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多嚢胞性卵巣症候群に対する鍼灸と排卵誘発剤の併用

2018年7月12日5:38 PM カテゴリー:不妊症

多嚢胞性卵巣症候群は排卵誘発剤が効かないことも

 

多嚢胞性卵巣症候群は、何らかの原因で卵胞の成長や排卵が上手くいかないため、卵巣内に複数の未成熟な卵胞が残ってしまう排卵障害です。

排卵がスムーズに行われないため、タイミングが取れないばかりか、全く排卵しなければ、妊娠をすることはできなくなります。

そこで排卵誘発剤を使用して排卵を計画しますが、全く排卵されないことも少なくありません。日本でよく使用されるクロミッドというお薬は、脳の視床下部に働いて、排卵に必要なホルモン分泌をさせるお薬です。


脳の視床下部には、エストロゲンの受容体があり、エストロゲンが一定作られると、それ以上作られないように、脳から排卵の指令が出なくなります。

クロミッドは、この視床下部にあるエストロゲン受容体に取り付くことで、脳にエストロゲンが作られていないと錯覚させるのです。

エストロゲンは、卵胞が成長することで分泌量が増えるホルモンです。このエストロゲンが出ていないと錯覚することで、更に卵胞の成長を促すということです。


エストロゲンは、脳の視床下部から分泌されるGnRHの命令で、下垂体からLHとFSHが分泌されることで卵胞内で作られます。

LHとFSHは、それぞれ別々の細胞に働いて、連動してエストロゲンを作り分泌します。多嚢胞性卵巣症候群では、LHの分泌量が多いため、莢膜細胞でアンドロゲンを大量に作ると言われています。

アンドロゲンが増え過ぎると、卵胞の成長は上手くいきません。なぜなら、アンドロゲンは男性ホルモンだからです。

多嚢胞性卵巣症候群は、まずこのLHが高いということを解決する必要があります。

クロミッドは、結果的にGnRHは増やしますが、LHが高いということに関しては対処しないため、重度の多嚢胞性卵巣症候群では、あまり改善効果がないということになります。

つまりLHを下げることに対して、何か効果的な治療法が必要であるということです。

クロミッドは、薬が体内に残る時間が長く、いつまでもエストロゲンが少ないと錯覚することで、子宮内膜が薄くなるといった副作用が出やすくなります。

比較的軽症で、直ぐに排卵して妊娠する場合は良いのですが、あまり効果が見られなかった例では、連用することで、返って副作用だけが目立つことになるかもしれません。

 

鍼灸治療はLHを下げてFSHを上げる効果がある

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21816787
(True and sham acupuncture produced similar frequency of ovulation and improved LH to FSH ratios in women with polycystic ovary syndrome.)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26255520
(Acupuncture at Zhibian (BL 54) through Shuidao (ST 28) for polycystic ovary syndrome)

この二つの論文は、鍼灸治療によりLHが下がったというものです。ちなみに下の論文では、関元兪と関元というツボを使用しています。

鍼灸治療は、LHとFSHの分泌量を調節して、卵胞が育ちやすい環境を作ることで、エストロゲンの分泌量を増やします。

鍼灸治療には、クロミッドのような副作用がないため、長期間続けることも可能ですし、施術期間が長くなればなるほど、様々な治療効果が表れて、妊娠しやすくなる可能性が高くなります。

またクロミッドを使用する際にも、鍼灸治療を併用することで、鍼灸によりLHを下げ、クロミッドにより卵胞の成長を促すといったこともできます。

こうした鍼灸治療と排卵誘発剤の併用は、海外では臨床研究として数多く行われています。私自身もPCOSの患者さまに対して、投薬と併用することがありますが、やはり効果が出やすい傾向があります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29701043
(Therapeutic effects on ovulation and reproduction promotion with acupuncture and clomiphene in polycystic ovary syndrome)

こちらの研究では、クロミッドと鍼灸を併用した群と、クロミッドのみの群を比較しています。

・LH(卵胞刺激ホルモン)
・テストステロン(アンドロゲン)
・血清中のエストラジオール(エストロゲン、卵胞ホルモン)
・プロゲステロン(黄体ホルモン)
・子宮内膜の厚さおよび形態
・排卵率および臨床妊娠率

これらを両群で調べたところ、鍼灸治療とクロミッド併用群では、排卵率、子宮内膜の厚さ、エストロゲン、プロゲステロンが高くなり、LHとテストステロン(アンドロゲン)は低くなったとあります。

つまり、投薬のみでは難しいLHの低下を起こし、結果的にアンドロゲンを下げることにも成功しているのです。投薬のみでは効果が出ないPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)や排卵障害の方は、鍼灸治療を併用すると、ステップアップをする必要がなくなるかもしれません。

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