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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に対する海外での臨床研究結果【鍼灸の効果】

2018年3月9日11:46 AM カテゴリー:不妊症

今回ご紹介するのは、多嚢胞性卵巣症候群に対する西洋薬、漢方薬、鍼灸治療の併用療法についての論文です。

海外では、西洋医学の薬と、漢方薬や鍼灸治療を併用して臨床効果を出す試みや、臨床研究が進んでいます。

特に中国では、国家的な施策として中国医学を海外に輸出するために、こうした試みを論文化して発表しています。

今回ご紹介するのも、そうした論文の一つです。

 

【前提】

 

今回の研究では、多嚢胞性卵巣症候群を治療法により120人を40人ずつ3つのグループに分けて検討しています。

A;ピルの服用+レトロゾールを5日間服用したグループ

B;Aの治療に漢方薬を足したグループ

C;Bの治療に鍼灸治療を足したグループ

レトロゾールは、フェマーラと呼ばれる薬で、女性ホルモンであるエストロゲンが、卵胞で作れないように、アロマターゼという酵素を不活化する薬です。

女性の卵胞では、まずアンドロジェンという男性ホルモンを生成し、そのアンドロジェンをアロマターゼでエストロゲンに変換するという作業をしています。フェマーラは、そのアロマターゼを活性化させないことで、エストロゲンが作られないようにするのです。

多嚢胞性卵巣症候群の女性は、LH(黄体化ホルモン)というホルモンが多量に分泌されるため、エストロゲンの前に卵胞で作られるアンドロジェンが多くなってしまい、結果的にエストロゲンが作れない状態になっています。

元々エストロゲンが上手く作れない女性に対して、更にエストロゲンを作れないようにすると、返って排卵ができなくなりそうですが、実際には違います。

エストロゲンが作られないことで、逆に脳の視床下部からは多くのFSH、LHというホルモンが分泌されます。多嚢胞性卵巣症候群の方は、FSHよりもLHの量が多いという特徴がありますが、フェマーラを使用すると、そのバランスが改善されるため、しっかりとエストロゲンを作るようになり、排卵が起こるようになります。

ABCで共通するピルの使用は、その前にLHが過剰に分泌されるのを制限する、いわゆるリセットの役割があると思われます。

つまりホルモン分泌をリセットし、更にフェマーラで排卵誘発をしているということです。そこに漢方薬を足したものがBであり、更に鍼灸治療を加えたものがCであるということです。

Cの鍼灸治療は、生理5日目から開始し、2日に1回というかなり多い頻度で、生理前まで行っています。また中国の病院で行っているため、電気鍼を使用しています。

【結果】

 

・有効率、排卵率、妊娠率の改善はC→B→Aの順で良好でした。

・月経周期は全てのグループで改善され、AよりもCの方が改善されました。
 また体重はBとCで減少しました。

・全てのグループでLH、LH/FSHの値が減少しました。

・BとCのグループでは、男性ホルモン、AMHの値が低下していました。

・AとBではLUF(黄体化未破裂卵胞)が生じましたが、Cではありませんでした。

【考察】

 

レトロゾール(フェマーラ)は、海外では、多嚢胞性卵巣症候群の治療薬としてよく利用されますが、日本ではそれほど普及していない印象があります。

その原因は、排卵障害に対しての保険適応が遅れているためです。排卵障害には、クロミフェン(クロミッド)やセキソビットが使用されることが多く、元々小さい卵胞が複数できる多嚢胞性卵巣症候群の方では、複数の卵が排卵する恐れがあるため、多胎妊娠のリスクがあります。

フェマーラを使用すると、1個の卵胞が育つため、多胎妊娠のリスクも減り、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクも減らすことができます。

今回の論文では、海外のもののため、フェマーラが治療薬として使用されています。

鍼灸治療は、単独で行っても効果的ですが、投薬との相性も良く、LUFやOHSSの予防効果もあることから、色々な不妊治療の投薬とも併用効果が高いことが分かります。

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