鍼灸治療には、体外受精や顕微授精の妊娠率を高める効果があります。鍼灸治療が、こうした高度生殖医療の、どの部分に働いているのかをご紹介します。
【卵胞を育てる効果】
鍼灸治療は、卵巣への血液循環量を増やし、卵胞の発育に必要な栄養や酸素、女性ホルモンを十分に届ける手助けをすることができます。
そのため排卵誘発などで、複数の卵胞が発育する場合でも、卵巣に必要な大量の血液を運ぶことができるようになります。
また内臓機能の働きを整えることで、消化器での栄養の吸収、肝臓でのコレステロール増産にも働きかけ、卵胞の発育を助ける作用があります。
海外での臨床実験では、卵の質の改善が報告されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25951635
多嚢胞性卵巣症候群の女性に対して、アゴニスト法での排卵誘発を行いました。採卵日まで鍼灸治療を行い、紡錘体とポリオ細胞の位置関係、回収された卵子の数、受精率、切断率、高品質胚率、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発生率、臨床妊娠率、早期中絶率、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)の日に、ゴナドトロピン(Gn)の投与量と時間、エストラジオール(E2)、プロゲステロン(P)、黄体形成ホルモン(LH)のレベルが観察されました。
その結果、卵子の質が改善し、臨床妊娠率は8.36%改善した。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26054202
体外受精 – 胚移植(IVF-ET)を受けた合計200人のPCOS患者を無作為にコントロール群(n = 98)とEA群(n = 102)に分けました。
血清卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、テストステロン(T)、エストラジオール(E2、甲状腺ホルモン)、卵巣刺激ホルモン血清中のSCF含量および卵胞液を検査機器で分析したところ、採取された卵子の数、受精率、分裂率、高品質胚率、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発生率臨床的妊娠率、早期中絶率、Gn投与量および投与期間、ならびに高品質胚率とSOFレベルとの相関を確認しました。
鍼灸治療は、高品質の胚発生率を改善することができた。
【採卵時の疼痛軽減と抗ストレス効果】
採卵時の最も大きなストレスは、採卵の痛みと結果に対する不安感です。
鍼灸治療は、抗炎症作用や鎮痛作用が高い治療法ですので、この二つに対して鍼灸治療は効果的に働きます。
そのため採卵時のストレスが大幅に軽減されることで、体調の早期回復や妊娠率の上昇に効果を発揮します。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22499825
43人の体外受精を受ける女性を2つのグループに分け、不安感をどの程度感じるかという調査をしました。鍼灸を受けた群では、不安感の低下が見られた。
【黄体期に行う鍼灸の効果】
排卵後は、「着床の窓」と言われる、子宮内膜に受精卵が着床可能な期間、つまり妊娠可能な期間があります。
この着床の窓が開いている期間は、人により長さが違います。着床の窓が開いている時間が長いほど、その女性は妊娠しやすくなります。
着床の窓は、免疫の働きが大きく関係するため、着床の窓を長く開けようとすると、子宮内膜の免疫系を整える必要があります。
鍼灸治療には、こうした質の良い内膜を作る働きがあるのです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24396391
鍼灸治療は子宮内膜の免疫系を整え妊娠率を向上させる。
その結果、鍼灸治療を受けた方では、妊娠率が高くなります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16616748
IVFを受けている、225人の不妊症患者を対象にした鍼灸治療の効果です。
グループを2群に分け、グループIでは116人の患者が東洋医学の原則に従って黄体期鍼治療を受け、グループIIでは、109人の患者がプラセボ鍼治療を受けました。
グループIでは、臨床妊娠率および進行中の妊娠率(それぞれ33.6%および28.4%)は、II群(15.6%および13.8%)より有意に高かった。
ただ実際には、黄体期のみ施術を受けるということはお勧めしません。良い黄体期とは、良い卵胞から作られます。
排卵後の卵胞が黄体になることを考えれば、良い卵胞期が良い黄体期を作ると言えます。