私たち鍼灸師は、鍼や灸という微細な刺激を使って、からだの様々な働きを活性化したり、鎮静化することで、体調を調整しています。
もう一つの東洋医学的鍼灸の特長は、病気になる前の段階や、病名の付かない体調不良の状態を、把握をすることができるということです。
この病名のつかない体調不良の把握が、機能性不妊と呼ばれる原因不明の不妊を治療するためには重要です。
【機能性不妊は病気ではない】
機能性不妊と呼ばれる原因不明の不妊症は、子宮内膜症や子宮筋腫、多嚢胞性卵巣症候群、卵管閉塞、子宮奇形、高プロラクチン血症などの、はっきりとした不妊原因が分かりません。
勿論、 未知の不妊原因があるのかもしれませんが、不妊鍼灸を受けたて頂いた方の多くが妊娠しやすくなることを見ていると、機能性不妊の原因は、体調不良という、非常に漠然としたことが原因ではないかと思います。
体調不良の中には、心身の両方が含まれます。こうした体調不良を改善する鍼灸治療には、こころとからだの両方を整える作用があるのだと思います。
実際に鍼灸治療は、うつ病などの精神科疾患への効果も認められています。そのため、ストレス性の不妊や、不妊によるストレスの両方に効果があります。
また生命力の低下や、別の病気を基礎疾患として持っている方の場合も、不妊傾向が認められます。
こうした場合には、元々持っている病気の治療も鍼灸治療で改善を狙いながら、妊娠力を上げるための治療をさせて頂きます。
中には、難病と言われる方もいらっしゃいますが、鍼灸治療は病名を問わないため、対応が可能になります。
妊娠力UP=体調回復=病気の症状改善=心理状態改善
ということが言えます。
【不妊傾向をからだの変化で知りましょう】
機能性不妊の場合には、あまりにも一般的な身体症状が、不妊傾向を表していることもあります。
・生理痛がきつい
・肩こりや腰痛がきつい
・冷え症がきつい
・お腹の張り
・ストレスが強い
こうした症状を軽減して、日々快適に暮らすだけでも、あなたの妊娠は近付いてくる可能性があります。
【体調を知るには東洋医学的診察術が便利】
東洋医学では、からだの状態を観察する術に長けています。
例えば、舌を見る(診る)だけで、あなたの体調が分かってしまう舌診や、お腹を触るだけで、内臓の調子が分かってしまう腹診などがあります。
舌診は、舌先が頭方向、根元が足方向を表します。
舌診では、舌の色や形、荒れ方、乾燥、苔の状態を見ながら、からだ全体の状態を、舌を見るだけで把握するのです。
お腹に関しても、固さや色、温度などと、内臓器の状態を照らし合わせて状態を観察します。
はっきりとした病名が無くても、こうした舌やお腹の変化で、体調や内臓の状態を知ることができるため、治療の前後を比べることで、その人の最善の状態に近付けるのです。
また舌やお腹には、からだの変化だけではなく、心理的な影響も現れますので、東洋医学はストレス管理にも役立ちます。
こうして、体調管理という、非常に漠然としたことに、鍼灸治療は効果を挙げることができるのです。