PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、非常に多彩な病態を持った排卵障害です。定義的には3つの症状からなりますが、それに付随する病態は複雑で、排卵というメカニズム全体に関わっているといえます。
そのため投薬や外科的治療など、治療法も多岐にわたるのです。ところが不妊専門病院では、あまりそうしたメカニズムには興味を示さず、排卵誘発剤を数回使用してステップアップを計画されます。
もしあなたがPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)でお悩みなら、この記事がお役に立つはずです。
【PCOSの定義とは】
2007年に改正された基準では、次のようになっています。
(日産婦誌60巻11号研修コーナーより)
内容としては、1~3の3点を満たすか否かです。この3つの点は、実は排卵(生理周期)というメカニズムでは、全て1線上にあることで、違った3つの事象を言っているのではありません。
つまり正常であれば排卵(生理周期)というメカニズムでは、全て当たり前にクリアすべきプロセスなのです。
こうした当たり前の排卵というメカニズムを正常化することが、PCOSの治療では最も大事なことになります。ただ単に、「投薬で排卵をさせれば良い。」ということではないのです。
【正常な排卵とは】
正常な排卵には、幾つかのプロセスがあります。このプロセスが正常であれば、PCOSにはなりません。
1.脂肪細胞でのレプチン分泌
2.レプチン分泌を視床下部で感知し、キスぺプチン分泌。
3.キスぺプチンの刺激で、視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌)
4.GnRHの刺激で脳下垂体前葉からLH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌
5.LHが卵胞に働きかけアンドロジェン(男性ホルモン)分泌
6.FSHが卵胞に働きかけアンドロジェンをエストロゲンに変換
7.エストロゲンの上昇を感知し、LHの急上昇(LHサージ)が起こり排卵
8.排卵後の卵胞が黄体となり、黄体ホルモンを分泌
9.黄体期に着床(妊娠)が起こらなければ、2週間程度で月経が起こる
こうした一連のプロセスが正常に行われれば、排卵障害が起こりません。特に1~7のプロセスが、PCOSには重要です。
病院での投薬では、主に4~7だけを切り取って行います。
【鍼灸治療】
PCOSに対する鍼灸治療では、上にある1~7の全てに対してアプローチをしていきます。
鍼灸刺激で、こうした全てのプロセスにアプローチすることで、根本的な改善を目指しています。
鍼灸治療では、体外受精を前提にしていないため、自力で排卵をするということを目標にしています。
ただ患者さまが望むときには、西洋医学の投薬を併用することで、より早く症状を改善することもできます。
海外では、こうした鍼灸と西洋医学の投薬を併用して、効果を挙げています。どういった方法を選ぶべきかは、あなたに残された心理的余裕や時間によって変えるべきだと思います。
方法は選ばないので、少しでも早く妊娠したいという方には、体外受精と鍼灸の併用でも良いのかもしせんし、高度医療には抵抗があるという方なら、鍼灸単独でも良いと思います。
全ては、あなたの選択で決めることができるのです。病院が治療法を選ぶのではありませんので、情報を得た上で洗濯をして下さい。そのための情報提供や、協力は不妊鍼灸専門の鍼灸院などでご相談できるはずです。
PCOSは、排卵がしにくいというだけでなく、血液凝固異常を伴うこともあるため、排卵誘発の使用でおこるOHSSが重症化しやすかったり、血栓を作りやすく初期流産しやすい傾向もあります。
そのため排卵障害の治療だけではなく、妊娠継続のための幅広いケアが必要な場合もあります。こうした長い期間、あなたに寄り添ってケアをするために、私たち「鍼灸院 天空」ではPCOSを専門的に扱って日々研究しているのです。