今回の症例は、病院ではPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と診断を受けて、投薬治療を受けていた患者さまです。
PCOSは様々な病態を持つ排卵障害ですが、今回は排卵誘発剤を使用したため、双子の妊娠となりました。
多胎妊娠は、安定期が無いと言われますが、できるだけ安産に近付けるため、当院としても全力でサポートさせて頂きます。
【PCOS(立嚢胞性卵巣症候群)で来院された女性患者様の妊娠症例】
30代女性 大阪府在住 事務職
診断名:
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
約2年前に結婚し、半年後からタイミング法を取り出したのですが、妊娠には至らなかったため、不妊専門病院を受診されました。
病院での診断はPCOSということですが、処方された薬を見ると、
・クロミッド(排卵誘発剤)
・ルトラール(黄体ホルモン剤)
・カバサール(ドーパミン作動薬)
という3種類でした。クロミッドは、婦人科で非常に多用される排卵誘発剤です。
子宮内膜が薄くなるという副作用が有名で、連用はされないことが多い薬です。また複数排卵するため、多胎妊娠が増えることでも有名です。
ルトラールは、黄体ホルモン剤です。黄体期に、黄体ホルモンが足りない場合に処方されますが、黄体期があっても妊娠維持を目的に処方される場合もあります。
よく分からないのは、カバサールです。カバサールは、高プロラクチン血症で使用されるドーパミン作動薬です。診断名はPCOSでしたが、プロラクチンも高かったのでしょうか?
ホルモン検査ではそうした兆候はありませんでしたが。こうして投薬治療を続けてこられたようですが、妊娠の徴候が無く、これ以上のステップアップを望んでいないため、本質的な体質改善を求めて、当院にご来院されました。
<自覚症状>不妊、生理不順、生理痛
生理痛や生理不順は、PCOSの症状として当て嵌まります。PCOSの方は、LH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞形成ホルモン)のバランスが崩れているため、排卵障害を起こし、生理不順となります。
排卵誘発剤で排卵自体は起きているようですが、根本的な問題は解決していないということでしょう。
またPCOSの方は、血液凝固異常を持つことが多く、肥厚した子宮内膜が上手く溶かされず、固まりができやすい傾向があります。
生理の時に血の固まりができると、その分子宮が強く収縮して出そうとするため、生理痛が起きやすくなります。
【初診】
問診では、かなり詳しくお話をお伺いしました。生理周期や生理の状態などを詳しくお聞きし、仕事の内容などもお聞きしました。
病院で排卵誘発剤を飲む前は、生理不順もかなりあったそうです。恐らくは、排卵が上手くいっていなかったのでしょう。
生理の出血は赤黒く、少し固まりが混じるとのことでした。こうした血液凝固異常は、先ほどご説明した血液凝固異常と繋がります。
精液検査では、ご主人に問題は認められませんでした。今回は、奥さまのみ施術することになりました。
不快症状としては、肩こりや冷え症があり、妊活を始めてからは、気分の落ち込みもあるそうです。
その他、血液検査には異常が認められませんでした。
【鍼灸治療1回目】
肝兪 膈兪 次髎 風池 肩外兪
中封 足臨泣 関元
使用した鍼 ステンレス製使い捨て 長さ30mm 太さ0.18mm
治療後は肩こり、腰痛の軽減は感じたとのことでした。週1回のペースで治療を続けて頂くようにご説明しました。
【鍼灸治療2回目】
肝兪 膈兪 厥陰愈 風池 肩外愈 次髎
太衝 中封 足三里 関元 期門 合谷
タイミングの時期に入りましたが、お仕事の試験棟があり、上手くタイミングを取れていないようでした。
ただご主人はとても協力的だそうで、妊活には理解があるようで安心しました。
【鍼灸治療3回目】
膈兪 肝兪 肩外兪 風池 次髎 足三里
関元 期門
2日後が生理予定日でした。足の冷え、お腹の張りなどの不快症状がかなり軽減していると仰っていました。
【鍼灸治療4回目】
生理予定日に生理が来なかったため、自宅で検査薬をしたそうです。陽性反応が出たため、時間をおいて病院へ行く予定だと仰っていました。
膈兪 肝兪 肩外兪 風池 足三里 関元 中脘
妊娠中は、あまり肝経や胆経は治療しないのですが、体調も安定しているため、軽めの施術をしました。
【鍼灸治療5回目】
久しぶりの来院でした。すでに妊娠12週に入っており、一番大変な時期は越えました。
つわりが出ているため、つわりの治療と更に元気になって頂くよう治療をさせて頂きました。
風池 肩外兪 腎兪(灸) 復溜 足三里
関元(提鍼) 内関(円皮鍼)
背負っていたリュックには、憧れのキーホルダーが。
お話を伺うと、何と双子だそうです。
これからも体調維持のため、来院をお勧めしました。