排卵誘発剤を使用すると、普段1個しか排卵しない卵が、複数個育ちます。
すると、卵巣の中の卵が、早く無くなりそうな気がしませんか?
排卵誘発剤の働きを知らないと、年齢が高くなるに連れ、排卵誘発剤を使用することに抵抗感が出てきそうです。
そこで排卵誘発剤の働きと、鍼灸治療と併用した場合のメリットをご紹介します。
<当院 堀内先生>
【排卵誘発剤は目覚める卵を増やすのではありません】
あなたの卵巣には、産まれた時から約200万個の原子卵胞が存在します。200万個の卵胞は、思春期までの間に170~180万個が姿を消し、約20~30万個の卵胞が残ります。
この20~30万個の内、実際に排卵する数は1月に1個とすると400~500個です。(12カ月×40年=480)
それ以外の卵胞は、卵巣内に残るのかと言うと、そうではありません。毎月数十個~1000個とも言われる卵胞が成長し、排卵されることなく消えていきます。
卵胞は、脳下垂体から分泌される、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)の影響で成長します。
成長をし始めてしばらくすると、卵胞の細胞から分泌される物質の影響で、FSHの分泌が制限されます。
そのため多くの卵胞は消えていき、一つだけの卵胞が育つのです。
排卵誘発剤は、減っていくFSHを減らさないようにしています。つまり、自然に消えてしまうはずの卵胞を、FSHを補うことで育てているのです。
消えていくはずの卵胞を育てているので、卵巣の中にある卵胞が、排卵誘発剤を使うことで急激に減ることはありません。
【排卵誘発剤は万能ではありません】
排卵誘発剤を使用しても、卵胞が全く育たない方がいらっしゃいます。
・GnRHを分泌する能力が極端に低い。
・卵胞を育てる栄養が十分に届いていない。
・卵巣自体の働きが低下している。
・自分自身の健康状態が良くない。
こうした人に対して排卵誘発を続けると、逆に卵胞を育てる力が落ちてしまい、不妊傾向が強まることがあります。
排卵誘発剤は、あなたの体調を整えて育つ卵胞の数を増やすのではありません。ただ単にホルモンの分泌を増やすだけなのです。
育つ卵胞の数が増えるだけでは、あなたの妊娠が近付いたとは言えません。育つ卵胞の質が高まるからこそ、あなたは妊娠に近付くのです。
排卵誘発剤を有効に利用するためには、根本的な体質改善や体調管理が大事なのです。
【排卵誘発剤と鍼灸治療の併用】
先ほどもお話した通り、排卵誘発剤を使用すると、弊害が出る場合があります。
・子宮内膜が薄くなる。
・生理周期が乱れる。
・頸管粘液が出なくなる。
こうした妊娠にとってマイナスの働きは、本来の生理周期では分泌されないはずの時期に、無理やりホルモン分泌をしたり、外部から足したりしたためです。
特に半減期の短いクロミッドでは、薬の働きが本来の生理周期を乱すことがあり、その結果、上のような副作用が出てしまいます。
こうした副作用を防ぐには、少しでも早く体内に残った薬を解毒し、本来の生理周期を整えることが大事になります。
鍼灸治療は、血液循環を改善することで、体内に残った薬を肝臓に運びやすくし、少しでも早く解毒するようにします。
また排卵誘発剤で育つ多くの卵胞に、栄養を運びやすくなるため、卵胞の成長も良くなります。
さらに血液凝固や炎症を防ぐ働きにより、排卵誘発剤を使用した採卵の際に起こる、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を予防する働きもあります。
・乱れた生理周期を整える。
・解毒能力を高める。
・OHSSを防ぐ。
こうした働きにより、排卵誘発剤の副作用を減らしながら、最大限の効果を発揮するのです。