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PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)による排卵障害を鍼灸治療で改善

2018年1月9日11:11 AM カテゴリー:PCOS(多嚢胞性卵巣症候群),不妊鍼灸

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、排卵障害の中でも、比較的よく見られる症候です。

PCOSでは、ネックレスサインと呼ばれる、排卵されずに残った小さな卵胞が、卵巣内に観察できます。

 

このPCOSには鍼灸治療が効果的に働きます。鍼灸では、PCOSをどのように考えて施術していくのかをご紹介します。


【PCOSとは】

PCOSでは、血液検査でFSH(卵胞刺激ホルモン)に比べてLH(黄体化ホルモン)が多いという特徴が見られます。

通常、不妊治療の際の血液検査は、生理が始まったときに検査されます。生理が始まると、生理周期がリセットされ、次の生理周期が始まります。

生理周期の始まりは、FSH(卵胞刺激ホルモン)が卵胞に刺激を与え、卵胞からのエストロゲン分泌を促します。

卵胞の発育と共にエストロゲン分泌が高まると、エストロゲンの分泌上昇を感じた視床下部からの命令で、下垂体からのLHが急激に上昇(LHサージ)し、排卵が起こります。


PCOSの場合、この一連の生理周期に障害があるため、卵胞の成熟ができずに、育ち切らない卵胞が、複数卵巣内に残ってしまいます。これをネックスレスサインと言います。

【PCOSと男性ホルモン】

PCOSの原因として挙げられているのは、男性ホルモンの分泌過剰です。

卵胞の中には、卵子のすぐ外側にある顆粒膜細胞と、その外側にある莢膜細胞があります。

莢膜細胞には、LH(黄体化ホルモン)の受容体があり、LHの刺激を受けてコレステロールから男性ホルモンであるアンドロジェンを合成しています。

その後、顆粒膜細胞がFSHの刺激を受けて、細胞内のアロマターゼを活性化することで、アンドロジェンからエストロゲンを分泌しています。

PCOSの方はLHの値が高いため、必要以上にアンドロジェンを合成してしまい、顆粒膜細胞のアロマターゼ活性化が追い付かなくなり、アンドロジェンが過剰になってくるようです。

アンドロジェンは男性ホルモンですから、男性化が起こることで、更に不妊傾向は強まります。

そのためPCOSの患者さんの中には、多毛やニキビ、声の低音化などの男性化症状が見られることがあります。

【LHが高まる理由】

LHが高くなる理由として、最近多く指摘されているのが、インスリン抵抗性の問題です。

インスリン抵抗性が高い人は、インスリンが働きにくいため、高インスリン血症になります。

インスリンは脳下垂体へ働きかけ、LH分泌を促す作用があります。

またインスリンは卵巣にも働きかけ、アンドロジェン分泌を促す作用もあるようです。

LHにもアンドロジェン分泌を増加する作用があるため、インスリンの増加は、結果的に男性ホルモンであるアンドロジェンを増加させるようです。

インスリン抵抗性は、遺伝や不適切な食生活、肥満などで起こりやすくなります。

こうした、インスリン抵抗性から起こるPCOSには、糖尿病の薬であるグルコランンなどが処方されます。

インスリン抵抗性のある人の中で、もう一つ注目されているホルモンがあります。それが脂肪細胞から分泌されるレプチンです。

レプチンは、

【ストレスと男性ホルモン】

精神的ストレスが高くなると、副腎がストレスに反応してホルモンを分泌します。

抗ストレスホルモンであるコルチゾールは、男性ホルモンであるアンドロジェンの分泌も増やす作用があります。

分泌されたアンドロジェンは、皮脂の分泌量を過剰に増やし、毛穴が詰まりやすくなります。

詰まった毛穴では雑菌が繁殖しやすくなり、炎症を起こすことで大人ニキビが増えます。

PCOSの患者さんの中には、フェイスラインにニキビがたくさんできる方がいます。

。ラインは、男性のヒゲが生える部分でもありますので、これもアンドロジェンの仕業だと言えます。

高ストレス状態の女性にも、PCOSの方が多く見られることから、ストレスもPCOSの原因になるということが分かります。

【PCOSの鍼灸施術内容】

鍼灸治療でPCOSを施術する際の目的

・LHとFSHのバランスを整える。
・卵巣機能を整える。
・耐糖能異常を矯正する。
・ストレスの軽減を図る。

LHとFSHは、共に視床下部から分泌されるGnGHというホルモンの命令で、脳下垂体から分泌されます。

LH/FSHの比率が1を超えると、排卵障害が起こると言われています。そのため、LHが高くなり過ぎないことが大事です。

鍼灸治療は、脳下垂体や視床下部に働きかけ、LHとFSHの比率を改善する働きが報告されています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21816787
(多嚢胞性卵巣症候群の女性に対する鍼灸治療はLH/FSHを改善する)

また卵胞内に血流を安定供給することで、卵胞内で起こるアンドロジェンからエストロゲンへの返還を促す作用も期待できます。

またラットの実験では、卵胞以外のアロマターゼ活性を上げる働きも確認されており、卵巣以外からのエストロゲン発現にも効果を表すようです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15777765

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15113414

また耐糖能異常に対する鍼灸治療の効果も広く知られており、耐糖能異常を鍼灸で改善することでも、PCOSの改善を期待できます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22136015
(耐糖能異常患者に対する鍼灸治療)

最後にストレスに対する鍼灸治療の効果も、海外では臨床研究が進んでいる分野です。

一口にPCOSと言っても、その病態は複雑で、不妊専門病院の中でも対応にはかなり差があります。

特に高度医療を行う不妊専門病院では、PCOSを積極的に治療するよりも、体外受精や顕微授精にステップアップしようという傾向が見られます。

できるだけ人工的に妊活をしたくないという方は、鍼灸治療が大きな味方になってくれるはずです。

ステップアップは、できることを全てしてからでも遅くありません。またPCOSの方は、血液凝固異常を持っている方が多いため、採卵の際にもOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こしやすく重症化しやすいことが分かっています。

こうした血液凝固異常にも、鍼灸治療は効果的に働きます。PCOSに悩むあなたにとって、鍼灸師は妊活を乗り切る貴重なパートナーになれるはずです。

 

 

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