PAGE TOP

不妊鍼灸の効果発現の仕組み 【ホルモン受容器の感受性】

2018年8月2日5:14 PM カテゴリー:不妊症

【はじめに】

不妊鍼灸の効果発現は複雑で、ある一つの仕組みや働きで起こるわけではありません。効果の発現には、幾つものパターンがあり、それを使い分けることが、術者にとっては腕の見せ所となります。

私たち鍼灸師は、こうした仕組みがどこで乱れているのかを知り、それに対して施術を加えることで、本来の働きを取り戻すように施術します。

不妊鍼灸では、自律神経やホルモン代謝などを鍼刺激で適正化し、あなたの妊娠する力を高めていきます。

 

【ホルモン代謝と不妊鍼灸】

 

妊娠には、生理周期や生命維持の働きが強く関係していますが、こうしたからだの仕組みには、ホルモンの存在が欠かせません。

消化吸収にもホルモンが関係しますし、生理周期にもホルモンが関係します。妊活においては、ホルモン分泌は、男女ともに非常に重要な要素となります。

こうしたホルモンが適切に働くには、

1.ホルモンが適切に分泌されている。
2.ホルモンが必要な場所へ運ばれる。
3.ホルモンを受取る受容器が適切に働く。

といった仕組みが、しっかりと働く必要があります。

 

<1.ホルモン分泌>

 

鍼灸治療は、ホルモン分泌を調節する働きがあります。特に、生理周期に関係するホルモンである、GnRH、FSH、LH、E2、P4などに影響を与え、適切な量やバランスに整える作用があります。

鍼灸治療の場合には、ただ一方向性に上がり下がりするのではなく、適正化されるというのが最も特徴です。

例えば、FSHは卵胞刺激を行うためのホルモンですが、卵巣機能が低下すると、反応が悪い卵胞に対して、大量のFSHを分泌するようになります。

そのためFSHが高くなると、卵巣機能が低下していると判断します。

FSHが高くなった人に対して、適切な鍼灸治療を行うと、卵巣の反応性が高まるため、FSHは自然に低くなります。

ところが、多嚢胞性卵巣症候群のように、LHが高くなることで、FSHが低くなってしまうような方の場合には、全く逆のことが起こります。

つまり、多嚢胞性卵巣症候群の方に対して施術をすると、LHの数値が下がり、FSHが上がるという現象が見られます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29696918
<多嚢胞性卵巣症候群に対する鍼灸治療:スウェーデン>

多嚢胞性卵巣症候群に対する鍼灸治療の論文は、海外のものなら複数見付かります。その中では、状況によって妊娠しやすい状態に、ホルモンの数値が上がり下がりするのが分かります。


 

<2.ホルモン輸送>

 

ホルモンは、血流によって運ばれます。そのため、血流量をコントロールすることが、ホルモン輸送には重要です。

特に妊活では、卵巣や子宮への血流が重要ですので、卵巣や子宮を出入りする動静脈の血流に対して子宮治療でアプローチします。

子宮や卵巣への血流改善で有名な陰部神経刺鍼は、骨盤後面に対して行われる鍼灸手技です。交感神経をブロックすることで、副交感神経を優位にして、血流を改善する効果があります。

また、それ以外にも、手足のツボを使用して、子宮や卵巣の血流を増やす方法もあります。どの方法を使用するかは、その方の体調や体力にもよります。

 

<3.受容器感受性が上がる>

 

鍼灸治療は、ホルモン受容体の感受性を増すことで、少量のホルモンでも十分に反応することができるようになります。

その結果、ホルモン分泌が減ることもあります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22729015/
<肥満女性における鍼灸治療の効果>

中国では、肥満に対する鍼灸治療をよくしているようです。この論文では、肥満者に対する鍼灸治療を行い、その中でレプチンというホルモンと、インスリンというホルモンを測定しています。

レプチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンで、脳の視床下部にある、満腹中枢を刺激して満腹感を出すホルモンです。

肥満になると皮下脂肪が多いため、大量のレプチンが分泌されます。視床下部は、大量のレプチンを受取ると、返って感受性が鈍ってしまい、満腹感が出ないようになってしまいます。

鍼灸治療を受けたものでは、レプチンの感受性が上がり、満腹感が強く出るそうです。また、レプチンの分泌量は、それに伴って少なくなり、徐々に痩せやすい状態になるそうです。

インスリンは、血糖値を下げるホルモンとして有名です。インスリンも、レプチンとよく似たところがあります。


インスリンの受容体は視床下部にあり、血糖値が上がるとインスリンが分泌されますが、インスリンが分泌されすぎると、受容器の感受性が下がってしまい、血糖値が下がらなくなります。

そのため、更に多くのインスリンが分泌されるようになり、感受性もまた下がり続けます。鍼灸治療を受けると、インスリンが働きやすくなり、インスリンの分泌量が下がります。

インスリンは、脂肪細胞への脂肪の取り込みも促すため、インスリンの分泌量が減れば、皮下脂肪が付きにくくなります。つまり、痩せやすくなるのです。

このインスリンは、多嚢胞性卵巣症候群とも深い関係があります。インスリンの感受性が高まり、分泌量が減ると、LHの分泌量が減ることが分かっています。

LHが低くなると、多嚢胞性卵巣症候群は改善される傾向があるため、肥満治療と多嚢胞性卵巣症候群には共通点も多いのです。

宜しければ記事のシェアをお願い致します。

診療時間のご案内 トップページへ戻る
2022/12/9
2021年 妊活鍼灸の振り返り ー症例と総括ー
2022/12/3
2021年妊活鍼灸の振り返り4 ―症例―
2022/9/23
2021年妊活鍼灸の振り返り3 ―症例を中心に―
2022/4/17
2021年妊活鍼灸の振り返り2 -症例を中心に-
2022/2/14
2021年妊活鍼灸の振り返り1 -緒言と症例-
2021/11/30
2020年 妊活鍼灸の振り返り -症例と総括-
2021/4/21
2020年妊活鍼灸の振り返り ―症例を中心に―
2021/2/12
2020年妊活鍼灸の振り返りー緒言と症例ー
2020/1/7
2019年 妊活鍼灸の振り返り ―その3― (症例とまとめ)
2020/1/5
2019年 妊活鍼灸の振り返り ―その2―(症例を中心に)
>>もっと記事を読む
診療時間のご案内 当院アクセスマップ
トップページへ戻る

カテゴリ別記事

過去の記事

※免責事項:掲載された事例や患者様の体験談は個人の感想や成果によるものなので、全ての人への効果を保証するものではないことと御理解ください。施術による効果には個人差があります。