子宮筋腫は、全女性の1/3に発症すると言われる良性腫瘍です。子宮筋腫が大きくなる要因としては、女性ホルモンの影響が大きいとされています。
そのため妊娠前にできていた子宮筋腫が、妊娠中に女性ホルモンの影響で大きくなってしまうということは、臨床ではよく見掛ける出来事です。
基本的に、妊娠中には手術などは行わないため、そのまま出産まで様子を見ることが殆どです。子宮筋腫の大きさやできる場所によっては、帝王切開の適応になることがありますが、母子の健康状態に影響がない場合が多いようです。
子宮筋腫は女性ホルモンの影響でできるものですし、多くの女性にできるため気にするほどではないのですが、実際に子宮に筋腫があるというだけで気になるものです。
そこで、子宮筋腫ができにくく、できたとしても大きくなりにくくするためには、どうすれば良いのかをご紹介します。
【子宮筋腫は女性ホルモンのバランスが大事】
京都大学名誉教授の藤田慎吾医師は、子宮筋腫について次のように仰っています。
「平滑筋腫はエストロゲンだけでは発生・分化せず、プロゲステロンも重要な働きをしている。」
「子宮筋層の収縮による局所の低酸素状態が、子宮平滑筋細胞のDNA 障害をもたらし筋腫を発生させるのではないか」
子宮筋腫が大きくなる際に、エストロゲンの働きで子宮筋腫は大きくなるとされていますが、実際にはプロゲステロンが重要な働きをしているようです。
プロゲステロンは、卵胞で作られるエストロゲンが一定濃度に達した後、それをきっかけに起こった排卵後の卵胞から分泌されるホルモンです。
この図では、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが、同時に分泌されているように見えますが、実際には違います。
1つの卵胞からは、FSHとLHの働きでエストロゲンが作られ、その後排卵があってから、排卵前にエストロゲンを作っていた卵胞の細胞から、エストロゲンとプロゲステロンが作られるようになるのです。
一度に2個排卵すれば、排卵後のプロゲステロンを分泌する細胞が2つ作られますので、プロゲステロンが多く分泌されます。逆に卵胞が成長しきれないまま排卵したり、排卵が起こらないままエストロゲンだけが分泌され続けても、この2つの女性ホルモンのバランスは乱れます。
定期的にバランスよく排卵が起こることや、排卵が起きるからだの状態であることは、子宮筋腫を未然に防いだり、大きくしない為に重要なのかもしれません。
【鍼灸治療でホルモンバランスを整える】
鍼灸治療は、視床下部に働いて、ホルモン分泌を整える作用があることが、様々な論文で発表されています。こうした論文を見ていると面白いのですが、鍼灸治療はホルモン分泌を一方的に上げたり下げたりすのではなく、あくまでも調整する作用があることが分かります。
つまり鍼灸刺激は、あるホルモンを下がる必要がある時には下げ、上がる必要がある時には上がるということです。例えば、先程ご紹介した図の中で、エストロゲンやプロゲステロンが分泌されるきっかけになるホルモンで、GnRHというホルモンがあります。
図の中では視床下部という部分から分泌されている、生理周期の大元になるホルモンです。このGnRHの変化を、様々な疾患に対しての鍼灸治療でモニタリングした論文が幾つかあります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25069195
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29071997
<ダウンレギュレーション>
上の論文では、GnRHは結果的に下がっています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19526799
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24215920
<アップレギュレーション>
こちらの論文では、結果的にGnRHは分泌量が増えたとあります。
こうした論文は多く見られ、同じ刺激でもある時には分泌亢進に働き、ある時には分泌抑制として働くということが分かります。
ホルモン分泌を亢進させたり、低下させたりといった、時と場合により起こる変化は、鍼灸治療独特の変化で、投薬ではあり得ない変化です。あなたの状態に合わせた治療ができるのは、こうした鍼灸治療独特の作用によるものです。
ホルモンバランスを取って、子宮筋腫に対してアプローチする利点は、ホルモンバランスを取ることが、そのまま妊娠するための施術に繋がるからです。
エストロゲンとプロゲステロンのバランスを取る施術は、生理周期を整えて、卵胞の発育をスムーズにすることで、卵の質を高めてくれます。
こうした一石二鳥にも三鳥にもなるところが、鍼灸治療や東洋医学の優れた点でもあります。