あなたが妊娠できない理由は、1つとは限りません。もし一つだけの理由で、あなたが妊娠できないのなら、不妊の解決はそんなに難しくないかもしれません。
ところが複数ある原因が、複雑に絡み合いながら、長年相乗作用で妊娠しにくいからだを作っているとすればどうでしょうか?
そうしたタイプの不妊は、鍼灸治療のような全体治療でしか効果が出にくい可能性があります。
【複数の原因がある不妊】
当院の来院患者さまを診ていても、複数の小さな原因が積み重なることで、妊娠しにくいからだになっている例は多く診られます。
例えば、多嚢胞性卵巣(PCO)ではあるけれど、生理不順というほどではない方や、不定期ではあるけれど排卵や生理は起こっている方は、理論的には妊娠が可能ですが、実際には妊娠しにくい場合が多く見られます。
もし、こうした多嚢胞性卵巣をお持ちの方と、乏精子症やED気味の男性がカップルであれば、どうしても妊娠する確率は低くなります。
逆に、タイミングを全く苦ともしない元気な男性とカップルなら、その御夫婦は妊娠に関しては、あまり苦労しない可能性もあります。
複数の小さな原因は、大きなプラス要素により、消えていしまうこともあるということです。
不妊治療にとって、タイミングを複数回取れる男性の存在は、大きなプラス要因なのです。
例外もありますが、タイミングを複数回取れる男性は、精子の質も高い傾向があります。
【一人に複数の病名が付く場合もあります】
病名が付いたからといって、必ずしも重症なわけではありませんが、不妊の原因になる病名が、複数あるという状況は、やはり良い状況ではありません。
当院でよく見られるものとしては、甲状腺機能低下症と高プロラクチン血症が同時に発症している女性がいらっしゃいます。
甲状腺機能低下症は、甲状腺から分泌される、甲状腺ホルモン(T4)が低下する病気(症状)です。
甲状腺ホルモンの低下を察知した視床下部からは、甲状腺ホルモンを分泌させるために、甲状腺刺激ホルモン(TSH)や甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が分泌されます。
TRHには、TSHだけではなく、プロラクチンを分泌させる働きがあるため、高プロラクチン血症が起こります。
この場合には、高プロラクチン血症と甲状腺機能低下症という2つの病気が同時に存在しますが、元々は甲状腺機能低下症が起こったせいで、連動して甲状腺機能低下症が起こったことになります。
そのため甲状腺機能低下症が治ると、自然に高プロラクチン血症も治ることが多いようです。
また、全く違う原因で複数の病名が付くこともあります。この場合には、別々に個々の病気の治療が必要になる可能性が高くなります。
【最も多く治りにくいのは体調不良+不妊原因】
私が知る限り、最も数が多く厄介なのは、体調不良と不妊原因が存在する場合です。
体調不良という、非常に曖昧なものと、不妊原因が存在することで、どうしても患者さまの意識も、医師の意識も、はっきりとした小さな不妊原因に向きがちです。
実はそこが落とし穴で、はっきりとした小さな原因よりも、漠然とした体調不良の方が、不妊の原因としては大きい場合があるのです。
ところが、体調不良というものは、病院では不妊原因としては扱われませんし、治療の方法がありません。
体調が悪くなれば、明らかに妊孕性(妊娠しやすさ)は下がりますが、それに対する治療を受けることができないのです。
当然ながら、体調不良で不妊傾向が出るのは女性だけではありません。
男性も、体調不良で精子の質が悪くなりますので、ご夫婦ともに体調不良でしたら、先程とは逆に妊娠する確率はグッと下がります。
そうした体調不良を改善することを、非常に得意にしている治療法が、鍼灸治療です。
鍼灸治療は、自律神経や中枢神経に働きかけ、体調という漠然としたものに対して、ピンポイントで働き掛けます。
病院では、改善法すら無かった不妊(機能性不妊)が、鍼灸院なら妊娠できるのは、こうした理由があったのです。