2018年6月24日12:35 PM カテゴリー:
不妊症,
症例
患者さまの妊娠から学ぶこと
平成30年6月の第4週は、1週間で3人の方に妊娠のご報告をして頂きました。全ての方にそれぞれ思い入れがあるため、非常に嬉しい1週間になりました。
妊娠報告は、大体妊娠反応から胎嚢確認の間に頂くことが多いため、週数で言うと4~5週目ということになります。
今後12週目までは鍼灸治療を受けて頂き、無事13週まで通院して頂いてからは、話し合いで安産のための治療を月に1回続けるか、当院での施術を終えるかを選んで頂くことになります。
12週を越えると、流産する確率がかなり減るため、
当院では12週までの鍼灸治療をお勧めしております。
【ご夫婦で来院】
今回妊娠された患者さま方の内、1組はご夫婦で来院して頂いていた患者さまでした。特にご夫婦ともに不妊原因が不明の場合、ご夫婦で鍼灸治療を受けて頂くと、妊娠に至る例が多いようです。
原因不明と言うことは、ご夫婦のどちらに原因があるのか、もしくは両方に原因がある可能性があります。
卵管が詰まっていたり、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のように排卵をしていないことが分かっている場合、精子に明らかな異常がある場合には、ご夫婦の内お一人でも治療効果が挙がる場合もあります。
ところが、
長期間に渡り不妊治療をしても妊娠に至らない場合、どちらかお一人に明確な原因があっても、もう一人の
些細な原因が問題になることもあります。
妊娠できない原因と言うのは、小さな原因の集合体であったり、プラスアルファの要素が問題になることがあるのです。
妊活が長引いている場合には、ご夫婦ともに生活改善や妊活に取り組むことをお勧めします。
【転院が大きなきっかけ】
妊娠された方の内、お2人は当院に来院されてから、おからだの状態と、通院中の病院での治療を考えたときに、これ以上同じ病院での不妊治療が適切ではないと考えました。
そこで、
自分で選択して不妊治療を受けて頂くために、他院への転院をご提案しました。
不妊専門病院の中には、明確な治療方針の違いや、施設の差、技術の差、情報の差、得意な治療、使用する薬剤の違い等々があります。
この
差を一般の方が知ることは難しいため、私たちはできるだけ納得のいく不妊治療を受けることができるように、患者さまに
不妊治療の受け方のご提案をします。
結果的に、今回妊娠されたお2人は、その方策が成功したということです。
このお2人は、同じ病気で上手く排卵ができない状態でした。そのため、ステップアップをしないという前提で、投薬をコントロールするために転院をして頂きました。
ステップアップして体外受精を受ける方の中には、必要がないステップアップで、心身ともに傷付いている女性が多くいらっしゃいます。
投薬と鍼灸治療を組み合わせることで、体外受精にステップアップする前に、患者さまに妊娠して頂くことができたのです。
お一人は人工授精で、もう一人はタイミング法での妊娠でした。
体調を整えることで、最低限の医療補助で妊娠に至ったということですから、心身ともに、更には、
経済的にも優しい治療だったということではないかと思います。
【妊娠中の鍼灸治療】
妊娠中の鍼灸治療は、鍼灸院によっては断られることも多いはずです。妊娠初期の流産は、12週までに起こることが9割以上を占めます。
その殆どが染色体異常などの先天異常だと言われていますが、妊娠初期に鍼灸治療を受けると、本来は先天異常が原因の流産でも、鍼灸治療のせいで流産したのではないかと誤解を受けることがあります。
ただ海外での臨床試験でも、鍼灸治療の流産予防効果は実証されています。
鍼灸治療を妊娠中に受ける効果は、次のようなものです。
〇流産予防効果
鍼灸治療は、交感神経の興奮を鎮め、血液凝固の働きを予防する効果があります。そのため、鍼灸治療を受けることで、元々血栓を作りやすい多嚢胞性卵巣症候群の、血液凝固異常を予防する働きがあります。こうして血栓を予防することで、流産を防ぐことが期待できるのです。
〇妊娠中の不快症状軽減
妊娠中には様々な心身の変化が急激に起こるため、腰痛や股関節痛、骨盤痛、更には悪阻(つわり)などが起こります。
こうした妊娠中の不快症状を軽減するために、鍼灸治療は安全に効果的に働きます。
〇抗不安効果
妊娠中は女性ホルモンの急激な変化のせいで、精神的にも不安定になることがあります。そのため、初めての妊娠では、精神的なサポートは非常に重要です。
鍼灸治療は、マンツーマンで長時間行うため、カウンセリング的な効果も期待できます。経験豊富な鍼灸師の場合には、特に心身ともにサポートしてくれます。
また鍼灸治療自体が、脳の扁桃体に対して働きかけ、ドーパミンと言う脳内物質の分泌を促進することが分かっています。
ドーパミンは、前向き感を作る脳内物質として有名なものです。ドーパミンが分泌されると、妊娠や出産への不安感が減り、妊娠中に対して前向きに取り組めるようになります。
不妊治療を経て初めての妊娠をされた方は、流産の不安感に押し潰されそうになる方が多く、比較的長期間サポートすることが多くなります。
つわりも精神的な要素が強く関係するため、つわりが強い場合には心理的なサポートも効果を挙げます。