妊活中のあなたが、卵の質にこだわるなら肝臓を働かせましょう。妊活と肝臓は、あまり関連性がないと思われるかもしれませんが、実は非常に密接なものなのです。
【ものを作る肝臓】
肝臓の働きと効いて真っ先に思い浮かぶのは、アルコールや薬などを解毒する働きではないでしょうか?
勿論妊活には、解毒というものは欠かせません。体内に入ってきた毒物を、無毒化して体外へ排出するには、肝臓の働きは大きいと言えます。
これは、ホルモン剤などの薬剤を使用する人にも、言えることです。解毒能力が低いと、どうしても副作用が出やすくなります。
ただ、ここで言う肝臓が妊活には大事だというのは、解毒能力のことではありません。
妊活で大事な肝臓の働きとは、解毒などの物質を壊す力ではなく、物質を作り上げる力です。
【脂質代謝と肝臓】
あなたが食事で食べたものや、飲み物として飲んだものは、小腸から吸収されて、肝臓へ運ばれます。
肝臓に運ばれた栄養は、色々な代謝を受けてその形を様々に変えます。様々な形に変えられた栄養は、それを必要とする組織や細胞へと運ばれます。
その中でも、非常に重要な二つのものを作ります。それが中性脂肪とコレステロールです。
両方とも肝臓で作られる脂肪ですが、少し成り立ちが違います。中性脂肪は、余った糖質から作られ、中性脂肪に姿を変えた後、脂肪組織へと送られ皮下脂肪となります。
コレステロールは、100%動物性脂肪ですが、7~8割は体内で再合成によって作られたものであり、食事で摂取する量はわずかです。
この二つを肝臓でしっかり作っているということは、妊活において非常に大事なことなのです。
【中性脂肪と高インスリン血症と排卵障害の関係】
肝臓の働きとして、中性脂肪を作るのが大事だと書きましたが、中性脂肪自体が重要と言っているわけではありません。
余った糖から中性脂肪を作るためには、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが必要になります。
逆に言うと、中性脂肪をしっかり作っているということは、インスリンの働きがしっかりしているということでもあります。
糖が高いにも関わらず、血液中の糖から中性脂肪を作ることができなければ、血糖値は高いままの状態でインスリンだけが大量に分泌されることになります。こうしたインスリンの働きが悪いことを、耐糖能異常と言います。
耐糖能異常を持っている人は、インスリンが分泌されても働きにくいため、血液中のインスリンが高い状態が維持されます。こうした高インスリン血症は、排卵障害を起こし易いことが分かっています。
高インスリン血症が、結果的に高LH(高黄体化ホルモン)の状態を作り出し、男性ホルモンを過剰に作るせいです。
つまり肝臓でしっかり糖を処理して中性脂肪を作るということは、妊活にとって大事なものなのです。ただ中性脂肪が中性脂肪が多ければ良いというわけではありませんので、誤解の無いようにして下さい。
血中の中性脂肪が余りにも多い状態は、やはりインスリンが大量に分泌されているのですから、排卵障害や着床率の低下を招くと言われています。
あくまでも、肝臓がしっかり働いているということが、妊娠には大事な要素だということです。
【コレステロールと妊活の関係】
コレステロールは、8割程度が肝臓で再合成されたものです。それ以外は、食事で摂取した動物性脂肪が、消化吸収されて体内に運ばれたものです。
コレステロールは、体内にある全ての細胞の外側にある、細胞膜を作る材料になります。
またコレステロールは、ステロイドホルモンというホルモンの材料になります。ステロイドホルモンには、たくさん種類がありますが、妊活に直接作用する、男性ホルモンや女性ホルモンもステロイドホルモンの一種です。
そのためコレステロールが余りにも減ってしまうと、そうしたホルモンを作ることも、できなくなってしまいます。
また肝臓で作られるコレステロールは、肝臓から様々な脂溶性物質を運ぶ輸送船の働きもします。ビタミンなども、そこに含まれます。
さらに組織や細胞で使い終わった物質を、肝臓まで回収する輸送船の役割も、コレステロールが担っています。
悪玉や善玉と言われることもありますが、人間が健康に生きていく中では、コレステロールはLDLもHDLも欠かせない物質なのです。
この行きと帰りの輸送船が働かなけば、あなたのからだは健康的に生きていくことさえできません。
コレステロールの変化と妊活を診ていると、次のような関係性があるように感じます。
・コレステロールが低い人は妊娠しにくい
・コレステロールが低い人は内膜が薄い人が多い
・元気がない人はLDLコレステロールが低い場合が多い
・薬を服用している人は、HDLコレステロールが高い
・薬を服用しているのにHDLが低い人は不妊治療が成功しにくい
・総コレステロールが低い人は、採卵数が少ない
【肝臓と東洋医学】
東洋医学の中で肝臓は、妊娠や出産と深い関係がある臓器をして扱われています。経絡と呼ばれる気の通り道も、肝臓の経絡では子宮や卵巣を通っています。
また疏泄という働きは、妊娠に非常に関係の深い、3つの力と関係が深いのです。
疏泄は、栄養分の消化吸収、気機、消化活動、精神活動、胆汁の生成と分泌などを調節する作用とされています。
当院が不妊鍼灸で重視している3つの力(免疫・血行+栄養・ホルモン)の内、かなりの部分を肝臓で行っているのです。
また疏泄作用の中にある精神作用は、ストレスを軽減させる目的でも使えるため、不妊治療によるストレス軽減や、ストレスによる妊孕性の低下に対しても肝臓の治療で対応できます。
ストレスに対応する肝臓の治療としては、太衝穴や行間穴、期門穴などが使われます。