2018年10月31日4:58 PM カテゴリー:
線維筋痛症,
難治疼痛
意外に厄介なからだのコリ
理解されない長引く痛みで代表的な病気と言えば、線維筋痛症や慢性広範囲疼痛症候群などです。
これらの病気に特徴的なことがあります。
約半数以上の患者さんが、筋肉の極端なコリを訴えるという疫学調査があります。
実際、大阪 心斎橋の鍼灸院 天空にも、多くの慢性広範囲疼痛症候群や線維筋痛症の患者さんが来られていますが、そのほとんどが、しつこいコリ感を訴えられています。
単なる肩凝りのコリというよりも、触れると筋肉が硬くなっているのがはっきりと分かります。このようなコリを硬結と呼んでいます。
その固まりを押すと、その部分だけでなく、他のところに痛みが生じたりします。
例えば、首のコリを押すと、肩から腕、指先に痛みが起きたり、しびれたりします。
このようなガチガチとなっている硬結をそのままにしておきますと、筋肉の緊張が広がり、痛みが全身へと拡大していきます。
痛みだけでなく、下痢・便秘を繰り返す、不眠や抑うつ症状などの自律神経症状も引き起こします。
これは、痛み=炎症で、炎症を引き起こしている物質が、神経をたどり脳へと伝達され、自律神経を支配している場所を興奮させるからです。
このような硬結に対して効果のある薬物は現在のところありませんので、西洋医学的には、厄介な病気となります。」
鍼灸治療は、この硬結を解きほぐすのは得意にしています。
この硬結を取り除くことにより、痛みが減少し、自然治癒力が上がり、線維筋痛症や慢性広範囲疼痛症候群を自分で治す力が増えます。
コリと痛みの関係
肩凝りなどの筋肉のコリ感は、一見、痛みと関係ないようですが、そうではありません。
筋肉のコリは、その場所の血流の悪化により生じます。
例えば、長時間パソコン作業をみてみましょう。
パソコン作業中は、モニター画面を見続けるので、首を少し前かがみした状態が続きます。
キーボードを打ちこんでいますので、肘が曲がり、肩が少し外へ向いています。
首、肩、肘などが曲がった状態といえます。
血管は筋肉の中を走行しています。
首、肩、肘などが曲がれば、血管も曲がります。
血管が曲がったままの状態が続けば、血管の中を流れている血液は、当然、流れにくくなります。
これが血流の悪化となります。
血流が悪くなりますと、ガス交換や老廃物を取り込むことが十分にできなくなります。
そこで、活性酸素ができたり、老廃物が残ります。
また、活性酸素や老廃物が残ったままの筋肉は、変性を起こし徐々に硬くなっていきます。
この状態が「コリ」です。
そのままにしておきますと、ますます固くなり「硬結」と呼ばれる状態になり、痛みを引き起こします。
痛みを引き起こすのは、老廃物が化学変化を起こし、痛み物質をつくるからです。
この痛み物質が神経を刺激し、脊髄から脳に伝わり、脳は痛みを感じます。
肩凝りがひどくなれば、首の痛みや頭痛が起こるのはこのせいです。
このように痛みとコリの間には深い関係があることが、最近の研究で分かってきています。
からだのコリが痛みを長引かせる
血流の悪化がコリを作り、痛みを引き起こします。
このコリを取り除かずに、そのままにしていますと、痛み物質がつられ続けます。
すると、神経はこの痛み物質の刺激を受け続け、脳に「痛みシグナル」を送り続けます。
痛み刺激が常に送られてくることにより、脳に感作が起き、脳は過敏になります。
過敏になった脳は、コリの強い場所から送られてきた信号は、痛み信号以外でも、「痛い」と感じるようになります。
この状態がさらに続きますと、脳に可塑性が生じます。
いわば、脳の外部刺激という信号を受け取る場所が、「歪み」を起こした状態です。
この「歪み」(可塑性)が生じますと、なかなか元に戻らなくなります。
こうして、痛みが長引くようになります。
移動する痛み
コリが長引く痛みを引き起こしても、痛む場所は「コリ」のある周辺だけのはずです。
では、なぜ、からだのあちらこちらに痛みが生じるのでしょうか?
近年の研究で、痛み物質が移動することが分かってきています。
ある場所で血流の悪化からコリが生じ、そこから痛み物質がつくられたとします。
従来の考えでは、痛み物質は、その場所に留まるか、時間とともに静脈血に流れ込み、肺に運ばれ新しい動脈血になる、あるいは、新しく送り込まれた動脈血との間で「ガス交換」が行われ、痛み物質そのものがなくなるとされていました。
現在でも、その考え方は正しいのですが、最近、別の考え方が出てきました。
ある場所の痛み物質を神経が運ぶという考えです。
軸索輸送と呼ばれています。
痛み物質が神経により、脊髄に運ばれますと、そこに、痛み物質を受け取る「受容体」が作られるとされています。
そしてこの受容体は感作を起こし過敏になり、脳に痛み信号を送り続けるようです。
例えば、足の骨折による痛み物質が脊髄のうちの、第4腰椎に運ばれたとします。
そこに痛みを受ける「受容体」が作られますと、第4腰椎が支配しているすべての場所からの外部刺激が、「痛み刺激」になります。
すなわち、足だけの痛みではなく、腰から下すべての場所で痛みが起きてもおかしくない状況になります。
この状態が続きますと、痛み物質はさらに「上」と運ばれていきます。
もし、頸椎まで運ばれますと、首から下どの場所で痛みを感じても、おかしくなくなります。
このようにして、痛みが移動し、広がっていくことが分かってきています。
痛みが広がることにより、更に対応が難しくなり、痛みが長引くことになります。