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不妊に悩む働く女性:鍼灸で卵の質は改善できるのか?

2017年3月25日2:43 PM カテゴリー:不妊症

 

目次

1.卵子の質とは?
2.「今回の排卵」までの卵胞(卵子)の成長過程
☆卵胞の成長過程
3.鍼灸で卵の質を改善するには?
①鍼灸で質の良い卵胞にするには?
②鍼灸で質の良い卵子(卵)にするには?

 

1.卵子の質とは?

あなたは、100~200万個の卵子を持って生まれてきていますが、その後、卵子が新しく作られることはありません。

新しく作られることはありませんので、卵の質を上げることは、難しいといえます。
また、卵の質を、直接的に判断することもできません。

いわゆる卵の質とは、「今回の排卵」の候補として成長した卵胞の数がいくつあるか?卵胞の大きさはどうか?などにより、間接的に判断するしかありません。

現在、産婦人科で良く行われている検査が、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値を測るというものです。

卵巣に残っている卵胞の目安が分かります。ここから採卵時にいくつの卵子が取れそうかを推定しています。

 

鍼灸治療により、子宮・卵巣への血流が増えることが分かってきています。

その結果、採卵に適した卵胞の数を増やす、採卵に適した卵胞の大きさまで成長させることができます。

これは、間接的ですが、卵の質の改善ができることを示しています。

以下のサイトを参考にしてください。

“卵の質の改善”

 

あなたの成長とともに、卵子の数は減っていきます。
初潮の時には30万個、妊娠できる時期には10~30万個、37,38歳ごろには2万5千個程度まで減少します。


これは、毎月1000個単位で、生理と関係なく育ち始め、3~4ヶ月位かけ成熟し、その中でも最も良い卵胞、1個だけが選択され、排卵し、残りは全てしぼみ、消失していくからです。

ざっとですが、卵子は毎日30~40個ずつなくなっていく計算になります。

卵子を中に持っている卵胞は、新しく作られることはありませんので、その質を改善することは難しいといえます。

 

 

卵子は、「今回の排卵」に備え、成長を始めるまで、卵巣の中で卵胞に包まれ休止しています。

この期間が長ければ長いほど、卵巣内でさまざまなストレスにさらされます。

例えば、生理不順、基礎体温の2相性の崩れなどは、女性ホルモンの分泌に影響を与え、卵巣は正しく機能するのに「苦労」をします。

また、社会的なストレスは自律神経の乱れを引き起こし、その影響が、生理周期におよび卵巣も、ストレスを受けるなどです。

卵子を包み込んでいる卵胞は、このようなストレスを成長期に卵巣内で受けることにより、卵の質の低下が進んでいきます。

不妊治療において問題になっている「卵の質の低下」は、年齢だけでなく、ストレスの影響もあるといえます。

年齢はどうしよもありませんので、あなたの卵の質の改善は、ストレスから引き起こされた身体の症状をどう解消するかにあるといえます。

 

 

2.「今回の排卵」までの卵胞(卵子)の成長過程

 

あなたの卵子は、お母さんのお腹にいる胎児の時に出来上がり、その時に、一旦、成長を停止し、「原子卵胞」という形で休止した状態になっています。

卵胞は、「今回の排卵」に関係なく発育しています。排卵時にも、妊娠中も発育しています。

あなたの卵巣の中では、現在、活動休止中の卵胞や、活動を再開したばかりの卵胞、「今回の排卵」に向け成長中の卵胞、排卵直前の卵胞など、さまざまな段階の卵胞が、常に休むことなく発育を続けています。

このように、卵巣の中には、さまざまな段階の卵胞が、数多く同時に存在しています。

「卵の質」を改善するには、今回、排卵する卵胞にアプローチするより、その前の成長中の卵胞にアプローチするのが効果的ということになります。

特に、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の影響を受けない段階の卵胞から改善を目指しますと、効果が上がりやすいです。

☆卵胞の成長過程

 

卵胞の成長過程は以下の順になっています。

原始卵胞→一次卵胞→前胞状卵胞(二次卵胞)→胞状卵胞→成熟卵胞

 

休止している原始卵胞の一部が、「今回の排卵」に向け活動を再開し、排卵に至るまで約1年かかります。

原始卵胞から一次卵胞への成長期間が約150日、一次卵胞から二次卵胞(前胞状卵胞)までの成長期間が約120日です。

比較的ゆっくりと、時間をかけて成長していきます。


 

この原始卵胞から前胞状卵胞までの間は、ゴナドトロピン非依存性で、卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの影響を受けません。

あなたの生理周期に関係なく成長を続けているわけです。

前胞状卵胞から胞状卵胞に成長する期間は、約71日間です。

この間に卵胞は、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の感受性を獲得します。

卵胞刺激ホルモンの刺激を受け、急激に成長していきます。

この過程の間で一部の卵胞が、発育を停止し、その後、吸収され消失します。

胞状卵胞から「今回、排卵する」成熟卵胞(グラーフ卵胞)に成長するまでが、14日間になります。

この段階は、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)依存性で、卵胞刺激ホルモンの働きにより成長します。

また、卵胞内でエストロゲンが作られるようになります。

そして、排卵までの間に、今回、排卵するべき卵胞が選択され、それ以外の卵胞は、発育を停止し、その後、吸収され消失します。

今回、排卵される卵胞内でエストロゲン濃度が一定以上になりますと、黄体形成ホルモンに働きかけ、黄体形成ホルモンの分泌が増大(LHサージ)します。

黄体形成ホルモンを多く受けることにより、卵胞内で停止していた卵子の細胞分裂が再開して、排卵へと進んでいきます。

このように、あなたが、「今回、排卵」するまでに約1年かかります。

 

3.鍼灸で卵の質を改善するには?

 

まず、卵胞とその中で休止いている卵子を、区別して考える必要があります。

受精するのは卵胞ではなく卵子ですので、一見、卵子をいかに良くするかが問題のようですが、実は卵胞の質も高めないと良い卵子は望めません。

二次卵胞(前胞状卵胞)から胞状卵胞へと成長する過程において、大きく成長できない卵胞は、自然に発育を止め、しぼみ吸収されていきます。

例えば、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)では、卵胞が大きくならないので、排卵することが難しくなっています。

また、胞状卵胞から成熟卵胞に成長した後も、いろいろな条件がそろわないと排卵に至りません。

質の良い卵胞の中に、質の良い卵子が存在しているといえます。

 


 

 

①鍼灸で質の良い卵胞にするには?

 

前胞状卵胞(二次卵胞)に成長しますと、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の感受性を持ち、その影響を受け、急激に発育しますので、この段階をどうするかが、決め手といえます。

二次卵胞が排卵直前の状態になるまでに、約85日かかります。

生理周期で計算しますと、1周期を28日として3周期に分になります。

今回の排卵時によい卵胞に育てるには、少なくとも、3周期分(約85日間)は、必要ということになります。

当院が、「卵の質の改善」には、少なくとも約3ヶ月の鍼治療が必要としているのは、このことによります。

二次卵胞から胞状卵胞に成長するまでの71日間は、卵胞刺激ホルモンの刺激を受けていますが、黄体形成ホルモンの影響は受けていません。

また、エストロゲンやプロゲステロンの影響も受けていません。

この71日間では、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の機能を高める、卵巣への血流を良くすることなどが、大切になってきます。

 

性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の機能を高めるには、それに対して指令を出している性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の機能を高める必要があります。

性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)は、脳の視床下部にありますので、視床下部に刺激を与える、脳血流を良くすることにより、その機能を高めることができます。

手や足のツボに鍼をしますと、その刺激が神経を介して脊髄に伝わり、そこから視床下部や扁桃体に伝達され、機能改善と血流量が増加します。

以下のサイトを参考にしてください。

脳血流

脳血流

 

また、卵巣の機能を高めるためには、卵巣への血流量を増やすことが大切になります。

これは血液には、酸素を含め、3大栄養素を変換したもの、鉄分など栄養を含んでいるからです。

新鮮な栄養の十分ある血液が送り込まれることにより、卵巣機能は高まります。

鍼刺激は卵巣への血流の血流を増やすことができます。

以下のサイトを参考にしてください。

卵巣の血流

卵巣機能

 

胞状卵胞から成熟卵胞(グラーフ卵胞)に成長するまでに14日間かかります。

この間に黄体形成ホルモン(LH)を受け取ることができるようになった卵胞のみが排卵できるようになります。

卵胞刺激ホルモンは、卵胞を刺激し、排卵できるように成長させるだけでなく、そのことを脳に伝えます。

脳がその情報から排卵できると判断しますと、下垂体から黄体形成ホルモンが放出され、排卵するように指令を出します。

この期間も、性腺刺激ホルモンの働きをと卵巣への血流を良くする必要があります。

鍼灸治療により、あなたの生理周期と卵巣への血流改善を目的にすることにより、この時期における卵胞の質の改善が期待できます。

 

②鍼灸で質の良い卵子(卵)にするには?

卵子は卵胞の中で排卵直前まで、その活動を休止しています。

排卵の24~36時間に前に、黄体形成ホルモンの分泌が急激に増える時期があります。
これをLHサージと呼んでいます。

このLHサージを受けることにより卵胞内の卵子は活動を再開させます。

卵子(卵細胞)には、黄体形成ホルモンを受け取る機能がありませんので、その成長は卵胞細胞から受け取っていると考えられています。

十分なLHサージが起こるには、基礎体温における低温期に血液中のエストロゲン(エストラジオール:E2)の濃度が、ある一定以上になる必要があります。

そして、その状態が2~3日間続きますと、エストラジオールのピークに一致して、脳の視床下部においてGnRH抑制が解除され、LHサージが引き起こされます。

LHサージと同時に卵胞刺激ホルモンの分泌も急激に増えます。これをFSHサージと呼んでいます。

FSHサージは卵子が存在している細胞である卵胞内の卵丘細胞を栄養する、卵子の活動を助けるなどの作用があります。

卵子と卵丘細胞は合体し、卵丘細胞が卵子(卵細胞)の成熟に関与していると推察されています。

卵丘細胞は卵子の発達、成熟、受精をコントロールしているとされています。

卵子(卵細胞)が、十分に成熟しますと、卵子と卵丘細胞の合体した卵丘・卵子複合体として排卵されます。

このようなことを考えますと、質の良い卵子を作るには、まず、質の良い卵胞を作る必要があります。

ここからも「卵の質」の改善には、3ヶ月かけるのが良いことが理解できます。

「今回の排卵」に向けて、「卵の質」をよくするには、以下のようなことが必要になってきます。

1.基礎体温の2相性にコントラストがある
2.低温期に十分にエストラジオール(エストロゲン)の分泌がある
3.黄体形成ホルモンのLHサージが十分な量と時間がある
4.卵胞刺激ホルモンのFSHサージが十分な量と時間がある

 

1.基礎体温の2相性にコントラストがある

あなたの基礎体温には、低温期と高温期があります。

これは、排卵後にプロゲステロンが体温中枢に作用してあなたの体温を上げます。生理が起きますとプロゲステロンは分泌されませんので、体温が下がります。

基礎体温の2相性にコントラストを作るには、排卵後、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が多くなるようにする必要があります。

黄体ホルモン(プロゲステロン)は、黄体形成ホルモンのLHサージの刺激を受け、作られます。

この働きをよくするには、生理周期のフィートバック機構である「視床下部-下垂体-卵巣系」の機能を正常にする必要があります。

手や足のツボに鍼刺激を加えますと、その刺激が神経を通じ、脊髄を通り、脳の視床下部に伝達されることが分かってきています。

この仕組みを使う鍼治療を行うことにより、基礎体温の2相性のコントラストを作ることができます。

 

2.低温期に十分にエストラジオール(エストロゲン)の分泌がある

低温期にはエストラジオールが作られています。

このエストラジオール(エストロゲン)は、男性ホルモンであるアンドロゲンが、アロマターゼという酵素を媒介して作られます。

アロマターゼの活動が低下しますとエストロゲンが、十分に増えないことになります。

アロマターゼは、酵素ですので、高温を必要としません。

このことから、「低温期」に適切に体温が下がっている必要があるとされています。

日中は、仕事や家事などで活動していますので、交感神経が活発になり、血流も多くなっていますので、体温を下げることは難しいと言えます。

睡眠時には、副交感神経優位となり、活動も低下していますので、体温下げることができます。

アロマターゼの活性を高めるには、質の良い睡眠が必要と言えます。

睡眠時には、からだ、特に脳から熱が放散されます。この熱の放散が少ないと、自律神経失調症や抑うつ症を引き起こします。

あなたの生理周期の乱れにも繋がります。

鍼治療は、睡眠の質を上げることが分かってきています。

高齢者を対象とした臨床試験ですが、明治国際医療大学において、認知症初期の患者さんへの鍼治療で、睡眠の質が良くなり、認知症の改善が見られたとあります。

また、アメリカの鍼灸教育機関での報告にも、鍼灸が睡眠の質を高めるとあります。

以下のサイトを参考にしてください。

睡眠の質の改善とストレス改善

鍼灸により質の良い睡眠を得て、低温期の体温を下げ、アロマターゼの活性化をよくすることにより、卵胞期のエストロゲン分泌を増やすことが期待できます。

 

3.黄体形成ホルモンのLHサージが十分な量と時間がある
4.卵胞刺激ホルモンのFSHサージが十分な量と時間がある

この2つの作用が上手く働くには、視床下部に存在する性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌が、正常に行われるかどうかによると言えます。

現在では、LHサージやFSHサージなどの調節は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン自体が調節しているのではなく、さまざまな神経伝達物質により調節されていることが分かっています。

性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌を調整している神経伝達物質には、以下のようなものがあります。

・ノルアドレナリン
・ドーパミン
・オピオイドペプチドなど

 

また、外界からの刺激、食欲や睡眠、情動などの機能に関連する神経伝達物質も影響を与えています。

あなたが、持続された過剰なストレスから生理不順・生理痛になるのは、このようなことによります。

鍼刺激は、脳血流量を改善し、神経伝達物質やホルモンの作用を調節することが知られています。

鍼治療により、LHサージやFSHサージなどの調節を適切にすることが期待できるのは、このようなことによります。

また、鍼治療にはリラックス効果があり、あなたが日中、仕事など緊張したからだや心を緩めることで、ホルモンバランスの調節が期待できます。

以下のサイトを参考にしてください。

鍼は脳機能に様々な影響を及ぼす

鍼灸治療でリラックス

 

このほか、最近の研究により性腺刺激ホルモン放出ホルモンを支配しているのではという神経が見つかっています。

キスペプチンニューロンという神経で、この神経は内臓脂肪にあるレプチンをモニタリングしています。

レプチンが適切に分泌されていますと、キスペプチンニューロンがキスペプチンという神経伝達物質を放出し、このキスペプチンが性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌するように指令を出します。

レプチンは食欲に関係するホルモンで、このホルモンが放出されますと食欲を抑える働きが生じます。

極端なダイエットなどをしますと、このレプチンが放出されなくなり、その結果、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌がされなくなり、生理が止まります。

女子マラソン選手によく無月経が生じるのは、このような理由によります。


 

これは、内臓脂肪が極端に少ないと、妊娠すると生命を維持するのが難しいと脳が判断して、あなたの生命を守るために、妊娠できないように生理を止めるのです。

ダイエットをしていなくても、忙しさから不規則な食生活になる、食欲がなく食べないことが続きますと、生理不順などが起き、不妊を引き起こすことがあります。

鍼灸治療は、脳血流量を増やす、リラックス効果をえるなどの作用の他に、胃腸の働きを整えることができますので、食欲の回復や、胃腸機能改善により、不妊の解消に繋がっていきます。

このようなことから、鍼灸治療は、「今回の排卵」に向け、卵子を栄養する女性ホルモンの分泌を正常にし、「卵の質」の改善をすることができます。

鍼灸治療は、卵子だけでなく、それを包み込んでいる卵胞にも栄養を送り込むことができ、あなたの「卵の質」の改善に間接的に働きかけることができるといえます。

 

 

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