じるわけです。
すべたが痛くなりますと、比較することができず、特に痛い場所がなく、圧痛点は消えてなくなるわけです。
これに対して、2010年に予備基準が提案され、からだのイラストに痛む場所の丸を付けていくことが付け加えられました。
痛みは様々な症状を引き起こす
線維筋痛症の患者さんのうち約9割は、疲労感、朝の起床時の不快感を訴えられているようです。
他には、ドライアイ、ドライマウス、痒み、頻尿などのさまざまな症状がからだの痛みが続くことで、生じてくることが分かっています。
また、意外と知られていないとされているのが認知症状の併発です。
記憶力の低下、特に数字、友人の電話番号などを忘れてしまうなどの認知症状が出てくるようです。
これらのことは、診断基準には、現在のところ予備を含め、入っていませんが、将来的には、考えていく必要があるのではされています。
慢性の痛みは、原因がよく分かっていないことが多く、また、痛みは主観的ですので、なかなか客観的に見ることができません。
これらのことにより医療機関でも正しく診断されず、満足な治療を受けることができない方が多くいるのが現状といえます。