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不妊鍼灸来院患者に案外多い甲状腺機能低下症

2018年6月9日11:12 AM カテゴリー:不妊症

【甲状腺ホルモンとは】

 

甲状腺は、喉元にあって、新陳代謝を行うチロキシンというホルモンを分泌する内分泌腺です。チロキシンが過剰に分泌される病気を甲状腺機能亢進症といい、一般的にはバセドウ病と言われます。


バセドウ病は、甲状腺が腫れて眼球が突出という特徴的な形態をしているため、見た目にも分かりやすく、一般の方が指摘することで発見されることもあります。

私が以前施術していた方も、仕事先で顧客に眼球突出を指摘されて、病気が発覚したと仰っていました。

甲状腺機能は亢進すると特徴的な外見で分かるのですが、甲状腺機能低下症は、気付かないまま放置されることが多いため、注意が必要です。

また甲状腺機能低下症を放置すると、その反動で、甲状腺機能亢進症に移行することも多いため、バセドウ病の内、何割かは低下症から移行した亢進症だと言われています。

<妊娠と甲状腺機能>

 

甲状腺機能は、不妊や流産と関係があると言われています。バセドウ病の場合には、妊娠前に管理されている方が多いのですが、甲状腺機能低下症の場合には、あまり目立った症状がないため、発見が遅れることは少なくありません。

甲状腺ホルモンの検査は、一般的にTSHという数値で測ります。TSHは甲状腺刺激ホルモンのことで、甲状腺ホルモンを分泌するために、下垂体から分泌されるホルモンです。

よく勘違いされますが、TSHの数値が上がると、甲状腺ホルモンは上がっているのではなく、逆に甲状腺ホルモンが少なくなっていることを表します。

つまり甲状腺ホルモンがしっかり分泌されていると、甲状腺ホルモンを出すためのTSHは必要なくなり、分泌が減るということです。


甲状腺ホルモンは、新陳代謝をコントロールするホルモンですが、からだの疲労や精神疲労が続くと、分泌量が減ってしまいます。

そのため心身の疲労が続くと、TSHが上昇します。また、体調があまり良くない状態で不妊治療を続けたり、元々仕事やプライベートで疲労が大きくても、甲状腺機能低下症になることがあります。

甲状腺ホルモンは、新陳代謝と神経の発達にも関わるため、甲状腺ホルモンが十分に出ていないと、流産や産まれてくる赤ちゃんの先天異常が出やすくなるという報告があります。

 

【甲状腺ホルモンと不妊治療】

 

不妊専門病院に通院されている方は、初診時に、予め血液検査で甲状腺ホルモンを調べることが殆どです。妊娠初期の赤ちゃんは、体内で甲状腺ホルモンを作れないため、その分を母親が増量して作ります。

そのため妊娠初期には、TSHが上昇して、甲状腺ホルモンを多く分泌しています。元々TSHが高い人は、妊娠すると、更にTSHが増えることになりますので、予め投薬で、甲状腺ホルモンを補充することで、TSHの上昇を抑えます。

数値の目安は諸説ありますが、国内の専門家はTSH>3.0 μU/mLとしており、妊娠前にこれを超える場合には、予めホルモン剤で補充をしています。

ただ専門家によっては、4.0 μU/mLを超えても補充しないという医師もいますので、一定した基準は今のところありません。

不妊専門医は予防的に2.5 μU/mLを超えた時点で使いたい、甲状腺専門医は経験的に3~4 μU/mLで良いという医師が多いようです。

甲状腺ホルモンを足すことでの副作用は、今のところあまり心配ないため、予防的に足すというのが、これからの方針になりそうです。

 

【東洋医学と甲状腺機能】

 

甲状腺の機能は、東洋医学的には、腎精や腎陽という根本的なからだの機能を主る機能と関係が深胃と思われます。

またストレスと言う観点から言うと、肝との関係も深く、経絡の走行も近いことから肝と関連付けて説明されることが多いようです。

<経絡図解 福建科学技術出版より>

この図を見て頂くと、肝の経絡が、甲状腺を通っており、バセドウ病の症状である、心臓や目とも繋がっていて、動悸や眼球突出と関係しそうなことが東洋医学的に分かります。

またストレスが影響するため、脳にも絡みつくように経絡が入っています。さらに、子宮や卵巣などの生殖器にも繋がっているため、肝経の変動が甲状腺疾患だけではなく、東洋医学的には、妊娠や出産に関係することが分かります。


実は不妊鍼灸で来院される方の中に、甲状腺機能低下症の方は、非常に多く見られます。これは、不妊治療のせいで心身ともに疲れてしまったのか、元々不妊傾向のある人に甲状腺機能低下症の方が多いのかは分かりません。

個人的には、両者が混在していると考えています。その理由は、不妊治療を始めたころには見られなかったTSHの上昇が、不妊治療と共に上がる方もおられますし、病院でTSHの上昇を指摘され、甲状腺ホルモンを補充した結果、妊娠に至る方もいらっしゃるからです。

鍼灸治療で甲状腺機能低下症を改善する場合には、東洋医学的な臓腑でいうところの、腎と肝の調整は欠かせません。そして肝を制する存在である肺も同時に調整します。

治療効果としては、経験的にはかなりありますが、実際に不妊治療と併用する場合には、TSHの数値を、ホルモン剤でコントロールする方が現実的です。

鍼灸治療で行う場合には、全身の調整をした結果、勝手に整う場合が多いようです。

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