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瘀血と子宮筋腫の関係と鍼灸治療

2018年5月25日12:00 PM カテゴリー:お勉強,ストレスと不妊,不妊鍼灸,妊活全般,肥満,自然妊娠

東洋医学では、瘀血という概念があり、瘀血が不妊に繋がるというお話を以前ここで書きました。

瘀血は、血液が上手く循環しないことで、滞ることで固まった血液成分が、血管や経絡を塞ぐことで正常な生理現象を邪魔することで、痛みや機能障害を起こします。

西洋医学的に言うなら、内出血や腫瘍、腫瘤が最も違い概念でしょう。

先日当院にメールでご質問があった内容と合わせて、本日はテキスト化することにしました。


【瘀血と血液循環】

血液の循環というのは、あなたが想像しているよりも重要なものです。血の巡りが悪いということを、冷え症程度に考えていてはいけません。

血液循環が悪くなると、血液の循環で運ばれるはずの、様々な物質が運ばれませんので、機能障害だけではなく物質が足りないことで、器質的な障害が起こります。

<血液で運ばれるもの>

・赤血球やヘモグロビン(酸素)
・栄養素(エネルギー、細胞やホルモンの材料)
・ホルモン
・免疫物質

細胞を構成する材料が運ばれなければ、細胞自体が作られません。またホルモンの材料が運ばれなければ、ホルモンは作られません。

ホルモンが作られても、必要なところまで運ばれなければ、ホルモンは働くことができません。

さらに必要なくなったものが除去されなければ、その場所にとって悪影響を及ぼす場合もあります。有名なものでは、コレステロールがあります。

こうした血液循環が滞ることを血瘀状態といい、その場所に固まりができてしまうことを瘀血と言います。

【ホルモン分泌やホルモンバランスも瘀血と関係する】

東洋医学では、瘀血の原因を打撲などの外傷、ストレスなどの内因、飲食の不摂生などの生活習慣で起こるとしています。

この中でも最も不妊と関連が深そうなのは、ストレスなどの内因によるものと、飲食の不摂生によるものでしょう。

これを順番にご説明させて頂きます。

1.ストレスによる瘀血と不妊

ストレスを感じると、自律神経の交感神経が緊張しやすくなります。交感神経は、末梢の毛細血管を収縮し、内臓の血流を制限する働きがあるため、血流が悪くなります。また血液の粘調度が高まり、固まりやすくなります。この固まりやすくなる性質の変化が、瘀血に繋がっていきます。

さらに手足の冷えは、更なる不快感やストレスに繋がることもあります。冷え症ということで、ストレスが悪循環を始めることになります。

また内臓器の血流低下は、卵巣や子宮の活動を制限し、卵胞に送る血流が低下するため、卵胞の成長が悪くなり、卵の質も悪くなります。

男性においても、同様に精子の質が悪くなります。ストレスは、血流を通じて妊娠する力に影響を与えます。

ストレスによる影響は、血流だけではありません。ストレスは、脳の視床下部に働きかけ、様々なホルモン分泌に影響を与えます。

直接的に働くのは、副腎から分泌される副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの増加と、コルチゾールの増加によるGnRHの抑制です。

またコルチゾールの増加は、副腎皮質から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンの増加も招きます。

男性ホルモンの増加は、卵胞でのホルモン分泌にも影響を与え、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)のバランスを乱します。

エストロゲンとプロゲステロンは、女性ホルモンと呼ばれるホルモンです。この2種類のバランスが崩れることで起こる病気が、子宮内膜症や子宮筋腫です。

ストレスによる影響が、最終的に子宮筋腫や子宮内膜症という、東洋医学的な概念である「瘀血」に繋がるということです。

2.飲食や生活習慣による瘀血

食生活で気を付けるのは、甘いものと油もの、そしてお酒です。西洋式の濃く脂分の多い食事は、様々な病気を招きます。

子宮筋腫なども、こうした欧米式の食事とは関連が深く、逆に地中海式と言われる、魚介類とフルーツ野菜を多く使用した食事では、婦人科疾患や不妊が少ないことが分かっています。

アルコールや糖分の影響は、体質差もありますので、近親者で高脂血症や糖尿病、循環器疾患を発症した方がいる場合には、特段の注意が必要になります。

不妊の原因にもなるPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の女性は、耐糖能異常を持つ方が多いのですが、耐糖能異常は糖尿病のリスク因子の一つです。

PCOSの方は、血液凝固異常(血が固まりやすい)やホルモンバランスの異常を持っているため、自然妊娠でも体外受精でも妊娠しにくいことが特徴です。

血が固まりやすいということは、瘀血を作ることにも繋がりますので、特に飲食には気を配るべきです。

【瘀血と鍼灸治療】

鍼灸治療では、不妊に関係の深い瘀血を治療する際、血液循環を改善することで、自然に瘀血が無くなるようにしていきます。

これは生理の出血を見ているとよく分かります。

最初は血の固まりが多く、色も暗かった生理が、徐々に固まりが無くなり、サラサラとした鮮血になっていきます。

これは生理痛やPMS、PCOS,子宮内膜症、子宮筋腫などの治療を受けている女性に、共通して現れる変化です。

こうした変化に伴い、徐々に生理痛が無くなり、生理周期が整い、妊娠しやすいからだに変化していくのです。

ただ子宮筋腫が目立って小さくなるという効果に関しては、論文でも2本見つかっただけでした。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25993751
<Successful acupuncture treatment of uterine myoma 鍼灸で子宮筋腫の治療に成功>

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7750167
<The clinical study on hysteromyoma treated with acupuncture 鍼治療を受けた子宮筋腫に関する臨床研究>

子宮筋腫がある程度の大きさでも、妊娠や出産ができるということは、臨床的には経験がありますが、小さくなるということに関しては、あまり大きな期待をしない方がいいかもしれません。

あくまでも大きくなるのを防ぐ効果や、妊娠しやすくなる、或いは流産しにくいといった効果を目指すべきでしょう。

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