今回はとことん自然妊娠にこだわって、妊活を成功させるためのお話です。自然妊娠とは、薬や医療による補助を使用しない妊娠を言います。
究極の自然妊娠の方法を考えてみました。
【タイミングにこだわる】
自然妊娠を成功させるには、やはりタイミングにはこだわる方が良いはずです。では最良のタイミングとはいつなのでしょうか?
タイミングをいつ取るべきかということの前に、タイミングの要素を考えてみましょう。
・排卵のタイミング
・性交のタイミング
・受精のタイミング
・着床のタイミング
こうしたタイミングの要素が合わさったものが、最良のタイミングだと言えます。一つずつ検証してみましょう。
<排卵のタイミング>
排卵のタイミングを知るには、基礎体温で知る方法や、排卵検査薬で知る方法があります。最も正確な方法は、経腟超音波を使って観察する方法です。
基礎体温で知る方法の場合、低温期と高温期がはっきりと分かれている必要があります。しかも、自然なホルモン分泌の場合には、体温の上がり方は緩やかな傾向がありますので、排卵日を特定することは無理です。
排卵検査薬の場合には、基礎体温と併用して調べることになります。排卵検査薬で調べる場合、低温期と高温期の境目に何度か使用してLHサージを計測します。
LHサージとは、排卵のきっかけになるLH(黄体化ホルモン)の急上昇のことです。LHサージが起きると、16~32時間程度で排卵が起きると言われています。
また全体の生理周期から、排卵のタイミングを逆算する方法もあります。通常、黄体期はあまり変動がなく、14日前後と言われています。
定期的に生理が来ている方の場合は、そこから逆算して、生理予定日の14日前を排卵日と想定します。これが最も簡単な方法だと思います。
<性交のタイミング>
性交のタイミングは、排卵のタイミングを知った上で行います。実は多くの方は、最も妊娠しやすい日を勘違いしています。
妊娠が最も成立しやすいのは、排卵日の前日と前々日です。これは排卵日の約4倍の妊娠率です。
排卵日が最も妊娠率が高いと思っている方は、案外多いはずです。あなたは、この事実をご存知でしたか?
排卵日よりも排卵前の方が妊娠率が高いのには理由があります。それは、排卵後の卵が、非常に劣化しやすいことに起因しています。
排卵後、卵は非常に早く劣化します。そのため、最良のタイミングとは、排卵を精子が待ち構えている状態なのです。
タイミングをベストの状態にするには、精子が生存可能な時間を考えて、排卵してくる卵を待ち構えるのが、一番妊娠しやすいということです。
排卵日の前日と2日前が最も妊娠率が高いのですが、排卵日の5日前までは妊娠が可能だとされています。
ところが排卵日の6日前では妊娠率が0%となり、排卵日の翌日でも0%なのです。また排卵日にタイミングを取った場合も、妊娠後約80%は流産しているというのです。
つまりタイミングは、排卵さえ分かれば、その前に取る必要があるということです。
<受精のタイミング>
受精のタイミングは、排卵のタイミングを知り、精子が移動する時間を考えれば分かります。
精子が膣内に射精されてから、子宮を通り抜け、受精をする卵管膨大部にたどり着く時間は、精子の動くスピードと膣か卵管膨大部までの距離を考えれば分かります。
通常、精子は1分間に2~3mm移動すると言われています。そこから考えれば、膣から卵管膨大部までは45~60分かかります。
ところが実際には数分でたどり着くことがあります。これは、排卵期に起こる、子宮の運動による効果だと言われています。
排卵期には、子宮が下から上へ向かって筋収縮しています。つまり、子宮の中の精子を卵管に向かって送り出しているのです。
この子宮の動きが盛んであれば、精子の運動率が悪くても、卵管膨大部まで素早く精子は移動できます。
そうすれば、排卵のタイミングに合わせて、精子を卵管に送り込むことができます。
<着床のタイミング>
着床のタイミングに重要なのは、「着床の窓」がいつ開くのかということです。「着床の窓」とは、子宮内膜で妊娠が成立する時期のことで、なおかつ妊娠が維持できる時期のことです。
この着床の窓が開いている時期が、少しずれてしまうと、妊娠しないばかりか、もし妊娠しても妊娠を継続することができません。
一般的に初期の流産は、染色体異常や遺伝子異常と言われますが、着床の窓が開いていない時期に妊娠している場合も、初期流産に繋がるということです。
では、この着床の窓はいつ開いているのでしょうか?現在、着床の窓がいつ開いているのかを調べる方法が、世界中で模索されています。
現在のところ最も有力なのは、ERAテストと言われる検査法です。日本国内でも一部の専門病院で行われていますが、まだ科学的な検証はされていません。
今までにも不妊治療では、様々な検査法や治療法が出ては廃れていきました。ERAテストも、今のままでは十分な成果を残しているとは言えないため、一般化はされないと思われます。
着床の窓が開く時間には個人差が大きく、妊娠しやすい人ほど開いている時間が長く、妊娠しにくかったり流産しやすい人ほど開いている時間が短いというのです。
着床の窓が開いている時間には、免疫系の働きや、ホルモン分泌も関係が深いと思われますので、適切な免疫寛容やホルモンバランスが、着床の窓を開く時間を調節していると予想されます。
また排卵後、急激に起こる卵の劣化も、着床の窓が開く時間に関係してそうですから、これまでに挙げた様々なタイミングを考えて、最良のタイミングを取る必要があるようです。
【全てのタイミングを揃えるためには】
全てのタイミングを揃える、たった一つの方法があります。それは毎日のタイミングを取ることです。
これが最も確実にタイミングを取る方法です。それが無理な場合には、それぞれできる範囲で様々なタイミングを取ることになります。
もう一つタイミングを揃えやすくする方法があります。それが鍼灸治療です。
鍼灸治療には、排卵障害を改善し、生理周期を整える作用があります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26946729
(卵巣機能が低下した女性に対する鍼灸治療の効果)
こちらの論文では、卵巣機能が低下した女性に対する鍼灸治療の効果が書かれています。
こちらの研究で対象になっているのは、体外受精の女性が対象です。体外受精の場合、詳しいホルモン状態を検査するため、より状態が検討しやすのです。
この論文では、鍼灸治療を行った女性では、エストロゲンの数値や卵胞の数、質、妊娠率全てが高くなったとあります。また、この時行った鍼灸の方法は、生理周期に合わせたものだったとあります。
つまり、鍼灸治療には、生理周期を調整する効果があるということです。
更に鍼灸治療には、子宮筋の活動性を上げる働きがあります。
http://acupuncture.jp/dspace/bitstream/10592/17427/1/0707.pdf
(子宮の神経性調節と鍼灸)
こちらの論文では、鍼灸で子宮筋の運動に影響を与えることが書かれています。こうして子宮筋の運動性が上がれば、精子を元気なまま卵管に送り込むことができます。
精子が元気なまま卵管に送り込めれば、それだけ妊娠の確率も上がりますし、タイミングも取りやすくなります。
また精子の運動率が悪くても、子宮の力で卵管近くまで精子を移動させ、妊娠が可能になります。
着床の窓を大きく開けるには、免疫系がバランスよく働きながら、適度な免疫の緩み(免疫寛容)を作ることが必要です。
この免疫寛容に関わるのが、Tregというリンパ球です。Tregが多くなると、免疫寛容が働きます。またTregと拮抗的に働くTh17というリンパ球が増えると、免疫活動が盛んになり、逆に妊娠し辛くなります。
鍼灸治療を行うと、TregとTh17のバランスを適切に保ち、免疫寛容が働くことが分かっています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4646989/
(喘息モデルにおける鍼治療の抗炎症作用およびTh17抑制とTreg活性効果について)
こうして鍼灸と最適なタイミングを併せると、投薬なしで行う究極のタイミング法が完成します。